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新感覚!解決しないミステリー小説 ロンドの旅Part1ロンドの旅 Chap1ニューヨークの事件

7.見立

数日後、3人はニューヨークを後にした。

 メライ、このジェット機はどこに向かっている?

 ソウルよ。例の政治家の事件を追うわ。それにしても、行き先もわからずよく乗りんだわね。ま、いつものことか。

食事や飲み物はもちろん、ソファやテーブル、ベッドまで完備しており、長時間の移動も快適に過ごせそうな空の旅で、"打合せ"か始まった。

 ふふ。君たちを信じてるからね。ところでメライせんせい、次の星は?

 三つ星の確率は12%だそうよ。一つの確率が62%、二つが26%ね。これもどこまでに当てになるのかしら。本当に私の見立てのほうが精度が高いかもね。

 うん。この前の事件ではメライのお手柄で成果を得たようなものだ。それにしても、12%の案件しか当てがないとは。"上"も苦労しているようだね。

 そのようね。あ、ニューヨークの事件、お店に飾ってあったサインとソーサーの写真のサインとの照合が終わったみたいね。予想どおり一致しなかったそうよ。

 では、立証に一歩近づいたね。彼にはいつの頃からかゴーストがいた。世間に知られないよう、過去に書いたサインをこの世から消すために犯行に及んだというところかな。

 …いずれにせよ、私たちはもうこの事件をこれ以上追う必要ないわ。切り替えましょう。

 君から出した話題じゃないか。しかし、メライはドライだなぁ。一体誰に似たんだか…。

およそ小さい子供との会話とは思えないようなやり取りが一段落したところで、喉を潤した。もう一人の少女はじっと窓の外を見つめている。

 さあ?もう本題に入っていいかしら。

 そうしよう。今回のクライアントは?

 クライアントは被害者自身。だけど、生前に支払いを済ませているようだから、仕事ってことになるわね。

 ほう。久しぶりの仕事か…。たまには稼げという"上"の意向かな。しかし、自分で自分を殺した犯人探しを依頼するなんて、日頃から身の危険を感じていたいうことか。

 どうだかね。政治家の世界は大変なのかしら。じゃあ私は休むわ。

 うん。ゆっくりしてくれ。バルカも眠かったら寝るんだよ。

 …。

2人は仲良くベッドがあるほうへ歩いて行った。気付けば、外は漆黒に包まれていた。

 さて、僕も休むとするか。それにしても…ソナタ、君は一体どこにいるんだ。

その後、サインの照合を契機に彼の周辺に捜査が及んだ。当日仕事をしていたというアリバイはゴーストによるもので、自身は現場で被害者を殺害したことが明らかになった。事件前夜、誤って割ってしまったので新調するソーサーにまたサインを書いて欲しいという趣旨の連絡があった。その瞬間サインの存在を思い出し、慌てて電話越しに破損したソーサーを渡すよう求めたが、被害者は応じなかったのだ。やむを得ず、彼はサインの依頼に応じるフリをして、被害者と会社で合流することを提案し、その際、破損したソーサーも持参するよう付け加えた。あとは既知の情報どおりである。加害者、被害者ともに世界的な著名人であり、さらにはゴーストの存在が明るみになったため、この顛末が各国で大きく取り上げられたことは、想像に容易い。こうして、犯人のなんとも身勝手な動機により引き起こされたニューヨークの事件は解決へと至った。

Chap2.へ続く

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