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高松市議の収賄疑い逮捕について

2024/04/08追記
辞職願が出され、受理されたとのことです。
https://www.ohk.co.jp/data/26-20240408-00000008/pages/

知事記者会見での県としての対応はこちらです。

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こんにちは。高松市議の もてき邦夫です。
4月3日夕方のニュースで報道されたことについて、市民への情報公開と説明責任が、一議員として必要と思い、私の考えを書きたいと思います。(4/6時点)

まず、現職市議から逮捕者が出たということは私自身にとっても大変驚きで、緊急事態です。

現段階では「推定無罪」という大前提ですのでデリケートな話ですが、裏金問題が大きな政治不信を生んでいる昨今、早急に対応が必要と考えます。

論点を4つ取り上げつつ、深堀りしていきます。

1、高松市議会の対応と信用問題

他党の議員とはいえ、同じ議会の同僚議員であり、他人事ではありません。

私個人は当該議員とあまり親交がありませんでしたが、一人の人間として、「過ちを犯しても社会復帰できる社会」の方がよいと考えますし、報道で一定の社会的制裁を受けており、今後も高松市で暮らすであろうことを思うとご家族含め人権への配慮も必要なため、個人攻撃や人格否定のようなものにはならないよう気をつけたいと思っています。
ただ一方で、収賄が確定すれば非常に問題で、市民への情報公開や説明責任、議会として厳粛な対応も必要となります。「罪を憎んで人を憎まず」「泣いて馬謖を斬る」ような対応が求められます。少し言葉を選びながら書かせていただきます。

まず高松市議会の所属議員が賄賂をもらった疑惑で逮捕されたことに対して、議会として説明責任を果たし、どのように信用回復するかが問題になります。
(所属政党は除名処分で対応したようですが、それは政党なので、議会としての対応は別問題です。)

私のパワハラ疑惑のときはどのような対応であったか。
すぐに議会運営委員会が開かれ、連日報道され、非公開の調査会まで開かれました。法律相談にもかけられました。(結果として「市長は議会に事実認定するよう求めたのに」→「議会はパワハラの事実認定を避け」→「市長は幕引きにした」という、冤罪のような案件でした)。
市長と議会によって推定有罪で実名で晒され(事実認定されるまでは匿名にして人権を保証するのが本来)、第三者による透明性ある調査もせず、議会から「不適切」と謝罪を求められた案件で、人権侵害です。

市民が集めてくださった署名についても、市長と議会は何も対応しませんでした。

署名は今も地道に集めてくださっています。(まだの方は署名にご協力お願い致します)

パワハラ疑惑のときあれだけ「議会の信用問題だ」と騒ぎ立てたのに、今回の逮捕であのとき以上の騒ぎにならなければ、議会の対応としてダブルスタンダード、辻褄があいません。特定の議員のときだけ執拗に攻撃するのは大人のイジメに他なりません。現職議員が逮捕されたという重大事案に対して、議長はじめ他の議員のみなさまには、公平に毅然とした対応を期待したいと思います。

他議会で現職議員が逮捕された場合はどのように対応しているでしょうか。
逮捕や起訴されたあと、辞職勧告決議を出したり、議員報酬や政務活動費の差し止めに関する条例改正がなされているようです。

特に、辞職勧告については、民意で有権者に選ばれた議員に対して辞職を勧告することになるので、非常に重い判断になります。(ただし法的拘束力は無し)

今後、仮に起訴となり当該議員が辞職しない場合、議会として検討が必要になるかもしれません。(とはいえ、今後の経過次第であり、御本人が判断なさることです)

高松では、当該議員は4月3日に逮捕されており、被疑者勾留期間は最大20日。4月22日頃に起訴されるかどうかが決まるようです。

逮捕された議員の報酬に関しては(触れにくいところですが)事実だけ説明しますと、
高松では「逮捕されたあと、次の定例会や委員会を欠席したときに当月の報酬をストップする」という規定になっているので、
今のところ4月25日予定の議会運営委員会に出席するかどうかで決まると思います。


第3条の2 前2条の規定にかかわらず、議員が、刑事事件の被疑者又は被告人として逮捕され、 勾留され、その他身体を拘束する処分を受けて市議会の会議又は委員会を欠席したときは、当該欠席した日の属する月の議員報酬は、その支給を停止する。

政務活動費については逮捕に関する規定がないようで、引き続き支給されると見込まれます。これは「そのぐらい支払われてもいいのではないか」「いや、支払われるべきではない」という議論もあるので、条例改正する必要があるか、議会で議論が必要と思われます。

いずれにしても、早急に全員協議会や議会運営委員会で会議を開き、
公式の議事録を残しながら、議会としてどのように対処するか、議論や報告が必要です。(市民への情報公開と、後世の検証に耐えうるようにです。非公開の会議では意味がありません)

しかし、今のところ議会では緊急の全員協議会や議会運営委員会を開く予定はないと聞いており、驚いています。逮捕から4月6日まで、議会としての情報共有はまったくなく、何事もないかのようです。
(当該会派や政党も、対応に苦慮しているかもしれませんが、もう少し情報共有があってもよいのではと思います。もう少し待ちます)

なお、当該会派ではちょうど約1週間前に会派が分裂し、再編成されています。珍しく内部分裂のような分裂ですが、今回の収賄疑惑や逮捕について事前に知っていたかどうか、事実関係は把握できていません。
私のところにも「わかっていて(隠して)会派分裂したのではないか」と市民から問い合わせがありましたが、こういった疑問を解消していく必要があります。
賄賂の慣習が個人の問題ではなく会派や党としてあるのかないのか、議会として調査検証報告されなければ信用は回復しないのではないでしょうか。
今後、議会として研修なども必要になってきます。

必要に応じて、「政治倫理審査会」という会議で議論することもできます。8名の議員が署名して求めれば、開催することが可能です。
(この条例は平成14年の高松さんさん荘の建設をめぐる贈収賄事件を契機につくられた条例です。こういうときに使わなければ、使いどころが不明の条例です)

2、土地改良区での賄賂は氷山の一角?

今回は「舟岡池土地改良区」というところの理事長(当該議員)が、地元業者から賄賂をもらっていた疑惑の事件ですが、これは数ヶ月前に、同じく高松市内の「浅野土地改良区」というところで元理事長が賄賂をもらっていた事件が起きており、3月に判決が出ていました。

市内2つの土地改良区で、同様の事件が起こっていることから、
「他の土地改良区は大丈夫か?」
「個人の問題ではなく、組織的・伝統的慣習の可能性はないか?」
「市内の土木事業者は贈賄することが通例になっている事業者がある?」
「公平適正な入札や運営がされていた?」
と疑念を持たれてしまうのは自然なことだと思います。
(注:もちろん、真面目に仕事をしてきた土地改良区や土木事業者からしたら迷惑な話だと思います。ただし、一部の人による汚職が実際に起き、防ぎにくい仕組みがあるのだとしたら、その仕組み自体を改善しなければならないのは当然です。土ここはぜひ協力していただきたいところです。)

この疑問が払拭されないと、土地改良区に関する予算について、議会としても賛成しにくくなってしまいます。

香川県内、高松市内には、いくつの土地改良区があるんでしょうか?

答えは、県内97土地改良区、うち高松市には34土地改良区があります。

ちなみに土地改良区って何? という方は以下のリンクを参照ください。

「土地改良区とは、土地改良法の規定に基づき都道府県知事の認可により設立される公法人です。 公法人とは、公の事務を行うことを目的とする法人で、一定の範囲において国家的権力を与えられています。」

https://www.inakajin.or.jp/land-improvement

(なお、4月4日四国新聞では「土地改良区は、公共投資による土地改良事業を、行政に変わって行う農業者でつくる民間団体」となっていますが、「民間団体」と表現するのはミスリードではないでしょうか。行政とは別団体とはいえ、行政から9割近い補助を受けながら、入札で工事をしている公法人で、多額の公金が投入されています。)

ただ、この土地改良区というのは、高松市とは別団体になるので、行政文書として情報公開請求などができません。
たとえば「何社が入札に参加して、金額はいくらだったかなどの入札過程はわからず、情報公開に応じるかどうかはその団体次第」と言われています。(公金を使う入札なのに、入札過程が不透明なのはどうして・・・?)

高松市には「入札監視委員会」もあります。が、入札監理課を通した公共事業だけがチェック対象であり、「土地改良区の事業」に関しては対象外で、十分なチェック体制がありません。公務員による「官製談合」だと公正取引委員会や警察が動いたり、官製談合防止法での処分は重いですが、今回の土地改良区での収賄は、土地改良法違反での逮捕です。

香川県が土地改良区を認可して設置しているので、県の土地改良課が監督権限を持っているそうで、今後対応が問われてきます。ですがKSBの取材では県の土地改良課は


「2年に1回、土地改良区の収支もチェックしているが、個人同士のやり取りについては確認しようがない。理事長らのコンプライアンス意識に任せるしかない」

https://news.yahoo.co.jp/articles/7984be3053fe05b61ba4bdfda93f4e3fe5777b9c

と回答しており、対策が十分になされるのか懸念です。今後、県がどうしていくのかが重要と思います。各土地改良区の自助努力だけで再発防止するのは限界があるでしょう。

3、再発防止対策

参考までに、私が前にいた土庄町では元町長が官製談合で逮捕された後、再発防止のための「官製談合再発防止対策検討委員会」が設置され、第三者の学識者・弁護士・会計士によってこのような答申が出されました。

せめてこのような検証や再発防止策がなされて、はじめて土地改良区に対する信用は回復するのではないでしょうか。そうでなければ、一部の土地改良区が談合・贈収賄の温床になっているのではという疑念が払拭されません。(真面目に仕事をしている土地改良区にとってはいい迷惑です)
たとえば、官製談合の場合、再発防止対策として、以下のような観点があります。

第4 再発防止策
1 権限の分散、情報漏洩対策の徹底
2 公平性・競争性の確保
3 ペナルティ措置の拡大による抑止力の向上
4 執行体制等の改革
5 監視、検証体制の強化
6 職員倫理、服務規範の徹底(事件を風化させない仕組みの構築)

官製談合防止対策について(答申) PDFファイル

https://www.town.tonosho.kagawa.jp/material/files/group/5/KanseidangoToshin.pdf

4、政治家等が土地改良区理事長を兼職してよいか

今回、当該議員が政治家にもかかわらず、一部の土地改良区という公法人の理事長を務めていた件についてです。

農水省からは過去に「土地改良区等における政治的中立性の確保について」と通達が出されており、平成22年に以下のような答弁書が出されているようです。


国会議員の兼職に関する質問主意書
一 平成二十二年一月十五日付農林水産省農林振興局長名「土地改良区等における政治的中立性の確保について」に関して
 1 土地改良区等の制度は従来から存在するものだが、今回、このような文書を発出したのはなぜか。
 2 本文書は、農林振興局長の判断に基づき発出されたのか。あるいは、閣僚等からの指示を受けて発出されたのか。
 3 土地改良区等が、「制度を公正・公平に、透明性を保って運用すること」は当然のことだが、役員等に「議員等が兼職により就任するなど」の場合に、これに対する「疑念を持たれる」と考える根拠は何か。
 4 「議員等が兼職により就任するなど」とは、どのような場合を含むのか。「等」には何が含まれるのか。
 5 役員等が、他の組織の役職との兼務である場合、当該組織の影響を受け、「公正・公平に、透明性を保って運用すること」が阻害されるとの疑念を持たれるという考えであるとすれば、例えば、民間企業の役職との兼務の場合はどう考えるのか。当該民間企業という「特定の組織」の影響を受け、「公正・公平に、透明性を保って運用すること」が阻害されるとの疑念を持たれることになるか。
 6 本文書は、役員等に「議員等が兼職により就任する場合」を認めないとの趣旨か。仮にそうであれば、憲法上の職業選択の自由を制限する根拠は何か。
  また、議員等が兼職により就任した場合、農林水産省はどのような措置をとるのか。

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a174153.htm


土地改良区等は、法律に基づいて公共性の高い事業を行っている団体であることにかんがみれば、その政治的中立性の確保は重要であり、議員が団体の執行機関たる役員を兼職しているという事実をもって、当該団体が特定の組織、政党等の影響を受けているのではないかとの疑念を国民から持たれるおそれがあることが問題であると考えている。

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b174153.htm


土地改良区は、地元の農業に関する工事を担います。その代表が政治家であるということは、地元農家に対してかなりの影響力を行使できる立場にあります。公法人なのに選挙での票集めなどに悪用される恐れもあるので、議員が兼職することは避けるべきでしょう。(先日の報道で自民党会派の会長もそう言及しています)現職に限らず、引退した政治家なども避けるべきではないでしょうか。

調べたところ、市内土地改良区でも市議・元市議・県議が理事長を務めているケースが4件、確認できています。県内の土地改良区でもそのようなケースはさらにありそうです。

以上、4点について現時点(2024年4月6日)でわかることを記しました。

高松市議会として今後どのように対応していくのか。
再発防止策をどうしていくのか。
注視しながら活動してまいります。

もてき

2024年4月7日以下追記
真面目に仕事をしている土地改良区もあり、すべての土地改良区に問題があるわけではありません。土地改良区の事業自体は、地域の農業にとって必要不可欠な事業をしてもらっています。ただし、一部の土地改良区では今回のような贈収賄が起こったのは事実であり、そのようなことが起こらないよう再発防止の仕組みが必要です。


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