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共存できない

なんだか人間界で生きるのに疲れてしまったので、庭に出て作業をする時間を設けている。植物はいいね。

さて、ナガミヒナゲシという花をご存知だろうか。

このあたりではよく見かける雑草で、雑草にしては可愛らしい花を咲かせ、葉っぱも繊細で美しい。群生しているとまさにお花畑という感じで絵になるので、咲いていると嬉しくなる花だった。私が好きな小説「キノの旅」の主人公キノはこの花の属名が本名だと思っているところもあり、わりと愛着があった。

庭にたくさんこの花が咲いた時も、綺麗だなぁ!と感動して、写真を撮った。もっと種が飛んできてくれたらいいなとも思った。植えたブルーベリーの木をぐるりと囲んで咲くナガミヒナゲシは、風が吹くたびに赤い花を揺らして、とても可愛らしかった。
雑草なんて呼ばずにうまく共存できればいいなと思った。

その年の終わり、植えたばかりのブルーベリーの苗木が1本だけ、あっという間に枯れてしまった。受粉させて実を付けさせるため2本植えていたのだが、1本だけ、本当にあっという間に枯れた。
同じ条件で育ててなぜ片方だけが枯れたのか。色々な原因を調べていくうちに、ナガミヒナゲシの特性にたどり着いた。ナガミヒナゲシの根からは、他の植物が成長するのを阻止する成分を出すらしい。
枯れてしまったブルーベリーは周囲をぐるりとナガミヒナゲシに囲まれていた。「綺麗だから、愛着があるから」という理由で雑草と共存させようと思ったわけだが、根を掘り返せば毒まみれ、表面だけの美しさで、ブルーベリーをあっという間に枯らせてしまった(断定的ではなく他にも原因があるとは思う)。
しかしこれは参った。とても後悔した。根の具体的な成分を知らなかったし、知っていても侮ったと思う。樹木と雑草では強さが違うだろうと。冷静に考えればケシ科の植物に毒があり危険なのは常識ではあるが、実際に根の毒を目の当たりにして学んだ。

というわけで、今年はナガミヒナゲシの葉を見かけたら片っ端から引っこ抜いている。綺麗だからという安易な気持ちですべての生き物が共存するなんて、まさに綺麗事である。ここは我々が35年のローンを組んで買った家で、この庭に生きるものを支配するのは我々である。許可なく侵食して大切な植物を傷つけるのをもう見過ごすわけにはいかない。
植物の中にはナガミヒナゲシの根の毒の影響を受けない種類もいると思うので、そういう種同士では仲良くできるだろうが、それはここではない。我が家の狭いテリトリーを荒らされるのであれば、綺麗であっても排除するべきで、その場所に自分が本当に気に入った花を植えようと思う。人生と一緒だね。一生のごく短い時間において侵食してくるものは毒が回る前にさっさと引っこ抜き、見た目だけじゃなく特性や性格まで知って好きだと思うものを大事にしたいね。(病んでる人間の庭いじり)

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