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速報/山上徹也が綴った全ツイートを解析 反左翼・反フェミニズム・非モテ

資料に忠実でなくてはいけない。資料を前にして謙虚でなくてはいけない。
だが暗殺犯山上徹也が残したツイート約86,000文字を精査する者は現れず、妄想をもとに反権力のヒーローとして祭り上げる者さえいるありさまだ。彼自身が2年8カ月にわたって書き連ねたツイートは、ヒーロー像を蒸発させる衝撃的な内容だった。
当記事では[速報]として、自然言語処理による解析結果に山上家の年譜を対照させる作業から判明した事実を伝える。

加藤文宏


はじめに

 安倍晋三元首相を暗殺した山上徹也は、ツイッターにアカウントを持っていた。しかし、ツイートを隅々まで読んで論評した者はいない。
 山上が犯行に至った真意を知っているとマスメディアで高らかに語った人や、彼を主人公にした映画を撮影した人でさえ、ツイートをまったく読んでいないか、自分たちの願望を語る上で不都合なため読まなかったことにしていると断言できる。なぜなら彼らが描いてみせた山上像とまったく違う人物像が、ツイートからありありと浮かび上がってくるからだ。
 だが山上がツイッター上に残した言葉を読んだ感想だけで、彼の心理や考えを断定するのは危険だ。これでは山上を腹話術の人形にして、自らの願望を語った人たちと同じ愚行を繰り返しかねない。
 そこで山上のツイート全文を意味のある最小単位(形態素)に分解して、どのような単語がどのように使われたか数値化して検討した。たとえば、統一教会や自民党という単語を頻繁に使っていただけでも、彼が教団や同党への並々ならない関心があったとわかる。
 ところが山上は反左翼・反フェミニズム・インセル(結婚を諦めた結果としての独身状態。非モテ男性)を話題にして語り続けた男だった。安倍氏に対して「政治家なんて叩けば誰でも埃が出る」「安倍政権の功を認識できないのは致命的な歪み。永久泡沫野党宣言みたいなもの」と語る男だった。

彼は何を語っていたのか

 現X/旧ツイッターはもともと出来事や感情を個人的につぶやくためのソーシャルメディアだった。ところが、使われ方があまりにも多様化した。
 山上はフォロワー1名と自ら冗談を言っているように、誰かと世間話をするためツイッターを使っていたわけではない。日常生活を綴る生活アカウント、政治や社会情勢について綴る政治アカウント、創作物を紹介する創作アカウントといった分類をするなら、彼は政治アカウントだった。山上はニュースなどで知った世の中の出来事に反応して自説を語るためツイッターを使っていたのだ。
 山上は反左翼の立ち場から政治を語った。
 山上は反フェミニズムの立場から女性と社会を語った。
 山上は自らをインセルと位置付けたうえで、性的に選択されないものの悲哀から反フェミニズムの立場を取っていた。
 山上は自ら氷河期世代で割りを食った世代と認識していた。
 山上は上記にまつわる語るべき時事問題が途切れたり、投稿で語っているテーマが自らの生い立ちにオーバーラップしたとき、親族との関係や統一教会について思い出したように不満を述べた。
 2020年に年間あたりの投稿文字数が最大になったが、この年はコロナ禍のマスクについて、アメリカの大統領選挙について、集団自衛権について盛んに語ったため、統一教会を話題にした投稿の比率が減っている。
 山上は宗教を信仰する家庭の子弟で、子弟であることは重要な話題ではあったが、主要な話題ではなかったのだ。
 では、まず2019年10月から2022年6月までの全期間で山上が何を語ったか見てみよう。

全期間

 山上徹也は全期間で86,000文字相当、49,000単語相当を使いツイートした。
 以下に示したのは全期間のツイートにおける頻出名詞をまとめたものだ。これは単語が使われた回数だけでなく、一般的ではない単語を重視して整理した結果だ。文字が大きいものほど度々登場したか、一般的ではない単語として目立った名詞である。一般的ではない単語を重視するのは、どのような文章でも頻繁に使われがちな「子供」「世の中」などより、「集団自衛権」「統一教会」「インセル」などめったに使われない単語が文章の内容を特徴付けるからだ。
 このように処理しても、ありふれた名詞「女性」「祖父」が頻出名詞の上位に食い込んでいることと、一般的で頻繁に使われるとは言い難い「安倍政権」がさほど目立っていないのは注目に値する。

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