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どこまでも「オルタナティブ」なスプラトゥーン音楽史その2

みなさん、こんにちは。
もそししです。

この記事は3本立ての内の2作目です。
よろしければこちらから読み始めてみてください。

スプラトゥーン2

「Squid Squad」「シオカラーズ」をはじめとした数々の楽曲でイカ界、そして我々の浸透圧を上げてくれたスプラトゥーンのBGM。
その移り変わりの瞬間はスプラトゥーン発売から二年が経とうとしていた時、突如やってきます。

旧ハード「Wii U」から新たに舞台を「Nintendo Switch」へと移し、我々を騒がせたこのPV、そしてそれを盛り上げたBGM。

「Wet Floor」の「Inkoming!」です。
この瞬間からスプラトゥーンのBGM、イカ界の音楽シーンも新たな局面に突入していきます。
(余談ですがどことなくメンバーの容姿に現実のバンド「サカナクション」を感じるのは私だけでしょうか?)

新たな作風

本題に戻ります。
結論から先に言ってしまうと、スプラトゥーン2のBGMは「洗練」「都会的」「実験的」この3つの言葉で表現することが出来ます。

「Inkoming!」は前作の代表曲「Splattack!」がシンプルで荒削りなサウンドが特徴的であったのに対して、

  • メインボーカルに男女を据えた構成

  • 爽やかで透明感のあるサウンド

  • テクニカルで変則的なパート

  • 複雑になったシンセサイザーの音色

など、スプラトゥーン2年の歴史の中でプレイヤー達の戦いが洗練されてきたかの如く、楽曲もよりアーバンな雰囲気を纏ったものへと発展していきます。

しかし同時にそれはムーブメントの移り変わりを示唆しているわけです。

ムーブメント

この記事内で言及されていますが、伝説のバンド「Squid Squad」はゲーム内で活動の痕跡がなく、事実、活動休止状態となっていたようです。
新たなシーンの始まりは、過去のシーンの終わりを意味しているわけです。

以下は完全に筆者の趣味ではあるのですが…

現実の日本でも、音楽シーンの移り変わりの前には必ず、「伝説」と称されたバンドの解散があります。
そしてそれはスプラトゥーンでも同じく、どうやら2では「Squid Squad」だけではなく、「シオカラーズ」も活動休止状態になっているようです。

「シオカラーズ」不在の中、2の舞台ハイカラスクエアを盛り上げるのは"唯一無二のアーティスト"「テンタクルズ」です。

新しいアイドル

キャッチーでポップ、そしてレトロな楽曲が特徴的だった「シオカラーズ」とは全く新しいコンセプトでイカ達を沸騰させた彼女たち、当時現実の日本でも流行していたEDMの要素を強く持っています。

  • 耳に重く突き刺さる音圧バキバキのキック音(ドスドス鳴ってるやつです。)

  • 可愛らしい声と裏腹にまくしたてるようなラップを歌うヒメ

  • 妖艶な魅力を感じさせる歌唱力抜群のイイダ

  • 波形の複雑さが増し、バリエーションが増した電子音

  • 楽曲の中で同時に複数パートが鳴り複雑化したサウンド

特徴的な二人のボーカルの掛け合いと都会的なEDMサウンドがマッチしてこれまでの「アイドル」の概念を全く塗り替えるようなクールな楽曲が特徴的です。

2の「オルタナティブ」さ

ここまで読んでいただき、スプラトゥーン2の楽曲の狙いに気付いた方もいることでしょう。
前記事で引用したインタビューにあったようにスプラトゥーン2の楽曲は1に対して完全に「カウンター」の立ち位置を取っているということです。

これまで、メインストリームであったイカ界のシンプルな王道サウンドに対してより「オルタナティブ」で別の切り口から曲を洗練させ、ヤンチャなストリートサウンドはアーバンなサウンドに移り変わっています。

カレントリップ

「カレントリップ」は前作の「Hightide Era」へのリスペクトを持っているようですが(ネクタイはHightide Eraの影響だそうです。)、編成や曲調は対照的で、最小限のバンド構成のHightide Eraに対して、金管楽器2種を含む6人編成の大所帯。
繰り出される楽曲もテクニカルなフレーズを多用したり、急転直下のハーフテンポやリズムパターンの変化、音大生のアカデミックな雰囲気、音"学"で観客を圧倒するサウンドです。

From Bottom

「カレントリップ」と因縁がある噂される「From Bottom」は民族音楽であるフォークロアとパンクロックを融合させた実験的な楽曲
が魅力的です。
フィドル(クラシック以外でヴァイオリンを使うときの呼称)が軽快なメロディーを奏でる中、重低音のサウンドが不思議な一体感を与えてくれます。
現実にもハードロックとアイリッシュ音楽、メタルとクラシックなど相反する音楽のジャンルを組み合わせる実験的なバンドが居り、イカ界でも実験的なジャンルの融合が注目を集めています。

SashiMori

バージョン4から登場したSashiMoriはバンドっぽいサウンドにも関わらずドラムではなく、リズムマシーンから生まれたEDM要素を盛り込んだ複雑で高速なリズムパターン、そして女性ボーカルとシャウトの効いたラップパートによって真新しくクールな楽曲に
アニメOP風のPVとボーカルの構成は、どことなく実在の邦楽バンド「HIGH and MIGHTY COLOR」を想起しました。(略すとハイカラだし…)

タコの技術

現実の日本では電子サウンドとバンドサウンドの融合が機材やPCの普及によって幅広い楽曲制作に使われるようになったのが流行の切っ掛けとも考えられますが、イカ界での電子音楽の発展にはスプラトゥーンの世界設定を垣間見ることができます。

それはタコ達の地上進出です。

「Squid Squad」のメンバー、IKKANとトラックメイカーのWARABIからなるこのユニット「合食禁」ですが、IKKANの特徴的な重々しいシャウトとWARABIの攻撃的なバキバキのサウンドが特徴的なかれらの楽曲。
「Squid Squad」の痕跡が見られただけで我々の浸透圧が上がった彼らの楽曲発表ですが、ここであることに気づきます。

スプラトゥーン2内でEDM要素を特に強く出すグループ
「テンタクルズ」「SashiMori」「合食禁」はもれなくタコのメンバーが居るということです。
設定上、タコはイカと比べ機械文明が発達している事がわかっており、機械を使った音楽であるEDMのイカ界での発展は、彼らの力なくしては成し得なかった事でしょう。

もちろん、新進気鋭のグループのみが活躍しているわけではありません。

新しい一面

前作でも活躍した「ABXY」
ファミコンサウンドを駆使したチップチューンでポップなロックが特徴的な彼女達ですが、前記事で取り上げなかったのはこの記事で取り上げたかったからです。

前作ではキュートでポップさが際立つ楽曲が特徴的です。
発表当初は歌詞が空耳で「ペンギンペンギン」と聞こえると話題になった記憶がありますが、ハイテンポなパワー・ポップとピコピコの組み合わせが浸透圧を上げてくれます。

スプラトゥーン2でも続投となった彼女達ですが、発表された新曲がこちら

かき鳴らすギターと8bitのサウンドの掛け合い、そしてサビパートでは怒涛のピコピコリフ、”可愛い”ではなく”カッコいい”が全面に出たABXYの新たな一面を見ることが出来る楽曲でした。
のアーティストビジュアルが淡い色をベースに描かれていたのに対して、のビジュアルは黒が基調、そして様々な機材を駆使するABXYの音楽に対しての実験性が垣間見える仕上がりです。
今までの彼女達になかった「オルタナティブ」な一面が見える、この変化もスプラトゥーン2の特徴です。

まとめ

1の粗けずりでシンプルなBGMに対して、2では都会的で洗練された、そして実験的な試みが多数見られます。
ゲームの舞台も前作よりも都会になった「ハイカラスクエア」に移り、ファッションにもストリートだけではなく「タタキケンサキ」を始めとするモードな要素も加わり、”オシャレさ”がイカ達の心を掴んでいます。

DLCなので今回は話題には上げませんでしたが「スプラトゥーン2 オクトエキスパンション」ではさらに実験的で、そしてイカ界と一風違った発展を遂げた音楽、おどろおどろしくも最高にクールな曲たちを聴くことが出来ます。

1のヤンチャさから一点、都会的で尖った新しいムーブメントが起きたスプラトゥーン2。
1に対しての美しすぎるカウンターを決めた2のBGM達は、3でそれを上回る「オルタナティブさ」を出すことが出来るのでしょうか?
次回はどこまでも我々を振り回すイカ界のさらなる音楽シーンの変化の様子を3の発表当時から振り返って書きたいと思います。

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