個人の可能性を伸ばす場所

今日は、私がマトリゴールに来てから、「素敵だな。これがマトリゴールの強みだ。」と思った出来事をお伝えしようと思います。

ある日、工場のみんなに挨拶をしていた時でした。

そしたら、革漉きチームの間で何か議論していたのです。

私にとって初めて見る光景だったから、これは何が起きているのか気になる。と思い、思い切って輪の中に入っていきました。

「キーコルベン？」（何してるの？）

「革漉きだよ。」

（いや、なにか問題があったのか聞きたいんだよな、、、よし、こう聞き直そう。）

「ショモシャアセ？」（問題があったの？）

「違うよ。今やってたことをみんなにシェアしてたんだ。」
と教えてくれたのです。

マトリゴールはテーブル生産のシステムなので、テーブル内もしくは他のテーブルと、常にコミュニケーションを取りながら生産を行っている。

これは職人さんたちにとって非常に大事なことで、誰かの指示を待ってそれをこなすだけでは、彼らの成長には繋がらず、問題を見つけてはスタッフ同士が話し合い解決策を出し、プロセスの途中では次にミスが無いように、進めていることをシェアしたり、このように些細な、でも深いコミュニケーションが、職人さんたち一人一人の可能性を導き出すことに繋がるのだろうなと思いました。

私自身、少しずつみんなとコミュニケーションを取れるようになってきたことも、とても嬉しくて、単語単語だけど、みんなに話しかけるようにしています。

ある日工場の女性スタッフと単語単語で、10%くらいの理解だけど、会話したのです。
彼女の名前はRotaさんと言って、結婚していて、旦那さんと4歳のお子さんがいるそうです。実は彼女は初日に、私が話しかけるとすごく笑顔でこたえてくれて、イチゴと飴をくれたスタッフさんです。

生産テーブルを見に行くと、みんな挨拶してくれたり、個人の話をしてくれたり、そういった真っ直ぐなところも本当に素敵だと思っています。

そしてまた別の日。
ある日、昼ご飯をマネージャー陣みんなで食べました。

この文化、私はとても良いなと思っていて、なぜみんなで食べるのか？気になってマムンさんに聞きました。

すると、「時々みんなで食事をして、みんなが近況をシェアしたり色々話せる時間を作っている。あとは、何かちょっとしたお祝いやみんなでシェアしたいことがあると、一緒に食事をする時間を作るんだ」と教えてくれたのです。
例えば、この日は、サンプル職人のモルシェドさんが先週末、彼の地元に帰った時にコナフィッシュ（魚の種類）を工場のみんなのために買ってきてくれたのです。そして「じゃあその魚を一緒に食べる時間を作ろう！」となりました。

こんな風に、美味しいものをみんなでシェアして食べるなんて、なんて素敵なんだろう！と思って、本当に心が穏やかな気持ちでした。

そしてつい最近あった出来事。

ある日、突然全体ミーティングが開かれました。そこでマムンさん含めたマネージャーたちから共有されたことが2つありました。

1つ目は、明日からラマダン（イスラム教における断食月のこと）だから、働く時間が変わるとのこと。なので、実家に帰るなど、そのための移動手段が電車になる場合などはチケットが取れなくなる可能性もあるので、早く手続きをしたほうが良いというお知らせ。

2つ目は、社内のスタッフ同士のケンカに対しての、注意勧告でした。
このミーティングの前日、社内のスタッフが工場の外でケンカをしていたらしく、それをマネージャーのジアさんが目撃して、すぐに和解に入ったと。
それを今朝マムンさんに共有して、かなり大きな問題だからみんなに共有しなければいけないと決めたそうです。

後からジアさんが、「私たちの工場は家族みたいな存在だから、社員間で問題があれば必ず解決するし、それが私たちにとって大事なことなんだ。だから、また新しくスタッフが入ってきたら、マトリゴールの哲学や考え方をしっかり先輩スタッフから新人スタッフに伝えていかなければならない。」と話してくれました。

これがマトリゴールが他の工場と違い、個人が自分に自信を持ち、相手のことを考えながら行動できることに繋がっているのではないかと、色々な出来事を通して実感しています。

私が最初に自己紹介で書いていたことですが、自分の活躍できる場所があり、自分の力で生きていく術を身につけることができたなら、少しでも彼らの幸せに繋がるのではないか？という疑問の答えが、マトリゴールにはあるのだと、そう感じます。

個人の持つ力やその人の可能性を信じて仕事を託し、迷った時や困難に直面した時には助け合い、自分の仲間の成功に繋げる。
私はこのマトリゴールの強みを大事に、一人一人がさらに輝ける、そして彼らが幸せだと感じることができる環境を作っていきたい、そう思っています。