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新感覚!解決しないミステリー小説 ロンドの旅Part1ロンドの旅 Chap3東京の事件

4.言伝

グラスを傾けるとカランと心地良い音が鳴った。喉を潤すと、ゆっくりと口を開いた。

 昔はこの店でよく語りあったな。彼女と君はとてもいいコンビだった。一方で、ワシには光と闇、表と裏。そんな風に映る瞬間もあり、何とも不思議な感覚だったよ。まさに表裏一体と言ったところか。切っても切れない関係なんだろう。

 …突然どうされました?昔話なんて、らしくないですね。

 ああ、最近なぜか過去のことが頭をよぎることが増えてな。悪いことの前触れかも知れん。

 先生がそんな迷信のようなことを信じるなんて意外です。ずっと第一線を走ってこられたんですから、たまには骨休めをしてはいかがですか?

 いい提案だ。たまには妻孝行しないとな。

 ええ。ぜひまた奥様にもお会いさせてください。

 おう、そうだな。アイツも喜ぶ。この歳になって、改めて家族の大切さが身に染みるよ。家族ってのは誰か1人が欠けても喪失感は大きい。全員でfamilyだからな。ワシは1日も早く彼女と君たちが再会できることを祈るよ。

 ありがとうございます。また皆でこの店で語り合いたいですね。

 ああ。その時には、久しぶりにチェスでもやりたいな。

 いいですね。よくやりましたね。実はマスターはかなりの腕前で…。

 最近やってないから鈍ってるかもな!練習しておくよ。

 メライとバルカも得意だし、トーナメントできそうだな。

 まあ私に勝てる人はいないと思うけどね。

 はっはっはっ。お見事。すごい自信だ。あれはオープニングが肝心。多少駒を犠牲にしてでも思い切りよくいかんとな。ゲームの行く末は、どの戦術を選択するかで決まる。

 たしかに、先生は攻めのチェスがお好みでしたね。

 そうだ。そして、彼女も…な。最初に首根っこを押さえられてしまうから、彼女には一度も勝った覚えはないよ。

 ええ…。僕もです。

 本当はもっと早く帰るつもりだったが、楽しくてつい昔話を長くしてしまった。ゴールまで伝えられたことだし、それじゃあ、ロンド、メライ、バルカ、もう行くよ。
 マスターも今日はありがとな!代金はここに置いておく。

 はい!またいつでも来てくださいね!

 今日は本当にありがとうございました。彼女を見つけ、また、日常を取り戻します。

 …ああ。最後に、ワシからの餞別だ。そして、彼女からのメッセージでもある。

胸ポケットの財布から1万円札を手渡した。

 手を出してくれ。

 先生、お金なんて受け取れませんよ。

 はっはっはっ。君にしては、勘が働かないなんて珍しいな。

 めっせーじ。

 そのとおり。賢い子だ。

 これが…メッセージ?

 まあ見てみろ。

2つに折られていたそれを手に取り表面を上にして開いた。透かしの部分になにやら文字が書いてある。

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 ブロットじゅういち…アンペア?

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