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NHKにはIRが足りない!~新BSの告知を見て思うこと

私はNHKのサポーター

最初にいっておく。私は、公共放送は日本の社会に必要と強く思っている。今をさること40年前に経済学者の伊東光晴先生が私が在籍していた大学で特別講義を行われ、その中でBBCやNHKを例に引きながら、民主主義社会における公共放送の重要性を述べられた。純粋な大学生であった私はその講義に非常に感銘を受け、以来、NHKのサポーターであり続けてきている。受信料についても、就職して以来、海外勤務をしていた一時期をのぞいては欠かすことなく払ってきている。また、ときには、煙たがられつつ、あるいは変人のように思われつつ、日本社会における公共放送の必要性、それを支えるための受信料制度の妥当性を知人に説くこともしばしばであってきた。それだけに、NHKに対する文句も人一倍ある。永年の受信料負担者として、意見をいう資格は持っていると思っている。NHKについては、そのうちに、積年の文句をまとめて書くつもりだが、今日はとりあえず、最近よく目にする新BSの告知放送について一言述べておきたい。

新BSの告知の概要

NHKは、現在3チャンネルあるBS放送(8K放送は別扱い)を再編して、
新BS2K(仮)、新BS4K(仮)の2チャンネルにすることを発表している。その告知を最近よく見かける。公式にアップされたものではなさそうだが、YouTubeにもあがっている。内容は、「現在の2K(ハイビジョン)のBS1とBSプレミアムはまとめてひとつにするけど、皆の見たい番組は減らさないから心配しないでね。4Kはさらに充実させるよ。開始は12月1日。期待していてね。」というもの。これ自体は視聴者向けの告知としては、まあ穏当なものだろう。ただ、これだけしかないのが問題だと思うのである。

チャンネル削減の理由は何か

なぜ既存の2K2チャンネルを一つにまとめるのか。端的にいうと1チャンネル削減するのか、という説明をしてもらいたいのである。チャンネルの削減は、NHKにとって、ひいては視聴者にとって非常に大きな問題であるはず。私は上述のようにかなり熱心なNHKサポーターなので、NHKBS放送を巡り、過去何年もの間、主に経営合理化という観点から、民放や新聞業界、総務省、政治家などの多くの関係者との間で様々な議論があり、その一つの帰結が今回のチャンネル削減であることは、なんとなく理解しているつもりである。でも、世の中、そんな私のようなNHKストーカーばかりではないだろう。チャンネル削減の背景事情など知らない人が殆どだと思う。これに対して、そもそも多くの視聴者はそんなことは関心がないといわれるかもしれない。しかし、声を大にしていいたいのだが、仮に関心がない人たちが大多数であったとしても、関心のない人達にも説明する責務がNHKにはあると思うのである。

ユーザー対応だけでなくIRも

民間企業に例えていえば、NHKは顧客対応に力を入れるが、IRには不熱心な会社という感じがする。NHKにとって、一人一人の人間は、テレビ・ラジオのサービスを視聴(消費)するユーザーであると同時に受信料を負担して経営を支えてくれている株主のような存在であるはず。サービスについて顧客満足度をあげることはもとより重要である。そのことは否定しない。でも、株主としての側面にももっと気を配ってほしいのである。衛星チャンネル削減の背景には、いわゆる三位一体改革をめぐる議論があり、それを踏まえての視聴者の受信料を負担を軽減する観点があったことは、受信料を負担してくれている者に対して、関心のあるなしに関わらず能動的に情報提供する義務がNHKにはあると思う。
NHKの経営に関することはサイトを見てくださいといわんばかりの受動的態度が、まわりまわってNHKの様々な悪評につながっている一因であると思う。NHKは、報道番組で「納税者に対する説明責任」という言葉を使うことがあるだろう。自らも「受信料負担者に対する説明責任」に思いをいたしてほしい。

何をやっても厳しいが…..

IRをやれといっておいてなんだが、IRに力を入れてもNHKに対する理解がそうそう高まるとは実は思っていない。私のように理念的公共放送論にたやすく感化される人間は現代の社会では、微レ存的だろう。NHK不要論、縮小論、スクランブル論などは、今後も大きくなることはあっても収まることはない。しかし、そういう中にあっても、日本社会のconvergenceを維持していくために公共放送(最近は公共メディアというらしいが)は一定の役割を果たすことができると思っているし、NHKには自らが受信料という特別な負担で支えられるに足る存在であること、すなわち公共放送としての存在意義を能動的に発信し続けることを弛まず行ってほしい。
今日のところはこれくらいにしておく。

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