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フィリグリーのはじまりとこれから。職人ワリヨさんとの対談。

ジュエリーマザーハウスは、インドネシアの伝統工芸フィリグリーの技術を活かしたジュエリーから始まりました。

今回はじめて来日したフィリグリー職人のワリヨさんと、現地コーディネーター笠原さん、マザーハウス代表兼チーフデザイナー山口の三者で語られた、これからにつながるはじまりの話をお届けします。


山口 ワリヨさんは今回、日本ははじめてですよね。

ワリヨさん はい、とても嬉しいです。全てが素晴らしいです。みんな優しくて、たくさん話しかけてくれますし、どこも清潔です。昨日は家族と電話して「とうとう日本についたんだね」と言われました。

山口 それぐらいジョグジャカルタは離れている生産地ですよね。笠原さんが始めて村に案内してくれて、ワリヨさんに会った時のことが、すごい印象に残ってます。その時のワリヨさんの印象をちょっと聞いてみたいです。

ワリヨさん 山崎さんも一緒に来たんですよね。こんな誰も海外の人が来ないような山の村に足を運んでくれたのが、すごく嬉しかったです。

ワリヨさん

山口 ワリヨさんはマザーハウスと出会うまでは、どんな生活をして、どんな作品を作ってたの。

マザーハウス代表兼チーフデザイナー 山口

ワリヨさん 地元企業やシルバーショップから依頼されたものをフィリグリーで作っていました。サイズがもっと大きいピアスやネックレスですね。

山口 フィリグリーはいつから作りはじめたんですか?誰かに教わって?

ワリヨさん 23歳ぐらいの時ですね。ジョグジャカルタにシルバーショップがたくさんある地区があるんですが、そこで仕事をしながら学んでいきました。フィリグリーとは呼べないけど、その前から銅線では作っていました。(※伝統的なフィリグリーはシルバーで作ります)

山口 それは元々自分がジュエリー作りたいなっていう気持ちがあったんですか。

ワリヨさん 僕の村は山の中なんですけど、農業を営みながらそういった工芸品を作るのが当たり前なんです。その環境の中で育ったので、自然に手を動かし始めました。

山口 最初お邪魔した時に結構モチーフが大きいなっていうのと、なんとなくまだ印象が日本と繋がらなかったんですよね。サイズと素材の金への変更っていうのは越えないといけない挑戦だったと思います。最初どう思って、どう乗り越えていったか教えてもらえますか。笠原さんの視点でも。ワリヨさんの視点でも。

現地コーディネーター 笠原さん

笠原さん 一番最初に「花弁」を作った時に、山口さんがとにかく「小さく小さく」、いくら作っても「うん、いいね。もうちょっと小さく。」って(笑)。そのときにサイズについては理解しました。
一番大きな壁だったのは素材ですね。素材が変わると、素材にまつわる全ての事が変わるんですよ。高価になると、その素材を守る姿勢も入れなければいけない。素材を無駄にしない配慮も必要。
それをどこまで受け入れてくれるのかな、というのがありました。でも、ワリヨさんは一緒に勉強させてもらいながら、一緒にやっていける方法を作ったという感じでした。

ワリヨさん 金を使うということは、最初全く馴染みがなかったので怖かったです。やっていく中で「なるほどこうやっていけばいいな」と、少しずつ学んで作れるようになりましたね。家の前の通りから見えて狙われるといけないので、制作用の部屋を新しく用意しました。
家族も協力してくれて、そのおかげか家族の関係もすごく良くなりました(笑)。

山口 それは知らなかった(笑)。
最初に花弁ができた時は、どういう気持ちでしたか。

「花弁」

ワリヨさん シルバーは柔らかいので簡単に形になりますが、その感覚で金を扱おうと思うとすごく難しくて。どういうふうにしたらいいか考えながらだったので、出来てすごく嬉しかったです。

山口 最後には笠原さんも一緒にねじってましたね。そのねじれ具合もワリヨさんにとっては抽象的なねじりじゃないですか。上と下でピンチでツイストしてるんですけど、ああいう感覚って多分ジョグジャカルタにはなかったかなと思う。

笠原さん ない上に、フィリグリーは本来は線対称なデザインなんです。「これ何のため?」「かわいいの?」って。今ではかわいいって言ってくれますが(笑)。
やっぱり自分の中で、線対称以外のものが生まれるっていうのはすごく大切なプロセスでした。感覚を揃えていかないと次が作れないですよね。

山口 そうですよね。「芽吹き」はどうでしたか。

「芽吹き」シリーズ

ワリヨさん 「芽吹き」は元々作っていた大きめの商品を吊るすためのパーツだったんですよ。山口さんが「いやこれがいいのかも。ちょっとちっちゃくしてみて」って。これが商品になるのか心配で、大丈夫なのかと不安でした。

山口 「これはパーツですよ」みたいなこと言われた気がする(笑)。フィリグリーの技や速さはワリヨさんの強みだなと思っているけど。

笠原さん まず早いのと、あと華やかになるんですよね。全然違うんです。多分ご本人は気づいてないんですが「花弁」を他の職人に作ってもらうと表情がないんです。そっぽ向いてるような「花弁」が出来上がるんですが、ワリヨさんが花弁を作ると、常に笑ってる。

山口 そう!躍動感がすごいんだよね。自分ではどう思ってるの。

ワリヨさん 僕は分からない(笑)。リングは鋳造して大量生産もできるけど、フィリグリーは一つ一つ手で作り出すところに誇りは感じています。

山口 これから職人として目指すところ、あるいは自分の人生としてこんなことやりたい、ということが、もしあれば教えてください。

ワリヨさん もっと新しいものを作っていきたいですね。

山口 今、ワリヨさんと新しいことにも色々今トライしていて、古典的なものから新しいものを生み出すマインドを持っていこうねと話しているんです。ぜひ今後のワリヨさんの活躍も期待してほしいなと思います。

読んでいただいてありがとうございました!マザーハウスをもっといろいろな角度から楽しんでいただける毎日の出来事を、生産地やお店からお届けしていきます!