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【短編声劇台本】死神の気まぐれ(男1:女2)

登場人物(男:1、女:2)

・死神/女
動物の魂をあの世への導く者。性格が悪く、かなり気まぐれ。

・少年/男
少し気の弱い中学生。とても優しい人間。

・猫/女
少年の飼い猫。少年とは兄弟の様に育ってきた老猫。

サブキャラクター(兼ね役可能)
・母親/女
・子供/不問

【時間】約15分
【ジャンル】感動


【本編】

死神「もしも、死ぬ前に一つだけ…。たった一つだけ願いが叶うとしたら…あんたはどうする?何を願う…?ただの気まぐれだ…だって、退屈なんだもん」


少年「はぁ……どうしよう…」

死神「hey少年!辛気臭い面してどーした?休日、昼下がりの公園でそんな顔は目立って仕方ねーよ」

少年「うわぁ!?突然何!?だ、誰ですか…?」

死神「ほぉ…アタシ様の名前を聞きたいだなんて度胸があるねぇ」

少年「いや、いきなり知らない人に話しかけられたら誰だってびっくりするでしょ…」

死神「そっか…まぁ人間ってそんなもんか…」

少年「え?」

死神「どーでもいいや!なぁ少年、お前にはアタシ様はどう見えてる?」

少年「な、何です?その質問…」

死神「いいから答えな?どんな姿だ?」

少年「…真っ黒い服を着た…派手な髪色の女の人…」

死神「ふむふむ…ちゃんと人間に見える格好になったみたいだな♪」

少年「何言ってるの?」

死神「アタシ様は死神!死期が近い奴にしか見えないあの世への案内人さ」

少年「…は?」

死神「だから、アタシ様は死神!ぶっちゃけ今は少年にしか見えてなーい」

少年「え!?」

子供「ねぇママーあのお兄ちゃんずっと一人で喋ってるよー?」

母親「しっ!見ちゃいけません!」

少年「……え!?」

周りのヒソヒソ声

死神「場所変えてもいいよ?w」

少年「………」


死神「この公園広いな〜。この辺りの茂みなら人も来ねぇだろ」

少年「死神…かどうかは分かりませんけど、僕にしか見えないのは本当みたいですね…。一体何の様ですか?僕を殺しに来たの?」

死神「さっきも言ったろ?アタシ様は死期が近い奴にしか見えない…。ま、普段は姿なんて見せねーけど、今回はきまぐれなんだ」

少年「気まぐれ?」

死神「なぁ少年?願い事を一つだけ叶えてやるって言ったら…お前はどうする?」

少年「え…」

死神「だから、願いを叶えてやる…!ひとつだけ…これはアタシ様の気まぐれだ」

少年「…どういう事ですか?」

死神「普段は粛々と死んだ奴をあの世への導いてやるんだけど、アタシ様は飽き性でな。偶にはこういう粋な事でもしてやろうかなって思ってさ…つまり宝くじに当たったって感じに思っとけw」

少年「そんな力があるんですか?」

死神「アタシ様は出来ないことはしない。何でもいいぜ?あ、でも生き死にに関する事は無しな。商売上がったりだ」

少年「…生き死に以外…」

死神「例えば超高級ディナーが食いたいとか遊園地貸切とか外国に行ってみたいとかー」

少年「ハル…」

死神「え?」

少年「最後にハルと喋りたい…それじゃダメですか?」

死神「………」

少年「ハルは大切な存在なんです…最後に言葉が交わせるなら…」

死神「…………わかったよ」

パチンっと指を鳴らす

死神「はぁ…なんか思ってたのとちげーや」

少年「え?」

チリンと鈴の音が鳴り、茂みがカサカサと動く

少年「ハル!?…あぁ、やっと見つけた…!」

猫「坊や…何で此処に?え、貴女は…」

死神「はぁ…」

少年「ハル!ハル、この死神さんにね僕の願いを聞いてもらったんだ…ずっと探してた…」

猫「坊や…どうして、どうして?何で私を見つけようと…」

少年「家族なんだから当然でしょ?勝手に居なくならないでくれ…」

猫「…どうして私の言葉が!?」

死神「そいつがお前と話したいって言ったから」

猫「…何でそんな事お願いしたの?私は貴方の事を想って家を出たのに…」

少年「僕はずっと…君が勝手に居なくなってからずっと探していた。母さんも父さんも心配してる…だから帰ろう?」

猫「……坊や。優しい所は飼い主様に似たんだね…こんなに大きくなって…私が子供の頃は私を抱き抱える事なんて出来なかったのに…」

少年「僕はまだまだ子供だよ。ハルは僕のお姉さんみたいで、いっぱい遊んでくれたよね」

猫「もうそれも叶わないんだよ…」

少年「ハル……ハルぅ…」

猫「温かいねぇ…大きくなったねぇ坊や。とても心地良いよ…勝手に居なくなってごめんね。どっちにしろ寂しい思いをさせたんだね…」

少年「うん、帰ろう…ゆっくりおやすみ…」

猫「死神様、ありがとう…私のお願いを叶えてくれて」

死神「は?」

猫「まさかこの子も私の為に願いを叶えるなんて思ってもみなかったけど…。素敵な最後になったわ…」

死神「そーかよ。そりゃよかったー(棒)」

猫「坊や、もっと強く抱き締めて?貴方の腕の中、飼い主様に似て温かいから…」

少年「うん、うん…おやすみ。ハル」


数日後、少年の家の庭

少年「ハル…」

死神「これが墓か?」

少年「うわっ!?し、死神さん…?どうしてここに!?」

死神「アタシ様は神出鬼没なの。はーぁ…よいしょっと…」

少年「あ、手を合わせてくれるんですか?ありがとうございます」

死神「気まぐれだ…。アタシ様はペットとかの動物の死を案内する死神だ」

少年「…死神にも種類とかあるんですね」

死神「で、前に人間を担当してる死神が気紛れで人間の願いを叶えてやろうとした。アタシ様がこいつにしたみたいにな」

少年「そうなんですね…その人はなんて?」

死神「病気で体が動かなかった奴だったんだが、自分の足で好きな奴に会いに行かせてくれ…だってさ…」

少年「……素敵ですね」

死神「もうちょっと欲深くても良くねって思うけどね、アタシ様は」

少年「…死ぬのが分かってたら考えは違うでしょ。僕だって貴女がいきなり現れて、僕が死ぬのかと勘違いしましたもん。…だったら死期を悟って居なくなったハルともう一度会いたかった…」

死神「猫も猫だ…。自分は死ぬからその願い事の権利をお前に渡してくれって…」

少年「ハルは昔からとても優しかったんです。本当に僕のお姉ちゃんみたいで」

死神「…アタシ様は分からないね、そういうの」

少年「でも、感謝してます。貴女のおかげでハルを家に連れて帰ることが出来ました。この庭…僕が赤ちゃんの頃、子猫だったハルが迷い込んできたんです。それから僕達はずっと一緒で…だから、ここにハルのお墓を立ててあげたかった」

死神「…はぁ、アタシ様って性格が悪いからよー、そういう感動話苦手なんだよねー。気紛れで願い事なんて叶えるんじゃなかったぜ。じゃーな」

少年「少なくとも、僕とハルは救われました!ありがとうございます、死神さん!」

死神「はー、うぜぇ。ありがとうなんて一番嫌いな言葉だ!」

風の音

少年「うわっ、強い風…!?……あ、いない…」

少年、はにかんで空を見上げる

少年「死神…というより天使みたいな人だったな…」


死神「二度と気まぐれなんて起こさねー…!こんなん続けたら気が狂っちまうぜ…アタシ様はそんなキャラじゃねーっつーの!!」

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