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【Vintage】デッキメモ ~『船殻破り』は『富の享楽』の夢を見るか?~

・コンセプト 

 『船殻破り』コントロール中にドロー7(『Timetwister』や『Wheel of Fortune』といった全員7枚引くカード)を打つとMTGが壊れる。『船殻破り』がコンボパーツとしてもまた単体でも非常に強く、構成を寄せる価値があると感じられた。
 もともと『船殻破り』が公開された直後から構想はあったデッキなのだが、ツイッターで某氏に「(・へ・)クソデッキよこせ」と言われたのをきっかけに実際に形にしてみた(なお、この時の没ネタは『魂のカーニバル』ストームである)。

・初期バージョン ~統率者レジェンズ実装前~

 まず、最初に投げた形がこれ。

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 このときは『船殻破り』が4枚集まっておらず当然一人回しすらできていない状態で、メインボードのみ。見返すと意味不明なパーツも入っている。

 その後、MOで『統率者レジェンズ』リミテが開始。コモンアンコモンに値段の付くカードが非常に多く、暇つぶしとカード集めを兼ねてドラフトピックをひたすら回し始めたが、この時点では私の興味はむしろ『敵対工作員』と『朝の歌のマラレン』によるロックを中心にした黒ベースのミッドレンジに向いていた。

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 『敵対工作員』が4枚集まり次第、こいつを調整していくつもりだった。しかし、『敵対工作員』よりも先に『船殻破り』が4枚集まってしまい(この時点では主要なbotにこの両レアの在庫が全くなく、入荷した端から消えていく状態だった)、さらに統率者レジェンズのコモン/アンコモンの流通が増えEVが急激に下がり始めたためやむなく続行を断念。『敵対工作員』を中心としたデッキである以上4枚でなければどうしようもない。そんな中、「まあ『船殻破り』は集まったことだし、『敵対工作員』が手に入るまであのデッキでも回してみるか」と↑のデッキを(依然サイドなしの状態で)トナプラで回してみたところ想像以上の手ごたえがあり、もう少し取り組んでみようかという気になった。

・中期バージョン 

 初期バージョンは直感で組んであるため、改めて思考を整理するところからスタート。

・環境の前提
 は、なかった。統率者レジェンズで追加されたカードですぐに影響を与えそうなのは『船殻破り』と『敵対工作員』の二種だが、こいつらのパワーは環境が激震するレベル(特に『船殻破り』)だと思えた。なぜかというと、ヴィンテージにはサーチとドローが多いからである。

 ……一言で終わってしまった。とはいえ、サーチ封じもドロー封じも目新しい効果ではない。サーチ封じは『エイヴンの思考検閲者』や『疑念の影』、フェッチだけをつぶす前提なら同じ性質の『もみ消し』もある。ドロー封じはナーセットの制限も記憶に新しいが、レオヴォルドも『概念泥棒』もいる。ではなぜ既存のカードたちが変えなかった──あるいはその一部である──環境を変え得ると思うほど、これらを高く評価するのか。

 『敵対工作員』が既存のサーチ封じと一線を画すのは、"サーチ先を盗める"点。今のヴィンテージで最もサーチされているカードは間違いなく『Ancestrall Recall』で、青いデッキ対決ではこれをめぐる攻防の勝者がそのままゲームも取りやすい。多くの青いデッキには制限カードを使いまわすためのパーツが入っていて、『Ancestrall Recall』を一度解決してしまえばそのアドバンテージを背景にそれらをも通すことができ、雪だるま式にリソース差をつけていける。

 『敵対工作員』はサーチしたカードを自分のものにする。つまり、カードカウントでまず得をする。この点はサーチを潰しながらドローする『疑念の影』も同じだが、ランダムな1枚と相手のライブラリから選ぶ最適な1枚では雲泥の差があるのには言を俟たない。これが先に書いた"雪だるま式"の皮切りになることも多いだろう(『敵対工作員』はゴンティ書式なので本体が除去されても追放したカードはプレイできることに注意)。ヴィンテージでは相対的にクリーチャーが死ににくいとはいえ、基本的に儚い命である生物にとって、着地した瞬間にアドバンテージが発生するのは大きな強みだ。
 また、これは『船殻破り』もそうだが、クリーチャーというのは単体で勝ちに向かうカードである。消耗戦の末に『もみ消し』や『疑念の影』、ひいてはヘイト系置物全般を引いてしまっても何もしないが、クリーチャーが何もしないというのは通常あり得ない。エンドに出して殴る、最悪チャンプブロックくらいはできる。3/2というサイズがアルカニストに強いのもポジティブ。

 『船殻破り』は単純にドロー封じ能力そのものもレオヴォルドやナーセットに勝り、『概念泥棒』も含めこれらのカードの中で単色シンボルシングルと最も唱えやすい。最速1ターン目から構えられるパターンが複数あり、ハマるとカードアドバンテージに加えてマナ差がついて一気に優位に立てる。これも"雪だるま式"の一画。

 以上を要約すると、ただ強い。


・色の選定 
 キーカードの色である青と赤は確定。また、コンボをベースに構築する都合、残りは必然的に補色となる。なお、3マナのカードがキーである以上相応のマナ加速が必要で、ドロー7との相性に鑑みてもMOXENはフルに取らねばならないので、3色目を取らないという選択肢はない。 

・白 

 得られるもの 『僧院の導師』、『剣を鍬に』、『アゾリウスの造反者、ラヴィニア』、『ドビンの拒否権』、『時を解す者、テフェリー』、サイドボードに『封じ込める僧侶』など。また、『呪文捕らえ』は『船殻破り』と一緒に構えることで両面待ちとなり、悪くない。

・黒 

 得られるもの チューター 手札破壊 『敵対工作員』『富の享楽』 その他、サイドボードオプション多種 

 ベースはコンボデッキなので、チューターは強く使える。また、『毒の濁流』、『苦々しい試練』、『イクスリッドの看守』などサイドボードオプションが豊富。

・緑 

 得られるもの 『夏の帳』、『森の知恵』、『レンと6番』、『王冠泥棒、オーコ』、サイドボードに『自然の要求』など 

 PW2種が非常に魅力的。オーコは1枚でサブプランになるのでコンボデッキの脆さを補ってくれる。レンは『燃え立つ調査』のセルフハマりを軽減し、かつ3マナ到達をほぼ確約する。緑を濃くできず『活性の力』が取れないのが残念。

 再考した結果、補色は現在のまま黒でいくことに。いずれにせよメインに数枚程度しか補色のカードは入らず、数枚のタッチで黒以上のバリューが出る色がなさそう、というのが理由。あと、そもそも『富の享楽』で勝たねばクソデッキにならない。特殊勝利はクソデッキの基本。

 そんなわけで、初期バージョンのエッセンスを残しつつ若干の現実味を垂らした中期バージョンが↓。

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・マナベース


 MTGGoldfishで調べてみると、『最高工匠卿、ウルザ』を採用しているデッキはランド16(フェッチデュアランで13、『トレイリアのアカデミー』、ベーシック2枚など)、マナファクト8枚、制限キャントリ四天王(『Ancestral Recall』、『思案』、『ギタクシア派の調査』、『渦まく知識』)+『定業』3枚という構成が多い。
若干フラッド寄りの印象を受けるが、4マナのカードを主軸に据えるのであればこんなものであろう。

 これらのうち、ギタクシア以外の制限カードは喜んで採用するとして、『定業』のスロットには『燃え立つ調査』が収まってしまっている。キャントリップが減るならランドを増やすべきだが、まあ先述の通りフラッド寄りだと感じていたところではあるし、『燃え立つ調査』もキャントリップと言って言えなくはないのでまあいいかと結論することにした。馬鹿げていると思われるかもしれないが私もそう思う。一応MDFCやそのほかのバリューランドで実質17にするのも検討したが有力なものがなかった。
よってランド16、マナファクト8枚のマナベース。構成はフェッチ7、青デュアル6、トレイリア1は確定として問題は残り2枚。先人に倣うのであればベーシックであるが、『島』1枚はともかく『山』と『沼』どちらにするか、『島』を2枚にするか、はたまた『Badlands』にするか。
 
 "青赤ベースと自分で先に書いているし、山一択では?"と思われるかもしれないが、サイドボードに黒いカードを多くとる関係上、75枚総合で見ると黒と赤の比率は逆転する。サイド後はサイドカードを求めてマリガンすることもあるはずで、黒マナが遅れたせいでゲームを落とすのは避けたい。だが『沼』を安易に入れてしまうとメインで赤マナが事故る可能性もある。……というわけで16枚目の土地は赤マナ兼黒マナの『Badlands』にした。これはこれでマナソースがこれ1枚の初手を(少なくともメインは)絶対にキープできないので問題はあるが、まあ青マナはSapphire込みで16あるので出たりでなかったりするだろう、ということで。


・パーツ個別コメント(必要なもののみ)

メインボード

『燃え立つ調査』 ミニドロー7……と言うにはあまりにふざけている、デッキ最大の問題児。しかし、"3枚のカードに追加でアクセスし、さらに自分/相手のカードを6枚ともかくも手札以外の領域に登場させる"というのは1マナとしては破格の効能である。損はするが独自の仕事はこなすという点でBazaar of Bagdhadに近い。でも4にしてたら事故りまくったので3枚、初手に2枚あってキレるので2枚と、どんどん減量されていった非業のカード。しかし、マナがタイトな展開でメイン『船殻破り』→『燃え立つ調査』→3マナアクション、という展開もあるので2枚はあって良いと思う。あと、『死の国からの脱出』下ではマナがある限り撃てる。

『Wheel of Fortune』 『死の国からの脱出』との噛み合いで、『Timetwister』に勝るとも劣らない効力を発揮する。赤いので紅蓮破されないのもよい。

『意外な授かりもの』追加のFortune。よくピッチの弾になっている。

『永劫のこだま』 劣化ツイスター……と見せかけて『燃え立つ調査』で捨てた時などは本家より強い。また、『船殻破り』下では表裏で打つと通常の3マナドロー7よりも1つ多く宝物が出る(14個マイナス9マナで差し引き5。通常のドロー7は4)。

『富の享楽』 ギャグか? と思われるかもしれないが、相手の手札を空にしマナを爆発的に増やしても、ドレッジやホガークに対しては盤面の不利を覆せないこともある。そういう時、これと『Time Walk』で勝ちうる。まあPOのメンターのようなものだ(全然違う)。 初手にあるとオートマリガンなのも愛嬌だ。

『稲妻』 語る必要もないカードではあるが、アウフや各種ヘイトベアーがきついこのデッキでは『紅蓮破』よりも優先している。また、『死の国からの脱出』から連打して適当に勝つパターンもある。青いデッキにはガードが下がるが、そこは『船殻破り』が補う。

『ハーキルの召還術』 MUDやゴロス相手にこれからドロー7すると『砂塵破』になる。アーティファクト対策スロットはどうせ必要なので、一瞬隙を作り出せれば充分なデッキと噛み合うこれを選択。 

『コラガンの命令』非常に器用で、全体的に大振りなデッキに丸みを与えてくれる。単体でカードアドバンテージを得られるインスタントかつ青くない、というだけで貴重な存在なうえにこのデッキが弱いカードたちに対して強い。3マナ渋滞のリスクを取ってでも採用する価値はあると思えた。

『願い爪のタリスマン』 相手がサーチする頃にはゲーム壊れてるからいいだろ理論。また、ドロー7でリフレッシュされてから一番必要なものを持ってこれるため、やむを得ずドロー7を打つ場面でもランダム性を軽減できる。総じて先置き出来るのが強い。

サイドボード

『ハーキルの召還術』 MUD・ゴロスへの追加。

『外科的摘出』 自分がコンボ寄りのデッキなので、ハードマリガンから大規模な墓地対で封じてあとはゆっくりというプランよりも、マナを使わずに相手を少しだけ減速させる方がよさげ。

『虚無の呪文爆弾』『魂標ランタン』の登場以後見かけなくなったカードではあるが、元祖墓地対策兼置きハンド。『神聖の力線』にかかるのはデメリットだが、効果が大きい墓地対策も必要なので採用。手を損しないのでアルカニスト等ソフトな墓地デッキにもサイドインできる。

『イクスリッドの看守』『神聖の力線』、『否定の力』、『活性の力』といった"墓地対策対策"に引っかからず、『意志の力』と『不快な群れ』に気を付けていれば墓地を完全に殺せる。2マナと重いのは気になるが、そこはリスクを取る。墓地対策は散っている方が相手はやりにくいはず。なお、『死の国からの脱出』と同時に戦場にある場合"タイムスタンプと無関係に常に"『死の国からの脱出』の方が優先されるので注意。要するにブリーチ相手には入れない。

『取り除き』『削剥』 除去の追加が少し欲しいなと思ったので。極論、MUDやゴロスとしか当たらないのであれば『削剥』がいいし、墓荒らしやトリコとしか当たらないのなら『取り除き』が勝る。どちらが憎いかで決めればいいだろう。今回はスプリット。

『毒の濁流』 全除去も少しは必要かと思ったがいらないかもしれない。ホガーク等相手に全部流すこともあるが、やめておけ! 死ぬほど痛いぞ!

『敵対工作員』 PO、DPS、DDなどコンボ全般に。あとは3/2瞬速というサイズが単純にコンバットで何かを起こす可能性があるので、アルカニストや墓荒らし相手にもイン。ゴロスもかなりサーチを多用するのでイン、と幅広い相手にサイドインできる。クリーチャーは対策カードにありがちな下ブレが小さいのが良い。


・不採用なカード
メインボード

『ギタクシア派の調査』 マジックのカードの中で最も嫌いなので不採用。でもデッキ的に手をのぞけるのが強いので、通常は採用した方がいい。

『のぞき見』 ドロー7前に打つ価値が高く『定業』とどちらにするか迷ったが、占術を優先。

『Timetwister』 高すぎて持ってないので不採用。

『概念泥棒』 4マナは重く、効果もやりすぎ感があってデッキが強くなっている気がしない。

『湖での水難』 カウンターと除去を兼ねるカードはめちゃくちゃ貴重ながら、下ブレもある1枚であり、ただでさえピーキーなカードが入りすぎているデッキにはリスクが高かった。しかし本当に当確ラインぎりぎりで、採用もあり得る。

『常智のリエール』 ドロー7と使うととんでもないことになる。だが青いパーマネントは常に『紅蓮破』に怯えなければならない。 

『黄金牙、タシグル』 私は黄金牙ではないので不採用。

『湖に潜む者、エムリー』 ドロー7と相性がいい0マナファクトと相性がよく最初は採用していたが、なんとなくプレイ感がよくなくひとまず不採用に。採用するのであればガラクタやボルトキー、『修繕』なども取っていく形になるだろう。

『露天鉱床』『不毛の大地』 レン6もるつぼもないのでハメハメはできず、主にバザーへの対策カードとして運用するイメージ。初期バージョンには入っていたが起動する暇がないことが多く、事故要因にもなっていたのでカット。

『師範の占い独楽』 デッキに噛み合ってはいるが、ドロソに比べてアウフヌルロハマりがきつくなるなと思い採用見送り。あと、使う側(要するに私)の問題ではあるが挙動がトロトロしててテンポが悪い。シャキシャキやろう。

『死の飢えのタイタン、クロクサ』 一瞬考えたが、天才なので試すまでもなく弱いと判断。

『はぐれ影魔導士、ダブリエル』 置きハンデス。手を空にした後のウィンコンディションになり単体でアドバンテージも取れるので意外と悪くないかもしれない。思いついただけで試してないので誰かやってみてほしい。でもリリアナの方が強い気がする。

サイドボード

『ボジューカの沼』墓地対策兼17枚目の土地として。この場合、タップインは問題にならない(タップインは1マナ使用に等しく、マナベースに貢献しつつカウンターされないメリットが大きい)。『イクスリッドの看守』と入れ替わる可能性あり。

『非業の死』 墓荒らしに打つと鹿も含めて盤面全員飛んで気持ちいい。でもオーコが残って死ぬ。ホガーク相手にもホガーク、ヴァイン、死儀礼、ルートワラあたりは飛び、死んでほしくない供給者は飛ばないので悪くないが、『虚ろな者』が残って死ぬ。丸みで『毒の濁流』に劣る。PWも死ぬバージョンを(イラストはレベッカで)刷ってほしい。

『真髄の針』 丸いので幅広くサイドインできるが、一番はバザー対策。しかし、こちらの構成上相手が置き物割りを追加してくることは考えられ、それと噛み合ってしまうと一気に負けにつながるのがいやで不採用。

『プロパガンダ』 対ドレッジ・ホガーク最終兵器。針ともども、『活性の力』が減ってくれればいいのだが……(そんな日は来ない)。

『無駄省き』 やるなら4枚積んで『燃え立つ調査』も4枚にすべき。それはそれで面白いデッキになりそうではある(きっと強くはない)。

・最新バージョン

 そして現在のバージョンがこれ。

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 1、2で整えて3でドン、というイメージをより明確に。キーカードが3マナである以上受けていく展開が多く、『船殻破り』の瞬速も活かせるようインスタントの対応カード多め。また、丸いカードをサイドに、とがったカードをメインに入れているのが我ながら意味不明だなと思ったのでメインを丸めに。サイドボーディングもシンプルでわかりやすくなったと思う。

 軽いアクションの追加として『ヴリンの神童、ジェイス』を採用した。

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 ヴィンテージのゼロックス系のデッキにはだいたい3マナのPWが3~4枚入っているが、このデッキの3マナは通常『船殻破り』のターンなので代わりに2マナで展開できるジェイスを。フラッドが多発したのでランドは15に切り詰めたが、フラッド/スクリューいずれをも緩和してくれるだろう期待もある。まあそもそもカードが単体でゲームメイクできるレベルで強い。

・おわりに

いかがでしたか? 結局『船殻破り』を4枚採用したゼロックスもリストが固まり定番化しつつありますが、みんなと同じでは物足りない方、『富の享楽』で勝利する実績を解除したい方、ぼうりょくだん、などにはとてもおすすめできるリストのようです。ぜひ一度お試しください!





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