IT~それが見えたら終わり~プレゼン

『IT~それが見えたら終わり~』はスティーヴン・キング著の小説『IT』を原作とした映画である。
この小説は過去に一度映像化されているが、今回紹介するのは設定や時系列を大幅に変更したリメイク作である。
物語の舞台はアメリカ、メイン州の田舎町デリー。
そこに住む少年ビルはある雨の日に弟のジョージィが行方不明になり、周囲の大人が諦める中1人捜索をし続けていた。
そんなある日ペニーワイズと名乗る謎の道化師が起こす怪奇現象にビルは巻き込まれ、彼だけでなく彼の仲間もまたペニーワイズが起こす怪奇現象に遭遇するようになる。
ジョージィの失踪にペニーワイズが絡んでいると判断したビルは仲間と共にペニーワイズに立ち向かうというのが本作のあらすじだ。
この作品は一見ホラーに見えるかもしれないがホラーとして鑑賞すると白けるだろう。
グロテスクなデザインの怪物がいきなり驚かせてくるという単調なパターンが繰り返されるから飽きてくるし驚きや恐怖を味わうには本作の描写は力不足だ。
しかし本作の魅力はホラー要素ではない。
この物語の本質は子供から大人への成長だ。
幼く多感な少年少女にとって街や家族、学校といった身の回りの環境は文字通り世界の全てでその世界には恐怖が付きまとう。
ペニーワイズというのはその恐怖の象徴であり、少年少女は恐怖の化身であるペニー―ワイズに立ち向かう事で成長していき大人になる。
本作は言ってしまえば通過儀礼の物語だ。
ペニーワイズを始めとするホラー描写の数々は観客を驚かせたり恐怖させる為ではなく少年達が乗り越えるべき壁の役目として存在している。
そしてその壁を乗り越えるには何より仲間の存在が欠かせない事を一夏の青春を描写する事で伝えている。
主役の少年達は冴えなくて、それぞれ悩みやトラウマを抱えているが仲間達と過ごした思い出や育んだ絆が悩みやトラウマに立ち向かう原動力として機能しているのだ。
少年少女の青春の様子は見てて楽しいものでありながら、作品全体に漂う古臭い雰囲気によってどこかこちらをノスタルジーな気持ちにさせてくる。
本当の意味のホラーを求めている人にとっては既に述べた通り白ける部分もあるがノスタルジーな気分に浸りたい人や冒険モノが好きな人には是非見てほしい。
少年少女が自らの悩みやトラウマを乗り越えていく姿はきっと見終わった後に清々しい余韻を残してくれるだろう。
そして本作を楽しめたのなら続編も是非鑑賞してほしい。

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