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インド24日間一人旅~まさに戦場?インド式ショッピングと私に足りていなかった「インド用コミュ力」の話@コルカタ~


サンタナコルカタに着いてから、シャワーを浴びたり荷解きしたりとこまこま動いていたら、いつの間にか夜中も3時を過ぎていた。

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3日間のコルカタ滞在中に私が宿泊した女性用ドミトリーは8人部屋で、ほぼ毎日旅人が出たり入ったりを繰り返していた。一緒に来た広大の女性2人は、この日の夜にダージリンに向かうため寝台列車に乗ると言っていた。

少し寝て起きたら、広大の4人組が宿から20分ほど離れたところにあるマーケットに行くと言うので付いていくことにした。


「圧倒的コミュ力が必要な国、インド」

初めてのインド街歩きである。

意味のない信号と爆速爆音クラクションの自動車、乗車率120%のバス、路肩に山積みのゴミとヘドロと真っ黒な水、それを食べる牛と犬。見るもの全てが目新しい。

狭くなったり広くなったりを繰り返す道の両側には色鮮やかな服や靴が所狭しと掲げられ、山積みにされたスターフルーツやザクロがインドの眩しい陽の光に照らされてキラキラと輝いていた。時折暗がりの店内から声を掛けてくるおじさんや押し付けるように風船を売りにくる行商人の姿もある。

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とにかく一瞬たりとも油断ができない。

前から後ろから「いやこんなとこそんな速度で走る?てかクラクションうるさっ」と思わずにはいられないほど強烈なバイクとリクシャーの嵐。日本語で話しかけてくる胡散臭いインド人。道のど真ん中に我が物顔で佇む牛(ヒンドゥー教徒にとって牛は神聖なので誰も手出ししないのでは、と思う)。足元には牛糞、そして水たまりとゴミが混ざった「何か」。ぼーっと歩いていては前に進めない国なのだ。


何となく、あてもなく、旅を始め旅をする人もいるだろう。また、成長するため、強くなるため、知らないものを知りたくて、旅を始め旅をする人もいる。私は後者だった。「何かしらを身につけて強くなれたらいいな」という淡い思いを胸に旅を始め、微々たるものではあろうが「何かしら」は身についたように思う。

その「何かしら」のうちの一つが「インド用コミュ力」だ。


私は広大4人組の後ろに付いて街の両替屋に来た。

インドルピーは国外への持ち出しが禁止されているため、前もって日本で円からルピーに両替することはできない。そのため外国人はインドに来て初めてルピーを手にすることとなる。ただ、空港にある両替所はレートが悪く悪質(破れた紙幣を渡されたり、金額をごまかされたりするらしい)と噂のため、多くの人は街中で両替をするそうだ。

広大のRさんを筆頭に私たち5人は店内に入った。私は(一人旅するとか威勢良く来たくせに)完全に4人に任せちゃおうというマインドになっていて、ぼーっとしていた。するとRさんが入るや否や、店内のインド人に「Hi!!!」と笑顔+大声で挨拶し、なんとカウンターの向こう側までズカズカ入って行って「俺ら5人のお金両替してくれYO!レート良くしてYO!(意訳)」と言いながらインド人と肩を組み始めるではないか。他の4人も「what's your name?」「I'm Japanese!」「How do you say thank you in Hindi?」などとインド人に向かって勢いよく話しかけている。私は何を話せばいいか分からなかった。笑顔にすらなれなかった。完全にこの「コミュ力おばけ同士の熱い会話」に圧倒されてしまっていたのだ。

おかげさまで、なかなか良いレートで両替することができた(10,000円が6600ルピーに!)。両替屋を出たあと、Aさんに「もっとインドではガツガツ話してかないと向こうにのペースに呑まれちゃうよ〜」と言われた。そしてそう言いながらAさんは道端に立っていたタクシー運転手に話かけ、「インドのフレディー・マーキュリーじゃんwwwww」と言いながらツーショットを撮っていた。

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広大4人組、恐るべし。

広大4人組と過ごした時間はわずかに1日だけだったが、彼らから学んだインド式コミュニケーションは、この後の旅程で大いに役に立った。笑顔+大声で挨拶、断るべきことはキッパリ断る、頼むときは愛嬌全開etc...

ただ、果たしてこのコミュニケーション方法が日本での対話に応用できるのかどうか私は分からない。「そういうキャラです」という顔でいけば使えるのかなあ。


ふっかけるインド人vs.値切る4人組

4人に付いてずんずん歩き、ようやくNew Marketという場所に辿り着いた。

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あまり深くは見て回っていないのではっきりとはわからないが、主に服や布、アクセサリー、観光客向けのインド土産、靴などが売られている場所のようだった。建物の中にたくさんの店が立ち並んでおり、巨大な倉庫の中に小さな商店が区画を決められて営業しているような風だ。

私は「服は現地調達すればいいか、どうせ物価安いしインドの服も欲しいし」と思い、1日分しか替えの服を持って行かなかった(どう考えてもバカである)。そのため、できればここでせめてもう1日分調達したいという思いがあった。Hちゃんにそれを伝えると、じゃあ一緒にTシャツでも買いに行こう、と言ってくれたので私たちは服屋に向かうことにした。

建物の入り口に向かうと複数のインド人が英語で話しかけてくる。これはできれば無視した方が良い。基本的に、英語・日本語で向こうから話しかけてくるインド人は無視するのが無難である(そうは書きながらも、私は向こうから話かけてくるインド人に「まあいっか〜」と付いて行って、美味しい目にも痛い目にも遭っている。絶対に用心はした方が良いが、無視するということはせっかくの現地インド人とのコミュニケーションの機会を逃すことと同義なので、これは自己判断で無視するかどうか決めた方がいいと思う。危ないと思ったらすぐ逃げよう。無理だと思ったらおとなしくお金を渡そう。命の方が大事だから、絶対)。彼らは自分の店に連れて行き、相場の何倍もの額でモノを売りつけるのだ。

「無視すべし」とは言え、向こうもプロである。無視し続けるのも、巻くのもかなり難しい。結局さすがのRさんも「T-shirtアルヨ?」と言ってくるインド人に捕まってしまい、私たちは入り組んだ場所にある小さな商店に連れて行かれた。私たち5人を見た店主は早速次から次へとTシャツを出してくる。

「このガンジーのTシャツオシャレよ、お姉さんに似合うよ」「ガンガー(=ガンジス川)のデザインもあるよ」「これはKolkataのTシャツ、白・緑・ピンク・黄色・水色・黒があるよ」(以上意訳)

無限にTシャツを出してくる。頼んでもないのに謎の布も勧めてくる。戸惑う私の横でHちゃんとそのお友達(名前を忘れてしまった。大変申し訳ない)は店員を質問攻めにしていた。

「この柄のこの色はないのか」「Mサイズ出して」「いくらなの?」

ここでもインド式コミュニケーションの重要性を痛感することになる。店主はTシャツ一枚750ルピー(約1125円)と言ってきた。(ただ単に私がインドの物価を知らなかったということもあるのだが)私はそのぐらいの値段でもいいのではないかと思い買う気満々で財布を出そうとしたのだが、すぐにHちゃんたちは「No No, cheaper!!!!!!」と言ったのだ。インドショッピング名物の値切りの始まりだ。店主も負けてはいない。「アメリカ人はこのシャツ850ルピーで買ってくれたんだぞ!それよりも安く言ってやってるじゃないか!」と言ってくる(850は絶対嘘)。しばらく交渉は続いていたが、店主が折れないのでHちゃんたちは「No, bye-bye」と言ってその場を立ち去ろうとした。先ほど言ったように、インド人の商人たちは9割9分、観光客相手に相場の何倍もの額を示してボロ儲けしようとする(私のような世間知らずは格好のカモだ)。そのような場面に遭遇した場合は、すぐに「私はこれ以上は出せない」と金額を明示して交渉するか、それでも相手が値段を下げない場合は「もう買わない」と言ってその場を立ち去るのが鉄則だ。Hちゃんたちはその場を立ち去ることによって相手が自らより安い額を示してくるように仕向けたのである。

結局、店主は立ち去る私たちを引き止め「500でどうか」と言ってきた。その後も交渉に交渉を重ね、300ルピー(約450円)で値段はまとまった。めっちゃ安くなるじゃん。

ちなみに私が買ったTシャツはこれ。ゴッド・ハズ・ノー・リリージョン。思ったんだけど、これインド人から見た印象って日本人が「東京」って書かれたTシャツ着て歩いてる外国人見たときの印象と同じだよね。

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値切りに挑戦して大失敗した話

この後他の店も見に行こうということになり、建物の中をぐるぐる回ることにした。

客引きのインド人が続々とやってきては「ニホンジン?」「This way! come!」と話しかけてくる。彼らは「他人の顧客になりかけている人間」にも構わず話しかけ、自分の顧客にしようと隣で永遠に話しかけてくる。


2軒目で私は白いパンジャビドレスを買おうとした。店主に「白いパンジャビが欲しいんだ」と告げると、先ほどの店のように次から次へと服を出してくる。そしてやっぱり先ほどの店のように、頼んでもないのに白くないパンジャビも出してくるし、タイパンツも勧めてくる。山積みの衣服の中から良さげなパンジャビを見繕い、いくらか聞いてみた。

「これはいいパンジャビだよ、3,000ルピー(約4,500円)でどうだい、機械じゃなくて人の手で縫われてるし、綿100%だからいいものだよ」

Hちゃんたちの交渉を見て学んだ私は、まずは1/4の値段を提示した。もちろん店主が納得するはずはない。

「これはいいパンジャビだって言ったじゃないか!!手縫いの綿100%の高級品だぞ!!!そこらの安物とは違うんだ!!!!」

私が勢いに押され気味になっていると店の奥から若い店員がもう一人やってきて、私に「Tell me final price. Tell your good price.」と言ってきた。私は「最大でも500ルピーだ」と告げた。すると隣からまた店主が「ダメだ、じゃあ1,800ルピーでどうだ」と言ってくる。

ここで私はバイバイと言って帰るべきだったのである。あまりのまくし立て方にビビっていた私は「800ルピーなら出せるかも…」と言ってしまったのだ。結局、交渉続けた結果値段は1,000ルピー(1,500円)に落ち着くことになってしまった。一連を見ていたHちゃんたちに「絶対にダメだよ!!そんな高いわけないもん!!もう帰った方がいいって!」と言われ、私は広大4人組に担ぎ出されてしまった。

さよなら私のパンジャビドレス。でも日本で服買おうと思ったら、1,500円ぐらい出すじゃんね…?

そんなことを思いながら、New Marketから出た。店主は私たちが建物の外に出るまでずっと後ろに付いて「お姉さん、1000ルピーで良いって言ったじゃん、1000ルピーで売ってあげるよ??」と言っていた。


正午過ぎのインドの日差しは、かいた汗すら奪っていくほど強かった。もと来た道を辿ってサンタナに帰る。その途中、一軒の服屋に「all 300rs」と書かれた紙が吊るされていた。さっきのパンジャビによく似たパンジャビも吊るされている。あれ、300ルピー買えるんだなあ。物価をよく調べてから買い物に再挑戦しようと心に決めた。

(続く)

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