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髄液が漏れた日。 『低髄液圧症候群』


先日知り合いにブログを始めたことを話したら、せっかくだし、これまでの経験とかもあげてみたら良いのでは??もしかしたら、誰かのお役に立てるかもしれないよ。と言われて、なるほど、確かに。と思った次第です。そんなわけで、少しずつ、これまで経験してきたことを書いていこうと思います。まずは病気のことです。


数年前に「低髄液圧症候群」という病気になりました。結果、約1ヵ月の安静で完治しました。

もし今、同じ病気で不安に駆られている方に届いていたら、まずは、安心してほしいと思います。多くの方は自然治癒で治ります。しかし、出回っている情報量が少ないうえ、個人のブログなどであがっている情報は、重症の方ばかりで、数年経っても治りません。とか、治療のために仕事も辞めて、それでも見えない未来に絶望している。など、ネガティブな内容で、不安を煽るものが多いです。もちろん、一部の方は、治療に苦労されていて、本当に大変なようです。ただ、9割の方は自然治癒で手術も不要で治るということをお伝えしたいです。

【0日目】
病の始まりは突然やってきました。前日、なんだか異常に肩が凝り、疲れが溜まってるな。くらいにしか思ってなかったのですが、夜突然の吐き気に襲われ、吐きました。そのときの感覚としては、胃がムカムカしたというよりは、反射的に身体が反応したという感じでした。それでも何か変なもの食べたのかな。程度で特に気にせず、眠りにつきました。

【1週目】
次の日から、全く起き上がれなくなりました。正確に言うと、物理的に起き上がることはできるのですが、頭を持ち上げると、これまで経験したことのない尋常ではない痛みと不快感が襲ってきて、起き上がることができないという状態になりました。光も見れなくなりました。目で日光を見ることができなくなり(異常な不快感と頭痛。後々調べると、脳の損傷により、光を処理する機能に支障をきたしていたようです。)すぐにカーテンを閉めて、光から隠れるように過ごしました。1週目は、貝のようにじーっと、薄暗い天井をボーっと眺めながら、ただ横たわっていました。この病気の特徴としては、横たわっている限り何ともないということです。この時期は、頭と肩回りの痛みが強かったです。身体的な痛みが強かったので、横たわり続けること自体は辛くありませんでした。考える余裕もなかったというのが正直なところです。最初の4日間は、全く動けず、ひたすら横たわり、食事も寝たまま、流し込む感じで食べてました。時々行かざるをえないトイレに起き上がるのが非常に辛かったです。起き上がるだけで涙が流れてきました。
5日目、全く良くならず、さすがに不安になり、病院に行きました。しかし、このころは脳の病気だなんて思いもしなかったので、整形外科に行き、背骨のレントゲンとCTを撮り、「異常ありません。ただ、専門ではないので明確なことは言えませんが、脳の可能性はあるかもしれません。」と言われました。そのときは、まさか脳の病気なわけないだろう!と変な自信をもっていたので、医者のアドバイスを聞き流し、また横たわる生活に戻りました。


【2週目】
1週目とほぼ症状は変わらず、光を避け、横たわる日々。さすがにおかしいと思い、脳外科に行くことにしました。CTを撮り、その場で「低髄液圧症候群」と判明。医者から言われたことは、「とにかく安静に。水分は良くとるように、できれば2リットル。食事も無理をせずしっかり食べるように。早ければ2週間程度で良くなるはずですが、個人差はあります。1ヵ月経っても、良くならなかったら、手術を考えなければなりません。」「簡単に説明すると脳の髄膜に穴が開き、そこから髄液(脳を守る液体)が漏れ出てしまう病気です。横たわると漏れが止まるので、楽になるのが特徴です。あまり知られていない病気ですが、風邪を引くみたいに誰だってなる病気です。」
病名が判明したことで、なんだか安心して、なるほど、これは全部脳のせいだったのか、と納得し、横たわる生活に戻りました。

【3週目】
仕事は2週間休んでいました。なんとか起き上がれるようになり、慎重に動けば近所の買い物くらいは行けるようになっていました。仕事を休み続けているのも気になっていたし、医者は早ければ2週間で治ると言っていたしな。と前向きに捉え、無理やり出社。頭は痛い。でも初期と比べると比較にならないほど、状態は良い。体を引きずるようになんとか出社したけど、やはりまだ早かったようで、結局早退することに。帰り道、また突然の嘔吐。この頃が精神的に一番辛かったです。少し動けるようになったけど、日常生活はままならない。仕事もできる状態じゃない。このままどうなってしまうのか。もうすぐ医者が言っていた、タイムリミット、1か月だ。本当に良くなるのか。一生このままだったらどうしようか。などと、ネガティブな妄想が頭をグルグルと駆け巡り、希望の見えない時間を過ごしました。

【4週目】
日々、起き上がっていられる時間が延びていきました。昨日は1時間いけた。今日は2時間大丈夫だった。という感じで。本当に少しずつ。発症から4週間たった朝、起き上がったら、これまでと違う感覚を感じました。その瞬間、「あ。もう大丈夫だ。」と、直感的にわかりました。頭の中にジトっとまとわりついていた不快感がなくなり、ようやく自分の脳を取り戻した感覚がありました。
4週間、長かったです。身体的に辛いときは、思考停止状態になるので、辛いとかも考える余裕はなくて、ただ、息をして生きていました。しかし、後半の精神的な辛さに耐えるのが、本当に辛かったです。

【5週目~】
近所に買い物に行くだけで、息があがるような状態になっていたので、まずは基礎筋肉作りに取り組みました。最初はウォーキングから、慣れてきたらヨガも始めました。頭を下に下げる体勢は、1年くらい辛かったので避けていました。身体は動くものの、疲れやすくなり、微かな頭痛も続きました。
動けるようになって、半年後くらいから、頭頂の特定の場所に白髪が異常に増え、歯がもろくなりました。2本神経が死に、さらに1本抜歯になりました。歯医者さんに相談すると、脳は体の中でも最優先されるから、栄養も脳に集中的に運ばれるだろう。その影響で骨や歯に影響がでることは十分考えられるとのことでした。そんな感じで、動けるようになってからも、身体のあちこちに不具合が生じました。

【現在】
すっかり元通りに動けるようになりました。身体の脆さも、改善してきていると思います。まとまった白髪もなくなりました。そして、生活は一変しました。夜型→朝型へ。外食→自炊へ。低体温→理想体温へ。 水分は1日2リットル飲み、睡眠時間は十分確保、お酒もほとんど飲まなくなりました。いわゆる「健康的な」生活を続けているので、病気前よりも健康になりました。半年で体内の細胞は入れ替わるそうなので、元気な細胞に入れ替わったのだと思います。忙しいと色々と後回しになってしまうのですが、この3つは常に意識して続けています。
①水を飲む ②睡眠をとる ③ストレスをためない 

【変わったこと】
人付き合い:
昔は、積極的に関係者や取引先との飲み会に参加していました。信頼関係を構築するために必要だと思っていたからです。しかし、今は、自分の身体は自分しか守ることができないと身をもって経験し、ほぼ全ての「付き合い」を断っています。たまに、物足りないと思われることもありますが、サラリーマンである限り、それで仕事がなくなることはないですし、業務に支障が出ることはまずありません。


自分との向き合い方:
昭和生まれなこともあって、根性論とともに生きてきました。うまくいかないのは自分のせい。自分の努力が足りないせい。と。しかし病気になると、気付くことがあります。身体が思い通りに動かせること、人並みに歩いたり、光を見たりすることが奇跡的だってこと。それからは、失敗しても、うまくやれなくても、生きてるだけで自分を認められるようになりました。自分を許せるようになってから、人も許せるようになりました。これは、大きな変化でした。

最後に。初期段階治療中の方がいらっしゃったら、とにかく安静に。水分を良くとって、寝てください。何もしないで横たわり続けるのは精神的に辛いです。家族や友人など、甘えられる人には甘え、決して無理はしないようにしてくださいね。


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