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【声劇台本】Blessing for you.(男1:女2)

登場人物(1:2)

・ウィリアム/男
大きなツノを持つ怪物の国の王子。他人に興味がないが、人間のソフィーと出会って心を開いていく。

・ソフィー/女
人間の少女。母が異国の出身で両親を事故で早くに亡くした。容姿の違いで迫害を受けている。

・イザベラ/女
怪物の国に住む魔女でウィリアムの友人。ウィリアムに恋心を抱いている。

【時間】約40分
【あらすじ】
ウィリアムは怪物の国の王子だ。ある日、父である国王に結婚を勧められる。好いた相手と結婚していいと言われたが、他者に興味のないウィリアムは困り果てていた。気分転換に人間の住む場所に隣接してる森に足を踏み入れると、人間の少女がいた。


【本編】


ソフィーのモノローグ。

ソフィー「私には夢があるの。人間とモンスターが住むこの世界で、私はカッコよくて優しくて素敵な王子様と結婚するんだ…!…子供っぽいって笑う?でもね、私は真剣なのよ。私は1人ぼっちでいつも仲間外れ…、退屈だからよくこの森に遊びに来てるの。怪物の国と繋がってるって皆んなは言うんだけど、私は平気よ!だって、私が居なくなって泣く人なんて……居ないんだもの」


怪物の城。

ウィリアム「はぁ、憂鬱だな…」

イザベラ「あ、ウィリアム王子!庭の方にいらしたのですね?見つからなくて城中探し回ってしまいました」

ウィリアム「イザベラか、今日は何の用事だ?」

イザベラ「母を訪ねて来ました」

ウィリアム「イザベラの母は国お抱えの一流魔女だからな。中々家に帰れず君も寂しかろうと父が申し訳なさそうにしていたよ」

イザベラ「王様にその様な気遣いをされるなんて…でも大丈夫ですよ。私だって一流の魔女と謳われる母の娘なのですから、心配無用です!」

ウィリアム「いずれ君も、君の母と同じ様になるかもしれないな」

イザベラ「そうなれる様に頑張ります」

ウィリアム「で、俺を探していたのは何故だ?」

イザベラ「あ、その…帰る前にウィリアム様にご挨拶をと…思いまして」

ウィリアム「そうか。わざわざ探してまで挨拶に来てくれたのか」

イザベラ「だってそれは……」

ウィリアム「ん?」

イザベラ「いえ…なんでも御座いません……それより、先程ため息をつかれていませんでしたか?何かお困り事でも?」

ウィリアム「見られていたか……父上から厄介な頼み事をされただけだ…」

イザベラ「王様から…?一体何を…」

ウィリアム「俺の結婚の事だ」

イザベラ「け、結婚!?」

ウィリアム「そんなに驚く事か?俺は王子だし年齢的にも考えろと言われたんだ。はぁ、正直そう言うのには興味が湧かないのに…面倒臭いったらありゃしない…」

イザベラ「そ、そうなんですか…。で、でも王族の結婚となるともうお相手は決まってるのではないですか?」

ウィリアム「うん、決められた結婚はあるにはあるが、うちの国ではそれはない。相手がいなければお見合いとか行われるんだが、相手が人間で無ければどんな相手でも構わないらしい」

イザベラ「そう言えば、今の女王様は下級貴族の出だと聞いたことありますが…」

ウィリアム「確かに、母上は下級貴族の者だった。王族となるにあたってマナーや教養を覚えるのに苦労したと言っていたよ」

イザベラ「それは大変ですね…」

ウィリアム「でも、父上が励ましてくれたから頑張れたとも仰っていた…母も父が好きだからな…」

イザベラ「王様と女王様は大層仲がよろしいですものね」

ウィリアム「あぁ…。俺もそう思える相手と出会えるのだろうか…」

イザベラ「ウィリアム様……」

ウィリアム「父上に言われたんだ。好きな相手を…互いを想い合える愛しい者を探して来いと…」

イザベラ「え…」

ウィリアム「結婚相手を見つけて来いだとさ…本当に面倒だ」

イザベラ「ウィ、ウィリアム様…!」

ウィリアム「ん?どうしたイザベラ。…顔赤くないか?熱でもあるのか?」

イザベラ「へ!?あ、いや、その…な、何でもないです!わ、私はこれで失礼します!」

ウィリアム「あ、イザベラ!……行ってしまった。何だあいつ急に慌てて…、しかし自分で婚約者を探すとなっても一体どうしたものか…。…ダメだ、考えるだけで頭が痛い…気分転換に散歩にでも出掛けるか…。護衛は居て欲しくないし、せめてイザベラが居てくれれば良かったんだが…帰ってしまったしなぁ……そうだ、森の方に行ってみるか…人間の世界と繋がっている場所ではあるものの、人間は俺達怪物の存在に怯えて、こっちの領域には入って来ないらしいから、行ってみるか」


森。

ウィリアム「森の中は静かだな…、動物や鳥の鳴き声ばかりで心が落ち着く……しかし、結婚相手なんてそんな簡単に見つかるものか?父上は数ある貴族達と顔を合わせている時、偶然母上を見つけ一目惚れしたと聞いたが…そんな運命的な話、中々ないだろう………ん?」

ソフィー「あら」

ウィリアム「………この匂い…貴様は人間?」

ソフィー「わぁ!なんて大きな角!?初めてみる動物さんだわ!」

ウィリアム「は?」

ソフィー「あなたは何て動物なのかしら?でも人と同じ様に二足歩行だし、まぁお洋服も着てるわ!しかもとってもキラキラしてる」

ウィリアム「……貴様わざとか?」

ソフィー「…本当にモンスターの世界に繋がってるのね。私モンスターさんを見たのは初めてだわ!」

ウィリアム「俺も、そんなにこやかに接して来る人間と会うのは初めてだ」

ソフィー「あら、どうして?」

ウィリアム「人間は我々怪物を恐れる。同じ様な姿ばかりの人間は様々な姿がある怪物とは全く違うからな。それに大昔、怪物は人間を喰らったり同じ怪物にして攫ってしまう事もあったそうだ。今は住む場所を分けて共存しているが、人間が怪物を恐怖対象から外す事はないだろう」

ソフィー「ふーん。確かに、大昔悪いモンスター達が人間を襲っていたって聞いた事はあるわ。でも、それって昔の話でしょう?」

ウィリアム「だが、人間は未だに怪物を恐れるだろ?」

ソフィー「私が今貴方を見て怖がってる?」

ウィリアム「そうは見えないな…」

ソフィー「でしょう?最初はビックリしたけど、大きな角が生えてる以外は人間と変わらないタイプなのね。ねぇねぇ、こわーい獣みたいな顔したモンスターっているの?」

ウィリアム「獣人族のことか?そんな奴等よりもっと恐ろしい顔をした種族もいるぞ?」

ソフィー「まぁ!そんなモンスターさんがいるなら、私だって怖がってしまいそう」

ウィリアム「…本当に怖がらないんだな。貴様、俺と同じ怪物じゃないのか?」

ソフィー「そう見える?…だって私は同じ様な姿ばかりの人間の一つでしょう」

ウィリアム「……そう、か。すまない、さっきの言葉は訂正したい」

ソフィー「え?」

ウィリアム「同じ様な姿ばかりではないみたいだ…君の名を教えてくれないか?」

ソフィー「ソフィー。貴方は?」

ウィリアム「俺はウィリ……ウィルで良い」

ソフィー「ウィルね!私は森の近くにある村の外れに住んでるの。だからこの森には良く来るのよ。他の人達は怖がって近付かないから、ここは私のお気に入り!」

ウィリアム「そうか…、俺も森の近くに住んでるんだ」

ソフィー「じゃあまた会えるかもしれないわね!」

ウィリアム「え?」

ソフィー「えって…また会いましょうよ。今日はもう日が沈んでしまいそうだし、また明日!此処で会いましょうウィル!」

ウィリアム「……分かったよ。また明日、ソフィー」

ソフィー「じゃあね!」

走り去るソフィー。

ウィリアム「人間と、会う約束をしてしまった…。変な奴だな……また明日…か…。ククッ…」


翌日、森の中。

ソフィー「あ、ウィル!こんにちは」

ウィリアム「…本当に来るとわな」

ソフィー「何でそんな事言うの?約束したでしょう」

ウィリアム「…そう、だったな。こんにちは、ソフィー」

ソフィー「もしかして待っててくれたの?」

ウィリアム「人間とは言え女性を待たせる趣味はないんだ。だが、そんなに待ってはいない。気にするな」

ソフィー「んー、昨日も思ったけどウィルって良い所の出身?モンスターの世界が人間の世界とどれだけ違うか分からないけど、何だか貴族みたい」

ウィリアム「あー、……まぁそんな所だ。俺達怪物の世界にも階級はある。人間の世界と差し支えないと思ってくれて良い」

ソフィー「そっか、じゃあ本当に違うのは見た目だけなのね。…でも、角を隠して見るとウィルってやっぱり人間と変わらないわ。むしろイケメン…!あっ、まさかウィルって…王子様だったりして!」

ウィリアム「え!?な、な…にを…」

ソフィー「何を動揺してるの?私、王子様って物語の中でしか見た事ないけどすっごくカッコいい人なのよ!」

ウィリアム「そ、そうか…」

ソフィー「……私には夢があるの」

ウィリアム「夢…?」

ソフィー「人間とモンスターが住むこの世界で私は、カッコよくて優しくて素敵な王子様と結婚するんだ…!」

ウィリアム「……」

ソフィー「…子供っぽいって笑う?でもね、私は真剣なのよ」

ウィリアム「ソフィー…?」

ソフィー「私は1人ぼっちでいつも仲間外れ…、退屈だからよくこの森に遊びに来てるの。怪物の国と繋がってるって皆んなは言うんだけど、私は平気よ!だって、私が居なくなって泣く人なんて……居ないんだもの」

ウィリアム「お前、親は…」

ソフィー「…私が子供の時、事故で亡くなったの。私は遠い親戚の家に引き取られた。それがこの森に近い村の家の人達…でも、ある程度大きくなった私は家を追い出されて、今は村外れに1人で住んでるの」

ウィリアム「何でそんな扱いを受けてるんだ…」

ソフィー「……」

ウィリアム「っ!すまない、答え辛い事を…」

ソフィー「私の髪と瞳ってこの辺じゃ珍しいんだって」

ウィリアム「え?」

ソフィー「お母さんが異国の出身らしくて、そこの国の髪と瞳の色なんだって。だから村の人達に気味悪がられちゃって…でも、気にしてないわよ!だって私はいつか、そんな事も気にしない素敵な王子様と添い遂げるんだから!」

ウィリアム「…ソフィー」

ソフィー「……なーんて、現実は甘くないわよね。御免なさい、こんな話しちゃって…」

ウィリアム「…君は強いんだな」

ソフィー「え?」

ウィリアム「君は素敵な女性だ…俺が、…俺が王子様なら君を妃に迎えたい位に…」

ソフィー「…ま、まぁ…。ふふ、貴方が王子様なら私なんて勿体ないわよ?」

ウィリアム「そんなは事ない。俺が怪物だから、君の容姿は1人の可愛らしい女性にしか思えない。君は見た目も心も美しい」

ソフィー「……初めて言われた。…ありがとうウィル!…私、モンスターに生まれてれば良かったわ」

ウィリアム「…え?」

ソフィー「…モンスターだったら、貴方を好きになっても問題なかったかなって…」

ウィリアム「ソフィー…」

ソフィー「な、何か柄にもない事言った気がするわ!今のは忘れてくれない!?」

ウィリアム「…ふ、何故だ?俺はまだ君を知らな過ぎる。それが柄にもないと言うのなら、君をもっと教えて欲しい。俺も… 結構柄にもない事を言ってるからな」

ソフィー「あら、お揃いだったのね!」

ウィリアム「…怪物と人間がお揃いか…君はつくづくおかしな事を言う人間だ」

ソフィー「そっちこそ、想像と違って優しいモンスターさんだこと!」


数日後。

イザベラ「ウィリアム様!」

ウィリアム「イザベラ?血相変えてどうした?」

イザベラ「どうしたもこうしたも…最近護衛も付けず頻繁にお出掛けになられてると聞いたのですが、本当ですか?」

ウィリアム「…君には関係ない事だ」

イザベラ「何故お話して下さらないんですか?王子である貴方が一人で外出してる事が知れたら、命を狙われる可能性もあるんですよ。何処へ出ているのか、使用人の一人にでもお伝えください!」

ウィリアム「まだ使用人でもない君に言われる筋合いはないよ」

イザベラ「お、…お友達…だからでしょう」

ウィリアム「……」

イザベラ「王様が…ウィリアム様に聞いて欲しいと…母伝に頼まれまして…」

ウィリアム「すまない…。確かに、君は数少ない俺の友人だ。だが、あまり言えない事もある…分かってくれないか」

イザベラ「………」

ウィリアム「父上には上手く聞けなかったと言って来れば良い。あの人は君を可愛がってるから、怒られる事もないはずだ」

イザベラ「……何で、お答えになってくれないのですか」

ウィリアム「イザベラ?」

イザベラ「人間の世界と繋がるあの森に足繁く通う事が何故言えない事なんですか?」

ウィリアム「…知っていて聞いて来たのか?」

イザベラ「はぐらかされなければ追求もしませんでした。何故話して下さらないんですか?」

ウィリアム「…君には関係ない」

イザベラ「…そういえば、あの森…最近人間が彷徨っている様ですね」

ウィリアム「何…」

イザベラ「以前噂で聞いた事があるのです。怪物達は条約により人間を殺す事や食す事は禁じられています。だから、下手に襲われる事はないでしょうけど、古い思考を持った怪物がその人間の下に現れでもしたら……」

ウィリアム「ソフィー……くっ…!!」

走り出す、ウィリアム。

イザベラ「あっ、ウィリアム様!?お待ち下さい!」

ウィリアム「ソフィー…!」

イザベラ「……ウィリアム様…っ…」


森の中。

ウィリアム「ソフィー、ソフィー!何処に居るんだ?ソフィー!」

辺りを探すが、誰も見当たらない。

ウィリアム「…ソフィーが、人間が森に居ると噂されていただなんて…、幾らソフィーでもこれ以上踏み込むと危険な目に合わせてしまうかもしれない…。そんなの、絶対ダメだ!人間が…彼女が傷付く様なんて見たくない!…俺は、俺が見ていたいと思ったのは…彼女の微笑んだ姿だけ…それが守れるなら…何も望まないのに!……っ?…何で、たかだか人間の女相手にこんな思いをしてるんだ、俺は。俺は…俺はまだ…ソフィーと話がしたい。それだけだ…!何処にいるんだ…ソフィー…」

ソフィー「何を塞ぎ込んでいるの?ウィル」

ウィリアム「っ!?そ、ソフィー!?」

ソフィー「こんにちは、今日は随分と早いじゃない。私達は友達なんだから、そこまで気を使わなくても良いのよ。ま、私も時間より早く来ちゃってるけど。早く着いてれば、貴方とお話する時間が増えないかな〜って魂胆だったの、成功かしら?」

ウィリアム「……会いたかったよ。ソフィー」

ソフィー「へ!?…な、なぁにウィルったら、約束してたのに大袈裟ね!そんなに私に会いたかったの?」

ウィリアム「会いたかった」

ソフィー「き、今日は特に素直ね…全く…こっちが照れちゃうわ。それより、今日はあっちの花畑に行く約束よ」

ウィリアム「あぁ、行こう。今日も一緒に……え?」

ソフィー「…あぇ……」

ソフィーの胸にナイフが刺さる。



ウィリアム「ナイフ…何故、お前が此処に居るんだ、イザベラ。…何で、ソフィーを刺しているんだ…!?」

イザベラ「ふ、ふふふ…あ、貴女がウィリアム王子をたぶらかしていた人間の女ですか…!許さない…許さない…!」

ウィリアム「俺の跡をつけていたのか…?っ、い、今すぐソフィーから離れろ!」

イザベラ「あはは、こんなに深くナイフが心臓を貫いてしまえば、人間も怪物も死んでしまいますよ…ねぇ、沢山血が溢れて…貴方が悪いんですよ…人間が怪物の王族に手を出すなんて…!」

ウィリアム「イザベラ違う!彼女は、俺の友人で…」

イザベラ「人間が友人?貴方も大概な事を仰いますね?怪物と人間の間には愛情も友情もありません!共存は出来ても、住処を隔てないといけないものなのですよ!王族である貴方が一番分かっている事でしょう?」

ウィリアム「そう…だが…」

ソフィー「う、…ウィル…」

ウィリアム「ソフィー!?」

イザベラ「ウィル…ウィル?…ウィルと呼ばせていたのですか?あぁ、何と言う事…私だってそんな呼び方出来なかったのに…何で、何で人間の女なんかにウィリアム様の心まで奪われなくちゃいけないの!?ウィリアム様を好きなのは私なのにぃ」

ソフィー「あ、ぐぅ…がはっ!?」

ウィリアム「ソフィー!」

力なく倒れるソフィー。

イザベラ「あ、あはは…死んでしまったの?なんて脆い事…これだから人間は…ウィ、ウィリアム様…大丈夫。私が彼女の死体を片付けますわ。私は魔女ですから、魔法を使ってどうにか野生動物の仕業に見せますので…」

ウィリアム「…それでも、貴様がソフィーを…人間を殺した事実は消えないぞ」

イザベラ「っ…、ウィリアム様、どうかこの事はご内密に願いたく御座います!私…貴方の側を離れたくありません!」

ウィリアム「……イザベラ、君はずっと俺の友人であり、理解者だった…。でも、俺が君を理解出来ていなかったらしい。俺に向けられるその想いも…気付いてやれなかった。だから、こんな悲劇が起きてしまったのか…」

イザベラ「ウィリアム様…」

ウィリアム「だが、理解出来た所で…君は俺の友人以上にはなれない」

イザベラ「そんな…」

ウィリアム「大切な友人に好きな女を殺され、冷静でいられない。…この事について俺の口からは何も語らん。貴様がどうしようが好きにすると良い…しかし、今の俺は貴様を許せない…」

イザベラ「っ…」

ウィリアム「今、君を殺してやりたい気持ちを必死に抑えている…君は俺の友人だから……」

イザベラ「……お慈悲を頂き…誠に感謝いたします。己が激情に任せ、ルールを破ったのは私です。人を殺す事、食す事が禁じられているのに取り返しのつかない事を致しました…。母に此度の件、懺悔して来ます。どうか、お元気で…」

ウィリアム「…君に答えてやれなくて悪かった。でも、これが誰かを好きでいる気持ちなら…気付かせてくれて…俺の友でいてくれて…感謝する、イザベラ」

イザベラ「っ…、はい…。失礼致します…」

涙ながら立ち去るイザベラ。


ソフィーを抱きしめるウィリアム。

ウィリアム「……彼女を責めた所で、君は戻って来ない…。君はイザベラに会いたがってくれてたのに…。ソフィー…こんな事になるなんて…すまない…すまない…。あぁ、ようやくこの胸のざわめきの正体が分かったと言うのに…伝えたい相手が消えてしまうなんて誰が想像出来た?だって、君は人間で俺は怪物…交わることのない存在だったのに、こんなに惹かれるなんて思っていなかったんだ…。どうか、目を開けてくれ」

動かないソフィー。

ウィリアム「ソフィー…、ソフィー……。愛してる……」

ソフィーを強く抱き締めたり、キスをするウィリアム。

ウィリアム「っ……、何だよ、ダメじゃないか。君から聞いた物語の王子様は、キスをしたらお姫様を目覚めさせていただろう…?おかしいな…俺は王子なのに…。………もし、もしもだが…君を目覚めさせる方法があるのなら……君は許してくれるか…?」


イザベラ「私は嫉妬心に駆られて貴方が恋に落ちた人間を殺めてしまいました。私はルールを破り、貴方に合わす顔も御座いません。ですが、私の長年の想いとあの時の衝動への後悔を込めて、どうか祝福を…ウィリアム様が幸せになりますように……」

目を覚ますソフィー。

ソフィー「……ウィ…ウィル…?」

ウィリアム「ソフィー…?」

ソフィー「何があったの?私…何だか体が軽いわ……ウィル、貴方泣いたの?頬が涙で濡れてる!」

ウィリアム「…あぁ、これはね君が目覚めてくれた事への喜びと申し訳ない事をしたと言う後悔の涙だ」

ソフィー「あら、ウィルったら一体何したの?」

ウィリアム「君をモンスターにしてしまった」

ソフィー「……まぁ、ウィルより小さいけど角の様な物が頭に生えてるわね!…これ、ウィルがやったの?」

ウィリアム「…うん。俺の友人が君を恋敵だと勘違いして嫉妬に狂い、君の胸にナイフを突き立ててしまったんだ」

ソフィー「わっ!よく見たら服が真っ赤!…でも私なんともないわよ?」

ウィリアム「俺たちは人間を怪物に出来る方法があるんだ。大昔の伝承だと思っていたけど、本当に出来るなんて…」

ソフィー「何をしたの?」

ウィリアム「俺の血を飲ませた」

ソフィー「…口の中が鉄臭いのはそのせいだったのかしら?…じゃあ私はモンスターになったの?」

ウィリアム「みたいだね。でも、君の了承もなしに…ごめん」

ソフィー「何で謝るの?私は独りぼっちだったのに、貴方が私を必要としてくれてその方法を取ったのなら私は嬉しいわ」

ウィリアム「ソフィー…」

ソフィー「これからどうなるか分からないけど、貴方と同じ世界に行けるなら私はそっちに行ってみたい!今から私は新しい私と変わったのよ!凄い事じゃない!ねぇウィル、私を怪物にしてくれてありがとう」

ウィリアム「……ソフィー、君は…本当に予想が付かない事を言うね」

ソフィー「…さようなら、今までの私」

ウィリアム「ソフィー、聞いて欲しい事があるんだ」

ソフィー「なぁに?」

ウィリアム「怪物になった君だから…いや、ソフィーだから言う。君が好きだ」

ソフィー「え?」

ウィリアム「怪物だろうが人間だろうが、ソフィーだから俺は好きになった。君を俺の妻にしたい」

ソフィー「え!?えぇ!?」

ウィリアム「俺はこの森を抜けた怪物の国の王子なんだ。怪物の世界は人間の世界と違って王族は本当に好きになった相手と結婚する事が出来る。相手は貴族でも庶民でも問われない。まぁ、人間は除くのだが…しかし今、その隔たりは消え失せた。行く所がないなら、俺の下へ来てくれないか?」

ソフィー「ま、まま待って!?突然何を言い出すの!?」

ウィリアム「突然じゃない!俺は君と過ごす時間の中で自覚した。君が好きだ。…俺は今まで誰にも惹かれなかった。恋愛に興味を持たなかった故か、近くにいた友からの恋情も気付けなかった。それは、俺が誰かを好きになる事がなかったからじゃなく、君を好きになる運命だったからだ。…君が俺を好いてくれなくても、自分の気持ちは正直に伝える。少しでも俺の気持ちに向き合って貰う為…そして、いつか振り向いて貰える様に…」

ソフィー「ウィル…」

ウィリアム「愛してる。君が好きだソフィー」

ソフィー「……」

ウィリアム「…あ、返事はすぐにじゃなくても…」

ソフィー「いや、…その…今答えたらまるで、貴方が王子様だからって思われそう…」

ウィリアム「え?」

ソフィー「惹かれていったのが貴方だけなんて思わないで…貴方が王子じゃなくても良い。怪物であっても良いって思ってた…怪物なら、いっその事、食べられちゃっても良いって思ったりもしたくらいよ…。叶わない恋なら苦しいうちに消えてしまいたい…そう思ってたのに…、私が怪物になっちゃったら貴方を諦める事なんて出来なくったじゃない!」

ウィリアム「…ソフィー」

ソフィー「好き…。こんな幸せ…あってもいいの?」

ウィリアム「良いよ。俺が許すから…」

ソフィー「怪物って、人間を怪物にする事って大丈夫なの?」

ウィリアム「殺したり、食べたりするのはダメだけど、怪物にする事は言及されてない。そもそも言い伝えに近かったし、住処を分けてる時点でそれを試す事もなかった…。正直、君が怪物として目覚めれたのも奇跡か王族の血のお陰か分からない」

ソフィー「…でも、これで貴方のお友達は罪に問われ無くなったかしら?」

ウィリアム「イザベラのことか…?」

ソフィー「この事は私とウィルとその人の秘密。私、会ってみたいのよイザベラさんに、優秀な魔女なんでしょう?私、魔法を見てみたいの!」

ウィリアム「……そうだね、ある意味彼女のお陰でもあるし、彼女も酷く後悔していた…。君が目覚めて気持ちを通じ合わせた今、彼女を憎む必要はない…ゆっくり、やり直していこう」

ソフィー「えぇ。これから…ね」

ウィリアム「幸せにするソフィー」

抱き締め合う二人。

ソフィー「あ、ウィル…聞きたい事があるんだけど…」

ウィリアム「どうした?」

ソフィー「…王族ってテーブルマナーが厳しいって聞いたことあるんだけど…大変なの?」

ウィリアム「……ふふ。あぁ、大変だよ。やっぱり結婚は難しいかい?」

ソフィー「まぁ、馬鹿にしないでちょうだい!私、王子様と結婚する為に頑張るに決まってるじゃない!そんな事でへこたれないわよ!」

ウィリアム「あぁ、たくましい事だ。そんな君が大好きだよソフィー!」

ソフィー「私も!これからの私達に祝福あれ!」


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