ショーシャンクの空に 感想

  もしある日身に覚えのない罪で投獄されてしまったらどうするかーー。
 『ショーシャンクの空に』は妻と間男を射殺した罪で投獄されてしまった1人の男が、それでも希望を貫く事で希望の尊さを描いた作品だ。
 主人公のアンディは銀行員として勤務していたが妻と浮気をしていた男を射殺したとして終身刑の判決を言い渡され、劣悪なショーシャンク刑務所に投獄される。
 投獄されたら最初にアンディは服を脱がされ、水を浴びせられる。
 これがショーシャンク刑務所での囚人への洗礼なのだ。(ここは後で言及するため覚えてほしい)
 しかし横暴な看守や囚人達がいる劣悪な環境でもアンディは騒がず、天性の知恵と忍耐強さで少しずつ劣悪な刑務所を改善していく。
 銀行員をしていた経歴から看守の貯金についてアドバイスをし、その見返りとして同じ囚人の仲間にビールを寄越すように交渉する。
 その甲斐あって看守からは重宝され、囚人からは信頼される。
 更にアンディは図書係の名目で刑務所の会計士としての仕事を与えられるが、それだけではなくアンディは図書係としても活動し州議会に図書館への費用を求める手紙を送る。
 そんな折仮釈放が許可された、アンディの友人の老囚人ブルックスは50年間刑務所で生きてきたため外の世界に対して怯えを感じる。
 仮釈放された彼は外の世界には馴染めなかった。
 50年も刑務所で過ごしてきた故に、刑務所以外での生き方を知らず刑務所以外では生きられない。
 結局彼は獄中の友に手紙を遺して命を絶ってしまう。
 ブルックスは刑務所ではジェイクと名付けたカラスを育てていたが、原作ではこのカラスを育てているのは別の囚人であり、原作ではジェイクは放たれた数日後に刑務所内で死亡している。
 外の世界を知らず、他人によって生かされてきた鳥は放たれても刑務所で死ぬしかなかった。
 この鳥の末路は正にブルックスのそれであり、映画でジェイクの飼い主がブルックスになったのは必然だろう。
 アンディは友人の死を悼みつつも、刑務所の環境を改善するべく尽力する。
 ついに州議会から図書館の増築や本の寄贈を許可してもらい図書館は囚人たちの娯楽と教養の場として生まれ変わる。
 アンディは希望が何より大切である事、希望を保ち続ける為には音楽や本などの心の豊かさが必要だと知っていたからだ。
 しかし長年の刑務所で暮らしている友人のレッドからは希望は刑務所では不要だと反論される。
 それは刑務所の中で決して短くない時間を過ごした為、刑務所でしか生きる術を持てなくなった故の言葉だ。
 レッドもかつてはハーモニカに興味があったが獄中生活を続ける内に興味を失っていた。 それだけではなくブルックスと同じように外の世界に対してレッドは恐怖を抱く。
 未来などどこにもない塀の中で、心の余裕などない劣悪な環境に慣れそこ以外では生きれなくなってしまった事実がレッドの絶望と共に伝わってくる。
 しかしそれでもアンディは希望を諦めない。
 出所後の夢を語り、その夢に友を誘い、興味を失ったハーモニカを渡しレッドの心に希望を取り戻させようとする。
 アンディが希望を取り戻させようとしたのはレッドだけではない。
 彼は囚人達に高卒の資格を取らせる事で更生の手助けをする。
 その中の1人であるトミーはアンディの投獄の経緯を聞き、かつて別の刑務所でアンディの妻と間男を殺害した真犯人と出会っていた事を思いだしアンディに告げる。
 アンディは再審を所長に頼むも、アンディの会計としての能力を手放したくない所長は彼を懲罰房に入れ真相を知るトミーを脱獄を図ったとの名目で射殺する。
 その1ヶ月後、アンディは19年の獄中生活で脱獄の準備を完全に整え脱獄を決行する。
 嵐の夜の中、掘り進めていたトンネルから下水に出て、下水から川に出る。
 初めて外に出て刑務所から解放された彼は雨を浴びながら囚人服を脱ぎ捨てる。
 かつて投獄された時のように水に濡れ、かつて投獄された時とは違い解放として雨に打たれる。
 そして脱獄を果たした彼は所長の不正処理を手伝っていたことを利用し、架空の人物として振る舞い所長が貯蓄していた金を全て奪い所長の悪事を告発した後街を出てメキシコに逃走。
 そこでかつて描いていた夢の通りに新生活を送る。
 そしてレッドも40年目にして仮釈放許可が下り、外での生活を許可されるが刑務所での生き方しか知らないためブルックス同様外の世界に馴染めない。
 しかし刑務所でアンディと語り合った夢を思い出し、彼の元に向かう。
 希望を取り戻したレッドの心にはもう外の世界への恐れは無かった。
 絶望に流されそれに慣れてしまう事は容易いがそうなってしまった場合、例え絶望が無くなったとしても希望を見出せず生きられない。
 それ故にどんな状況であっても希望こそが人生を照らし、恐怖を消してくれる。
 希望という存在の尊さ、大切さを鮮明に描いた名作でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?