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【月刊noo】いった年きた年【2023.12月号&2024.1月号】

《月刊noo 2023.12月号&1月号 目次》
・ごあいさつ ~はじめに~
・エッセイ:ソ連邦のおもひで「モスクワのクリスマス」
・サバイヴ:イヴなのに貧血で倒れて寝込んでて世界を呪うくらいしかやることがない
・レシピ: メンタルダウン時のソウルフードと、お供の物語について。
・ごあいさつ ~おわりに~

ごあいさつ

2023年の年末に体調を崩して、さえない感じで居るうちに年をこしてしまいました。お雑煮もおしるこも食べないまま松の内がすぎてしまい、月刊nooもだせずじまいで、苦肉の策で今月分は年末年始号です。といっても、特に何かが普段と大きく変わるわけではないのですが…。
ところで、時間って年末年始になると加速しません?私達の目を盗んで、ちょっと早回しとかしてません? 均一に流れてないことありません? あと加齢でも加速している気がしません? こちとら残り時間が少なくなるんだから減速してほしいんですが…!
一節によれば、ルーティンに陥らない充実した毎日を過ごしていると時間の流れが遅くなるらしいので、今年は過ぎ去る時間を減速させるべく、充実した毎日を過ごしたい所存です。
今年は元旦から能登半島で大きな地震が起こり、大勢の方々が現在も被災されているという状況ですが、1人でも多くの方が、安心安全な場所で健やかな日々を取り戻し、すごされますように。
皆様におかれましても、どうぞよい2024年を。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

エッセイ:ソ連邦のおもひで「モスクワのクリスマス」

今回のエッセイ、タイトルが「モスクワのクリスマス」なのだけど、実はクリスマスに特化した思い出と言うのが、あらためて書こうとするとあまり多くない。モスクワの冬、の記憶なら色々あるのだけれど、冬が長すぎて、そして冬の楽しみが色々ありすぎて、たぶんクリスマスの特別感がちょっと薄まっているせいだと思う。
ロシアの冬は社交界やバレエ、サーカス等のシーズンだった。
夏場は外貨獲得のために外国へ巡業に行っているバレエ団もサーカス団も、冬には帰ってくる。富裕層だけでなく、モスクワ市民にとっても冬は芸術を楽しめる季節だった。
冬は、両親がレセプションにでかける夜が多くなり、我が家に海外の大使館の人々を招いてのパーティーが開かれることも多くなり、子供だった私や妹も、ボリショイバレエやボリショイサーカスのいい演目に連れて行ってもらえる夜が多くなる。
両親がレセプションに出かける夜は子供はお留守番で、ベビーシッターの人が来てくれたり、家にいたメイドのライサやタチアナが、普段は夕方には帰るのに残業して、私と妹に夕ご飯を食べさせて風呂にいれて、両親が帰宅する深夜まで家にいてくれた。そういう日は深夜でも帰宅に困らないように、母がライサやタチアナにタクシー代を渡していたという。
21時ごろ、子供部屋の電気を消されて、でもまだ眠っていない時間の、カーテンのない大きなガラス窓の外に見える車や遠い町の明かり。ライサかタチアナがキッチンのほうでたてる片付けの音を暗い中で耳をすませて聞いている夜のことを、今もなんとなく覚えている。
時々、子供も参加していいパーティーに連れていってもらえることもあって、ちょうどクリスマスの時期に連れて行ってもらったフィンランド大使館での子供向けクリスマス会もそんなパーティーの1つだ。

ちなみに、クリスマスというと日本や欧米ではグレゴリオ暦にあわせて12月25日だけど、ロシアではロシア正教のユリウス暦という暦にしたがうので、一般的にクリスマスは1月7日になる。新年の後にクリスマスがくる、というとちょっと不思議に思えるけれど、そんなわけでロシアではクリスマスツリーが新年から1月中旬くらいまで普通に飾られていて、なんていうか日本のあわただしい年末進行(クリスマスから一週間しないうちにお正月)に慣れているとおおらかだ。

フィンランド大使館のクリスマス会では、自由に食べていいジンジャークッキーが山盛りに盛られた机があって、フィンランドの子供達が天使の扮装をして「サンタ・ルチア」を歌う出し物があった。白い肌に金髪に薄い瞳の色、当時の私から見ると少しだけお兄さんお姉さんだった人達が、白い服にキラキラした頭飾りと天使の羽をつけて整列し、ソプラノで歌ってくれた「サンタ・ルチア」は圧巻で、子供心に西洋の絵画みたいな光景になって焼き付いている。
日本大使館でのクリスマス会には、ジェットマロースが来てくれた。
ジェットマロースはロシア版サンタクロースのような存在で、民話に登場する霜の妖精、ロシアにおける「寒さ」を擬人化したものとも言われている。ジェットマロースはスネグラーチカ(雪娘)という孫娘をつれているのだが、クリスマス会では大使館職員の奥様がスネグラーチカのコスプレをして、大使館で運転手をしていたロシア人のおじさんがジェットマロース役の扮装をして、子供たちにお菓子をくれた。大柄なフォルムに白い長い髭という扮装が似合いすぎてて、このおじさんのこともよく覚えている。このクリスマス会ではお菓子にマシュマロをもらったけれど、私はマシュマロが好きじゃなかったので、ちょっとがっかりだった。

ロシアの冬は長い。でもロシアの、モスクワの街並みは「雪化粧」という言葉が本当によく似合う建物が多くて、私は雪の降った後の街を見るのが好きだった。パウダースノーの舞う赤の広場、白粉をはたいたように雪をかぶった聖ワシリー寺院。私達の住居だったダブリニンスカヤの愛想のない灰色の建物や、ろくな遊具のない敷地内の庭も洒落て見える雪の日。モスクワ日本人学校の白い絨毯をひいたような校庭。
クリスマス会からの帰りの夜、雪の舞うなか、オレンジ色の街灯がともる道路沿いを歩いていた時、向かい側から除雪車がやってきた。冬になるといたるところで見る大きな除雪車が、すごい音をたてて道路の雪をかきすすみ、車の後ろの煙突のような筒から雪を吐き出していく。筒は歩道側を向いていて、除雪車が通った後の道路は雪がのけられ、変わりに歩道の端に除雪車に吐き出された雪の小山ができた。大人には「危ないからダメ」と言われていたけど、時々その小山にのぼって遊んだ。
ロシアの冬を思い出そうとすると、何か特別な行事よりも、そういう日常のことを次々と思い出す。雪が降ってくるように、思い出がふってくる。
記憶の中と、私の思い出のなかの雪景色が重なって、だからモスクワの冬は、いつも私にとっては温かい景色だ。

サバイヴ:クリスマスなのに貧血で倒れて寝込んでて世界を呪うくらいしかやることがない(2023年末のBLOGより転載)

昨日今日はイヴとクリスマス、街がキラキラした装飾とワクワクする音楽とウキウキした人々で華やぐ時期。
そんな時期に私は、駅で貧血おこして車椅子に乗り、急患用の部屋で休ませてもらった後に自力で帰宅して寝込んでいます。イヴからずっとこういう冴えない感じです。

そもそも、昨日は友人が関わったり出演したりしている舞台を観に行く予定で、せっかくだしお洒落していこう、ついでに帰りに近くの公園で開催中のイルミネーションも見ていこう、と、私にしては珍しくファンデーションまで塗ってリュックサックじゃないバッグまでもって張り切ってお出かけしたはいいのですが、劇場で向かう途中の電車のなかで急激に気分が悪くなり…。
気のせい、ということにしたかったのですが、メイクが全部流れ落ちるくらいの冷や汗の後に視界が暗くなっていき、「だめだこりゃ、気合でどうにか出来るもんじゃない」と、途中で電車を降りて駅員さんに助けを求めて車椅子で運んでもらい、駅の急患室でしばらく横になって休ませてもらいました。
人間ってあれですよね。体調あかんことになると、冬なのに流れ落ちるくらいの冷や汗がでて、口呼吸になって、終始真顔になりますよね…。

というわけで今年の私のクリスマスは、クラクラする視界とダラダラ落ちる冷や汗とゲロゲロの体調によって「完」となりました。
観劇予定だった舞台にも不義理してしまうという申し訳なさ。
無念。
ただひたすらに無念です。無念のあまり怨念になりそうなほど無念です。
舞台…イルミネーション…クリスマスケーキ…キラキラとワクワクとウキウキ…。

ちなみに私はパートナーがいないので1人クリスマスなのですが、その点は個人的に全然気になりません。ドラマとか創作物では時々「独り身のアラフォー女性がクリスマスに孤独をこじらせて…」的な展開を見聞きしますが、アラフォーの独身女性全員が恋人ほしいわけじゃないのです。
ちなみに車椅子で運ばれている間も、クラクラの視界のなかでは待ち合わせ中だったり並んで歩いてるカップルと親子連れがたくさんでした。
水族館によくある大水槽のイワシの群れくらいいました。壮観です。

なので1人なのはいいのですが、「クリスマスをクリスマスっぽく過ごしたい」欲は、実はめっちゃあるほう。私にとっての「クリスマスっぽさ」。
それはターキーとかイルミネーションとかクリスマスツリーとかシャンパンとかの、コマーシャル的にめちゃくちゃベタな「っぽさ」なのですが、要するに「ちょっとキラッとした非日常感」ですね。
冬至の日は柚子のお風呂にはいりたいし、七草の日には七草粥を食べたいし、桜の季節には満開の花の下でお団子とか食べたい。
行事を行事らしくすごすことにこだわりがあるので、いい感じで過ごしたいのですよ、クリスマスとか、そういうハレの日を。

体調不良だって非日常かもしれませんが、このくらいの貧血は私にとっては日常なので、救急車のるくらいじゃなきゃハレ感がありません。いえ、乗りたいわけじゃないのですが。そしてこっち方向にハレ感だしすぎると危ないのでアレなのですが…!

なので、イヴとクリスマスに寝込んでいるの、めっちゃ不本意。
でもちょっと動くとすぐに視界がクラクラするし、心臓が「血流不足してんぞ!」って感じでドキドキしだして締め付けられたように痛むので、鉄分がとれるドリンク飲んで寝込んでいるしかありません。
ちなみに食事をすると消化のために胃腸の血液が集中するので眩暈がひどくなります。鉄剤のアレルギーあるため鉄分補給系の薬は飲めず、チキンも食えねえ。マジで安静にしているしかなくて、スマホゲームと世界を呪う事くらいしかやることがありません。
そして貧血の時に目を疲れさせるのはよくないので、スマホに疲れたらあとは寝転がって世界を呪うだけ…。
悔しい…キラキラでワクワクでウキウキのこの時期に…クラクラでダラダラでゲロゲロの自分が悔しい…世界は輝いているのに私の体調はゴミ…ミジンコ…無念…怨念…なんでやねん…YO!
自己憐憫に浸りたいのに脳内にラッパーが来ちゃってダメです。

ですがこんなクリスマスの夜、私にも出来ることがありました。
そう、それはこの嘆きとぼやきを書くこと…!
物書きの性でしょうか。こんな冴えないイヴとクリスマスでも、ネタにして書くことでほんの少し何かを取り戻した気になります。実際問題そんな気がするだけだとしても、気がすむということはこの世でわりと大事なことだと作家の林芙美子も書いてるし!(原文ウロ覚えですが)
そんなわけで、私同様なんとなく全体的に冴えないクリスマスを過ごしている世界中の同志たち。
汝らに祝福あれ。
あとなんかいいこともあれ。

レシピ:メンタルダウン時のソウルフードと、お供の物語について。


私は体調を崩しても最後の最後まで食欲を失わないタイプなのですが、それは肉体の不調時の話であって、メンタル不調時はまた話は別です。
別、といっても、メンタルが弱ると食欲がわかないのかというとそうでもありません。
ちょっとわかりづらい異変なのですが、不肖わたくし「メンタルが弱るとそればっかり食べだすメニュー」がいくつか決まっています。
コーンフレークもそのうちの1つ。
ちなみに友人曰く「ワカヌちゃんはメンタルダウンしてくると、やたら辛い物を食べ始める」とのこと。これは言われるまで自分でも気がつかなかったので、最近は(辛い物がやたら欲しいな…)と思ったら、自分のメンタルが弱っているのだなと判断して、休む時間を多めにとるといった調整をしています。本人よりも私の行動をよく見ている友人に感謝。
ASDがある人間は、多かれ少なかれ自分で自分の不調に気がつくのが苦手(暑い、寒い、疲れた等の体の感覚への感度が鈍かったり、わかっていてもこだわりやルーティン行動の消化を優先してオーバーワークになったり等)なので、こういう指摘は助かります。
さて、コーンフレーク。
言わずと知れた、牛乳をかけるだけで美味しくいただけるコーンフレーク。
ちなみに私が好きなのは、プレーンでなくてシュガーフロストのほうです。子供の頃は普通に好きで時々朝ごはんに食べていましたが、大人になってからめっきり買う機会をなくしていたコーンフレークですが、アラフォーの今は心の調子が悪い時のソウルフードとして、我が人生にカムバックしております。
まだ動けはするけれど、寝込めるならば寝込んでしまいたい、そんな日に。ちょっと頑張ってスーパーかコンビニに行き、コーンフレークの軽い袋を一袋だけ買って帰り、お気に入りのボウルをだして、袋をあけたシュガーフロストをざあっと皿にあけると、もう甘い匂いがします。そこに牛乳を注ぐのですが、この時いつもより少しだけいい牛乳だとなおよし。
スプーンでザクザクと食べていくうちに、牛乳に砂糖衣が溶けだして、牛乳が甘いミルクになっていくのに心が癒されます。
シュガーフロストの砂糖がとけだしたミルクは、私にとってはちょっと他にたとえるもののない天上の甘露。大好き。
問題点は、メンタルダウンしていると満腹中枢もバグりがちで、あればあるだけ食べてしまうこと。なのでコーンフレーク一袋、だいたいこういう時は一気食いしてしまいます。後々正気に戻って「何千キロカロリーあるんだ! このあと寝込むだけなのに!」となりますが、その時はその時。
ちなみに以前は二袋買って一気食いとかして、メンタルダウンのたびにあからさまに太っていたので、最近は一度に買うのは一袋までにしています。メンタルダウンしつつ、対処法は進化している(?)私。落ちながらの前進、ポジティブ!

そんなシュガーフロストの、一袋一気食いのお供にオススメなのがこちら。

『BEASTERS』(板垣巴留)


あれ?料理漫画じゃない?
そう、この漫画『BEASTERS』は、住人が全て動物達という架空の世界観を背景にした青春ヒューマンドラマで、全然料理がメインの漫画ではありません。ですが、なにも料理漫画だけが飯のお供になるとは限らないのです。
料理本じゃない漫画や小説に何気なく登場する食事のシーンやお料理などが、たまらなく美味しいということもある。
それはさながら「私の推しのAさんに一切興味のない人が書いた2次創作に、脇役として登場するAさんの描写」からしか得られない栄養のように…。

『BEASTERS』の16巻では、主人公のハイイロオオカミのレゴシが、傷ついた体を癒すために満月の夜に訪れる催しについての描写があります。作中で「ディープナイト」とよばれるその催しは、滋養強壮に特化した出店がならぶ市場で、動物達は自分の体をいたわるためにそこを訪ねるという設定です。
この催しで、レゴシが最初に牛乳を買って飲み、その後に屋台にある色々美味しそうな食べ物の描写が続くのですが、私はこの、物語のなかの一巻の、わずか数ページに満たない箇所を読みながらシュガーフロストを食べるのがすごく好きです。
作中のレゴシが、生きるために自分の体を癒そうと牛乳を飲み食べ物を食べる描写に自分が重なって、よりパワーをもらえる気がするのかもしれません。
ちなみに『BEASTERS』は16巻だけでなく全編通してすごく面白いので超おすすめです。肉食と草食という種族の差、力の差、性別の差、権力の差をシビアに描きながら、ユーモアと希望が失われないドラマ。自分や他人や世の中を信じるのに疲れた心に効く物語です。
原作完結済みでアニメ化もしていますので是非!

生きることは食べること。
そして、生き延びるためにはちょっと悪い食べ方が必要な時もあります。(カロリーとか栄養的に)
そんな時に、ソウルフードとそのお伴になる物語があれば、とりあえず寝込んだ後でまた立ち上がれる気がするのです。


ごあいさつ ~おわりに~

月刊noo、年をまたいでの合併号、ここまで読んで頂きありがとうございました。
2024年の元旦は、6歳の女の子と初もうでやおままごとや鬼ごっこや魔法少女ごっこをして、さらに寝る前にyoutubeみながらダンスして遊びたおす初めての1日でした。こんな楽しいお正月は初めてだったので、今年は新しい楽しいことがたくさんあるのかな?という予感です。
2024年もこんな感じで、ゆるく思い出や日常や書きたいことを綴っていけたらなと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。




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