彼で間違いありません

○スーパー前
ひったくりされ、地面につき叫ぶ女性。
女性「きゃー!」
   すぐさま、駆けつける男性。
男性「どうしました?」
女性「ひっ、引ったくりです!」
男性「引ったくり!?」
女性「どうしよう、あの中に、財布やスマホが」
男性「分かりました!今すぐ僕が110番しますから!」
女性「ありがとうございます……」
   男性、スマホで電話をかける。
   女性、タバコを取り出し、吸い始める。
男性「あ、もしもし、あの2丁目のスーパー前で引ったくりがあって、すぐ来てもらえますか?すいません、あ電話番号ですか?えっと、080―9797−9999です、はい、お願いします」

   電話を切る。
   振り返って、タバコを吸う女性に気づく。深くタバコを吸う女性。
   衝撃で動けない男性。

男性「うそだろ……」
   女性、口を丸くし、輪っかの煙を吐く。
男性「うわ、輪っかの煙吐いてる」
   女性、電話が終わったのに気付き、携帯灰皿でタバコを消し。
女性「繋がりました?」
男性「あ、はい」
女性「助かります〜」
男性「あの、タバコはあるんですね」
女性「あ、偶然持ってました」
男性「あ、偶然……一応禁煙なんで」
   と、禁煙のポスターを指す。
女性「あ、失礼しました……」
   男性の携帯に電話が。
男性「失礼……(電話に出て)もしもし……あ、そうです、2丁目の角曲がったところの」
   女性、スーパーの袋からビールを取り出す。
   そして、ポケットから自転車の空気入れを取り出し、飲みながら空気を入れる。さらに、袋から焼きそばを取り出し、食べ始める。

男性「はい、被害に遭われた女性といるので、はい、すいません、お願いします」 
   男性、振り返り、女性に気付く。
男性「ちょいちょいちょいちょい!」
女性「はい?」
男性「はい?じゃなくて、何してんすか?これ僕のですよ」
女性「あ、ごめんなさい空気抜けてんの気になって」
男性「勝手にやんないでください!それに飲食飲酒ダメですよ」
女性「あ、ここそうなんですか?」
男性「マナー的に、ダメです!」
女性「すいません、来そうですか?」
男性「はい、ちょっと遅れてるようで」
女性「あぁ、じゃあ映画でも見に行きます?」
男性「そんなかかんないと思います」
女性「そうですか」
男性「なんか、あれですね、あんまり擦られたショックない感じですか?」
女性「いや、ありますよ〜、ちょっと何言ってんですか〜」

   と、足元をキックする。

男性「あ、キックするおばさんめずらし」
女性「やめてくださいよ」
   と、軽めのキック。
男性「すいません」
女性「ん?」
   女性、天を見上げ手を突き出す。
女性「クワバタ・オハラ……?」
   と、男性の顔を見る。
男性「何があったんですか?」
女性「違う、そんなはずは……」

   女性、クズれ落ち。

女性「ちきしょう!」
男性「え?」
女性「帰れ!私から、離れて!もう、クワバタオハラが来たら終わりよ!」
男性「何言ってんですか?」
女性「来るな!」
男性「でも」
女性「来るなっつったら来るな!あんた頭おかしいんじゃないの?」
男性「今のあなたに言われたくないです!」
女性「いいから、もう行って!」
   男性、引いた様子で。
男性「……知らないですからね!」
   と、その場をさる。
   去ったのを確認した女性。
   ポケットからスマホを取り出し。
女性「警部?今そっち行きました」
   女性、ポケットから手配写真を取り出す。先ほどの男性の写真。
女性「はい、彼で間違いありません」

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