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FREDERHYTHM TOUR 2019~リリリピート編~ 名古屋Electric Lady Land ライブレポ


こんにちは、DAです。
こんばんは。

今回の記事は、ライブレポです!
7月3日に名古屋Electric Lady Landにて行われた、『FREDERHYTHM TOUR 2019~リリリピート編~』のライブレポです。

計パソコン3台、スマートフォン4台、というほぼほぼハッカーみたいな状況で一般チケット戦争から、チケットをもぎ取った本公演。
個人的には、初の名古屋遠征だったのでその点も含めて(名古屋の会場がどうだったか、という点)レポを書いていけたら、と思っております。

ではでは、早速!
『FREDERHYTHM TOUR 2019~リリリピート編~ 名古屋Electric Lady Land ライブレポ』始めていきましょう!


まず、この日の名古屋のお天気がね。あいにくの雨でして。
会場待ちの列に並んでいる時が、それこそ本降りの時間帯で、傘を忘れた私は街路樹の下で雨宿りをしていたのですが、その葉から落ちてくる雨粒もどんどん増えて、大粒になっていって…
という、なかなかハードな天候でした。

そんな中、ぞろぞろと会場に入った頃には、もう汗か雨かもわからないぐらいぐちゃぐちゃに濡れてしまいました。
入場してから、上手の前から5列目ほどの場所で、40分ほど開演前の悶々とした時間を過ごし、緊張と、もうなんかよく分からない吐き気で三途の川が見えてきた頃に、会場の照明が暗くなっていきます。

開演前SEの音量も、照明と共に徐々に小さくなっていき、暗闇と無音の中で、お馴染みの、あのフレーズが響きます。

「フレデリック、始めます」

健司さんの声に歓喜して、観客のボルテージも急上昇!!
…と思いきや、唖然と言っていいほどの一瞬の深い沈黙の後に、悲鳴にも似た歓声が会場を包みます。

その理由は、
入場SEの『パパマーチ』です。

本人たちが登場する前から、
リリリピート公演のリリリピート公演たる所以を、声も出せなくなるほどの衝撃で見せつけられました。おどろおどろしいSEと、徐々に大きくなっていく会場の手拍子。私は、手拍子すらできずに、ただただ手で口を押さえて棒立ちしていました。

普段のライブだと、隆児さん、武さん、康司さんが先にステージについて、その後に健司さんが登場する、という流れが多いですが、今回は、4人同じタイミングで登場します。
私は4年前の公演を、自分のこの目で見ていないので正確には判りませんが、4年前もこうやって、4人一緒に登場していたのかな、とその姿に思いを馳せてしまいました。

フレデリックの4人が登場し、『パパマーチ』の不気味な音色が突如途切れます。

そして、『パパマーチ』が流れた直後にも似た深い沈黙が会場を包みます。
その沈黙を裂いたのは、康司さんの、海底から這い上がってくるようなベースの音。

1曲目は『SPAM生活』です。

音源とは、いや4年前とは、明確に違う(であろう)健司さんの歌声は、Aメロの無機質な音階の上でも色鮮やかに踊ります。

『スキライズム』のAメロを初めて聴いた時に、
「昔のフレデリックっぽい歌い方に寄せているのかな」
と思いましたが、
この日の『SPAM生活』は「前のフレデリック」だなんて、とんでもない。その歌い方は、「前のフレデリック」と「今のフレデリック」を掛け合わせて生まれた、また新しい表現のように感じました。決して無機質なわけではないのに、その感情の表現の意味を、まるで靄がかかったように読み取ることができない、そんな歌い方だと、私は感じました。
時折、伸びた髪をわしゃわしゃと手で掻き乱したり、片手で目を塞ぎながら歌ったり、その様子は、どんな気持ちを込めて歌っているか到底想像もできない、想像させるスキマもない、
『SPAM生活』を初めて聴いた時の小気味悪さや狂気を、改めて思い出されたように感じました。

2番のゆったりとした曲調になるところで、空気をかき回すみたいに両手をひらひらと動かす康司さんに煽られるように、会場の空気もだんだん熱を持っていきます。

『死んだ魚のような目をした魚のような生き方はしない』

健司さんの声と、康司さんの声が重なり、ドロドロになった坩堝の中身がぶちまけられます。喜怒哀楽のどれでもない感情で操られた観客は、好きに音楽に乗っているようで、その実フレデリックの掌の上で転がされていたのだな、と今になるとそう思います。



そして、続く曲が
2曲目『DNAです』です。

この曲の、特徴的なイントロの一音目で、会場のテンションはまた一つ上がっていきます。
Bメロのうねるようなメロディで、またぐちゃぐちゃに掻き回されて、ドロドロに溶けた会場は、
サビに入る前の一瞬のミュートから開ける時に「ブンッ」と振られる康司さんのベースのネックに操られるように、一斉にその手を上げます。
サビに入って曲がひらけると、照明もおどろおどろしいものから一気に明るくなります。
その時にやっと見えたフレデリックの表情は、もれなく4人とも万遍の笑み。
そんな表情を見て、
「あ〜このまま操られてもいいかな〜」
なんて思ってしまいました。本当に麻薬のようなバンドです。

『明日も繰り返していく DNAが』

と繰り返していくフレーズを歌う康司さんは、時折その最後の節のメロディーを転調させ、これまたはち切れんばかりの万遍の笑みで歌います。



続く『オドループ』で、会場のボルテージは天井をブチ抜いていきます。
恐ろしいほど揃った手拍子も、
『揃えている』のではなく、『揃ってしまう』
フレデリックにまんまと操られて、もう自分の意思とは関係なく踊ってしまう、一種の狂った空間が、そこにはありました。

1番のサビから「歌えますか?」と煽る健司さんに応えるように、観客も『オドループ』を全力で歌います。
サビに入るほんの一瞬前、健司さんが外したイヤモニも、その肩で踊っていて、

『踊ってない名古屋が気に入らない
踊ってない大洲が気に入らないよ』

と嬉しいフレーズも相まって、そのままの盛り上がりで突入するギターソロ。
センターのお立ち台に立つ隆児さんに割れんばかりの歓声を送る私たちと、隆児さんに負けじと(というふうに私は見えてしまいました…!)、上手と下手のお立ち台に上がる健司さんと康司さん。
それでどんどん増幅していくグルーヴを武さんが、何倍にも膨らませていきます。

ブチ上がって、どんどん笑顔になっていくお客さんを、嬉しそうな幸せそうな顔で見ていた武さんとの笑顔のキャッチボールは、この日最後の一曲が終わるその瞬間までずっと続いていました。



「フレデリックです、どうぞよろしく」

という健司さんの短い一言を挟んで、続く曲は
『プロレスごっこのフラフープ』です。

個人的に、この『プロレスごっこのフラフープ』をライブで聴くことが念願だったので、そんな念願が叶って大歓喜だったのですが、会場中みんなそう思ってるのでは?と思ってしまうぐらいの熱気でした。

雨で濡れて、汗で濡れて、掻き回されて、ぐっちゃぐちゃになった会場を、また、腕をひらひらと前後に動かす康司さんに操られて熱くなっていきます。

「飛べますか?」

という健司さんの声で踊る会場のお客さんを、
それはそれは嬉しそうな顔で見て笑う隆児さんは、間奏のキメで片足をみょーんと振り上げて、悪戯が成功したみたいな顔で、また笑います。ドキドキするからやめて。

首を左右に、パッパッパッと振りながらベースを弾く康司さんも、弾けるような笑顔でそれを見ていました。もちろん健司さんも、武さんも。


そして次の曲は
『ディスコプール』です。

イントロが聴こえて、
「フゥ〜!!」と歓声が上がる会場。来たぞきたぞ〜というワクワクは、観客もフレデリックも同じように感じました。

この『ディスコプール』という楽曲、ライブの定番曲ということもあり、生で耳にする機会が多いので、感覚的にはそんなに前の曲という感じはしていなかったのですが、これ『oddloop』の収録曲なんですよね。
個人的には、それに気が付いてちょっとびっくりしたのですが、そのびっくりの理由がこの次の曲で明かされます。


続く曲は
『パラレルロール』です。

『ディスコプール』のアウトロのキメから、そのまま『パラレルロール』に続く演出は、これまでも何度かライブでやられていましたが、今回この「リリリピート編」で、この演出がされたことに、私自身多少なりとも、その意味を考えてしまいました。

これまでのセットリストの曲が、『うちゅうにむちゅう』や『OWARASE NIGHT』からのものが多かったので、この『パラレルロール』はその中で少し異質な存在のような気がしますが、
『ディスコプール』と『パラレルロール』を繋げることで、
「昔のフレデリックと今のフレデリックの両方を知ってもらいたい」
という「リリリピート編」としての意味を強く感じました。


『パラレルロール』のアウトロのキメが終わって、小さな沈黙が生まれます。フレデリックのライブの曲間にしては、いつもより長い気がしたので、

「この辺でMCを挟むのかな?」

と、気を抜いたその瞬間


「まだ休憩なんてさせへんよ?」

とでも言うように、聴き慣れたキメのイントロが爆音で響きます。
私はこの時、まるっきり気を抜いていたので、本当に、心臓飛び出るかと思うぐらいびっくりしました。


次の曲は、
『KITAKU BEATS』です。

「遊ぶ?遊ばない?」の煽りも、歓声でかき消されてしまいそうなほどの会場の熱気。

あっ、そういえば、熱気熱気と言っていますが、名
古屋のお客さんはめちゃめちゃマナーが良くて、遠征で初めて名古屋に来た私はびっくりしたんですよ。声も手拍子も、たくさん音で遊べて盛り上がっているのに、ちゃんと自分のスペースで踊れる名古屋のお客さん。びっくりしません?その場にいると、本当にびっくりします。入場の時も、キラーチューンでも、ちゃんと盛り上がるのに、前の人にぎゅーってならないあのマナー、東京の客も見習わなきゃなと思いました。名古屋最高。season4でまた来ます。


なんてそんな話は、今はよくて
『KITAKU BEATS』の話をしましょう。

最初のキメで、竿3人がチョけるのはもう定番になった気がしますが、この日は、
隆児さんがギターのネックを康司さんに向けてピストルみたいに打つ、康司さんがそれに合わせて両足を気をつけの体勢で揃えてぴょこぴょこ飛ぶ、それを見て破顔する健司さん、その様子を見てまたまた破顔する武さん
と、そんな感じでした。愛おしいですね。お客さんも破顔して、ニッコニコ。

そして、私のレポでは毎度このシーンを書いている気がしますが、好きなので何度も書きます。

『遊びきってさぁ』『だから今夜は』
の掛け合い。この日も絶好調でしたよ。眉間にシワを寄せて、力強く歌う康司さんの後に、喋るような囁くような健司さんの歌声が重なって、
この時、オタクは何度でも息絶えるんです。


そして、一旦遊びきった名古屋は、また短い沈黙の後に聴こえてきた少しメロウなギターの音色に、雨ではなく音色にしっとりと濡れていきます。

次の曲は、
『シンクロック』です。

「昔のフレデリック」と「今のフレデリック」を繋ぐ一曲でもある『シンクロック』。ぐっちゃぐちゃに掻き混ぜられた会場に、心地良く沁みる雨が降ります。

この曲で印象的だったのは、いつもだったら盛り上がるところは目をギュッと瞑って力一杯スティックを振る印象をだった武さんが、力一杯叩きながらも、お客さん一人一人の表情を確かめるような、そんな優しい表情で見ていたのがとても印象的でした。

「今 この日をこの瞬間を待ち望んでいた
待ち望んでいた 待ち望んでいたんだ」

そう力強く歌う康司さんは、歌うと言うよりも叫んでいるように感じました。
でも、そのフレーズを歌いきってラストの大サビに入る時にはもう、いつもの笑顔に戻っていました。その差分に、オタクは二度死ぬ。

ラストのサビが終わって、健司さんの語るような歌声の後に続くのは、ライブでしか聴くことができない『シンクロック』の柔らかいアウトロ。


「ああ…いい曲だなぁ…」と余韻に浸っていると、徐々にそのメロディの違和感に気づき始めます。
『シンクロック』の暖かいアウトロが、侵食されていくように別の曲に覆われていきます。



次の曲は、
『もう帰る汽船』です。

オレンジの暖かい照明も、徐々に緑や青の寒色の照明に変わっていきます。康司さんに当てられらピンスポットと、そこから漏れた光に照らされる3人。

私はこの時、以前何かのインタビューで康司さんが、
「昔は、フレデリックは俺のバンドだっていう気持ちが強すぎた」
とおっしゃっていたことを思い出しました。
ここまでのレポでも、わかっていただけるかもしれませんが、
この「リリリピート編」の前半、康司さんに操られる観客と、康司さんの言葉が音楽が色濃く染み込む音色、

「昔のフレデリックと今のフレデリックの両方を知ってほしい」というその意図が、こんな形で実感を持って突きつけられて、今考えると感動しますが、現地で『もう帰る汽船』を聴いている時は、もうそれどころじゃないです、本当に。

音源のそれよりも低音に幅が生まれ、もっともっと不気味で不思議で魅力的になった康司さんの歌声が会場中に響き渡ります。

そして、2番から入る健司さんのコーラスのなんと色っぽいこと。
「どんぶらこ どんぶらこ 流されてく」
それだけのフレーズなのに、そのフレーズを歌いきった後に吐かれる息にまで、妖艶な空気を感じました。
一瞬、マイクに口元だけをを残して、ギターを弾きながら俯いてスタンドから離れるその姿は、フロントマンの時は決して見ることができない姿でした。

突如暴れるような間奏を経て、会場はまた異常な熱気に包まれます。それを宥めるような、ギターのリフと、康司さんの歌声。

「むなしい かなしい うれしい さみしい」
という歌詞、今までは聴き流してしまっていたのですが、
『あの曲』に込められている感情は決して2つだけじゃなかったこと、4つの感情のうちの最初の感情は「むなしい」であること、それ以外にも文字にできない様々な考えが、同時に頭を巡りました。

緑がかったのピンスポットがゆっくりと消えて、暗転の中、ギターを爪弾く音が細く聴こえます。白く、ぼんやりとした照明がゆっくりと健司さんを照らして、健司さんは再びマイクに向かいます。



次の曲は
『峠の幽霊』です。

健司さんが爪弾くギターと歌声で始まった『峠の幽霊』。
ステージの両側から、健司さんを照らす白い照明が、隆児さん、康司さん、武さんの姿に影を落として、まるで健司さんの周りに3人(3体?)の幽霊が潜んでいるかのように見えました。

手振りをしながら歌う健司さんは、『SPAM生活』や『ディスコプール』を歌っているときのように、目を塞いだり、髪を掻き乱したり、その動きは見えない幽霊に操られているようにも感じられます。

時折挟まる康司さんのコーラス。やっぱり、不気味な曲であればあるほど、康司さんの笑顔が際立っていました。

2番のサビに入る直前の
『どこいった』というフレーズで、健司さんと康司さんの歌声が重なるとき、心臓ごと持って行かれてしまいそうな気さえしてしまいます。

不気味なベースソロを笑顔で弾く我がベーシストは、やっぱり幽霊なんじゃない?と思ってしまうような間奏を経て、ラストの大サビに入ります。

大サビに入ると、白い照明が4人を照らします。
カッとひらけたステージでは、隆児さんも武さんも笑っていて、もちろん『暗い暗い怖い怖い部屋で』と歌う康司さんも、歌詞に反して、その表情は掴めない笑みを湛えていました。
最後に、
『壊れちゃったんだ』と歌った後、健司さんはこの3人に連れて行かれてしまうのか、というか初めから4人とも幽霊だったんじゃないか、などなどグルグルといろんなことを考えてしまいました。


「どうもありがとう」という健司さんの言葉の後、それまで息を止めていたかのように沈黙していた観客からは、割れんばかりの拍手が送られます。

その後にMCだったのですが、本当にどんな顔をしてMCを聞けばいいのかわからんよ、と思っていて、

健司さんが
「こんな空気になってしまう曲の後にMCですいません」
的なことをおっしゃっていて、ああこっち側に帰ってきてくれてよかった、と私は少し安心してしまいました。



いつもよりも少し長めのMCを終えて、健司さんが
「ここまでは、昔の曲が多かったけれど、今日は別に昔を懐かしんでもらいたいわけじゃなくて、昔のフレデリックと今のフレデリックの両方を知ってもらいたいので、
ここからは全曲『フレデリズム2』からお届けします」
と、口にしてハンドマイクを握ります。



そして、暗転したステージから、だんだんとシンバルを鳴らす音が大きくなっていき、始まる曲は
『LIGHT』です。
『峠の幽霊』から一転して、やって来た鮮やかな朝は、会場中を照らして暖めて、いや、アツくしていきます。

この日の『LIGHT』を聴くまで、この曲は基本的に健司さんのメインボーカルと康司さんのコーラスが重なって響く、というよりは、ハンドマイクで縦横無尽にステージを動く健司さんと、それを支える3人のビート、という印象だったのですが、
この日の『LIGHT』は、これまでよりも康司さんのコーラスのパートが多くなっているように感じました。

嬉しいけど、どうして?という疑問は、後々晴れるので、それは後ほど。


この曲の間奏に入ると、お立ち台に上った隆児さんにスポットが絞られます。
俯きながら、でもその目を爛々と輝かせてキレキレのカッティングを鳴らしていると思ったら、今度は上手のお立ち台にスポットが絞られて、康司さんのベースソロに続きます。

「オン ギター!
オン ベース!」

と、健司さんが口にするたびにスポットライトが切り替えられ、隆児さんと康司さんのソロプレイの掛け合いが始まります。
個人的には、隆児さんが弾いている時に、暗闇の中、口角をグッと上げて弦を押さえながら待つ康司さんの、そのワクワクした様子や闘志(?)が見え隠れする表情が、もう、辛抱たまらんでした。

『光を姿を 夜のスキマに歌う歌を』

そう伸びやかに歌う健司さんが、隆児さんと康司さんに向けられた会場の視線を、一気に掻っ攫っていきます。

『そっと照らして』

と、健司さんと康司さんの声が重なった時、会場は朝が来たように明るく照らされました。


『LIGHT』が終わると、暗転したステージから、隆児さんがスポットで照らされます。全ての弦をミュートした状態で、子気味良いリズムを刻んでいきます。
「でもこの曲、何?」と思った頃に、聞き慣れたギターのキレキレのギターのフレーズを奏でます。


次の曲は、『シンセンス』です。

ステージに設置された3つのお立ち台を渡り歩きながら、観客一人一人に近づいて、目を向けて歌う健司さんの後ろでは、両足を開いたり閉じたりして跳ねて踊りながらベースを弾く康司さんと、その全部を目に収めて、やっぱり優しく笑っている武さんがいました。

最後の一音まで、飛び跳ねて踊って、また隆児さんのギターのフレーズで幕を降ろす『シンセンス』。


息つく間もなく、今度は武さんが、またまたお客さんの体にそのリズムが染み付いたビートを刻みます。
次の曲は『かなしいうれしい』です。

音を鳴らすのが、特別上手い(気がする)名古屋のお客さん。「ダッダッ、ダッダッダ」という手拍子はもちろんのこと、それに続く「ダッダッダ、ダッダッダ」という手拍子まで、ぴったり綺麗に奏でていて、私は密かに感動していました。

SEASON1では、FAB体制で披露された『かなしいうれしい』が、こうしてSEASON2で、もう一度聴けることに喜んでいたのも束の間、私はあることに気がつきました。
でもまぁ、それに確証もないし、違うかもなぁ。なんて思っていると、次の曲でその考えは確証に変わります。

次の曲は、
『スキライズム』です。


いつもよりコーラスの多い『LIGHT』に、
季節を跨いで2度披露された『かなしいうれしい』に、
好きと嫌いはあくまで表裏一体だと歌った『スキライズム』に、
あらゆる物事の二面性に着目して作られたという『フレデリズム2』に、
「昔のフレデリックと今のフレデリックの両方を知ってほしい」というSEASON2のセットリスト

そういえば、いつか
「昔は、フレデリックは自分のバンドだっていう気持ちが強すぎた」と言っていた康司さんのことも、もう一度、思い出してみてください。

「昔のフレデリックと今のフレデリックの両方を知ってほしい」というのは、別に曲目だけではなくて、バンドの在りようまで表現しているのではなかろうか、と。聴きながら、邪推してしまいました。


一旦間奏で、メロディーも会場もぐちゃぐちゃに掻き回して、破壊と構築を繰り返すような「昔のフレデリック」と、
それぞれがそれぞれで鳴らしつつ、同じビートの上に乗って、絶妙な足し引きを繰り返す「今のフレデリック」を、
私はこの『スキライズム』で強く感じました。


『狐につままれたら気づけって』

と歌いながら、右手を狐の形にして自分の耳元(ほっぺかも?)を狐の口先でつつきながら歌う健司さんは、『SPAM生活』で手振りを付けながら歌っていたときよりもずっと、お客さんの近くにいるように感じました。


「名古屋、ありがとうございました」

と言う健司さんに続くのは、会場のテンションを上限突破させるような力強いキメと、明暗を繰り返す照明。


次の曲は、
『飄々とエモーション』です。

1番から「歌ってくれ!」と煽る健司さんは、『オドループ』の時のそれとは似て非なるもので、『一緒に歌う』というよりは、会場のお客さんと、フレデリックと、どちらが『飄々とエモーション』を愛しているかを競いながら、鳴らしているようにも感じました。

中央のお立ち台に立って、観客に向かって前のめりになりながら歌う健司さんに対抗するように、1番のサビから観客の歌声は会場中を満たしていきます。
シンガロングでは、もはや健司さんの声すらも聴こえなくなってしまうほどの歌声が響きます。雨で濡れて体を冷やしていたことなんて忘れてしまうほどの熱気が、その場にいた全員を再び濡らしていきました。

『エモーション』という歌詞を口ずさみながらギターを弾く隆児さんは、(おこがましくも)「めちゃめちゃ嬉しそうな表情だな」と思ってしまうような笑顔で、思わずこっちも笑顔になってしまいました。もちろん康司さんも武さんも。


そして2度目のシンガロングが明け、アウトロのキメを終えると、
武さんが叫ぶような声のカウントが聴こえてきます。



本編ラストの曲は、
『逃避行』です。

『フレデリズム2』がリリースされたばかりの頃と違って、『みんなのフレデリズム』になった今、そのクラップのタイミングもシンガロングも、それこそ「みんなで踊っている」という感覚が、今までで一番強い『逃避行』だったような気がします。

『逃避行』の間奏はベースソロが主になっていますが、この日の康司さんの弾き方は、力んでいるというか、肩肘を張っているわけではなく、音に揺れて踊っているように感じました。
それは決して康司さんがオラつきながら弾いているわけではなくて、4人のフレデリックが絶妙な足し引きのもとで鳴らしているのだと、改めて感じることができたような気がします。

『始まった 始まった 始まってしまったんだ まだ見ぬ街へ』

という音源では、康司さんパートの部分、
先日のJAPAN JAMだと健司さんパートになっていたのですが、この日は康司さんボーカルで始まって、
「ワンマンだと康司さんパートになるのかな」
と思っていたのですが、ところがどっこい、
もう一度繰り返されるこのフレーズでは、健司さんと康司さんのユニゾンパートになっていました。腰が抜けたね、本当に。

(本編の)最後の最後まで、「昔のフレデリックと今のフレデリックの両方を知ってほしい」という気持ちが込めに込められたライブでした…感服。



『君と逃避行』

と健司さんの歌声で一旦幕が降ります。4人で揃って長くお辞儀をして、軽く手を振って去っていきます。

それまでずっと完璧なクラップをし続けていた名古屋のお客さんも、アンコールを求める手拍子だけははやる気持ちを抑えきれないような、早足のビートを刻んでいました。



そしてしばらく経って、暗転していたステージに照明が当てられ、フレデリックの4人が再び登場します。ありがとう、と口角を上げて両手を合わせる康司さんと、歓声に少し照れ臭そうにはにかむ隆児さん、武さんのお客さんを見つめるあたたかい視線はずっと変わらず、そして「ありがとうございます」とマイクを通した健司さんの声を待ちわびていた観客は再び歓声をあげました。


アンコール1曲目は、
『夜にロックを聴いてしまったら』です。

個人的には、この日『夜にロックを聴いてしまったら』を演奏しているときに、ずっと歌詞を口ずさみながらドラムを叩いていた武さんが、とても印象的でした。

この曲を含んだライブレポは、今まで何度か書いていますが、その全てで『だんだん音が増えていって、それが一つのグルーヴになっていく様』という話をしています(多分)。
でも、この日は、少し違っているように感じました。

一つ一つの音が出会って、曲になって、それを聴く人がいて、
「昔のフレデリック」ではなく「今のフレデリック」だからこそ生まれる、一音一音が粒になって拡散していくようなイメージが湧いてきてしまう、そんなライブでした。

春がやってくると、健司さんはギターを下ろしてマイクを手にします。


「これまで、たくさんの出会いをしてきて、それと同じくらい多くの別れも繰り返してきたけれど、
その別れを、切り離してしまうんじゃなく、僕らはその全部を背負って歩いていきます」


その言葉は、SEASON1『夜にロックを聴いてしまったら編』のMCと似ているようで少し違う、大切な意味が加えられているように感じました。
(https://note.mu/mos_cosmo/n/n787168b54623?magazine_key=m28241e570efb
『FREDERHYTHM TOUR 2019 season1『夜にロックを聴いてしまったら』ライブレポ)


その言葉が具体的に込められていたわけではないけれど、
フレデリックの『覚悟』のようなものを、その健司さんの言葉から強く感じました。


最後の曲は、
『対価』です。

音源よりもずっと、名残惜しそうに伸びるフレーズの尾が、より強く『別れ』の存在を照らしていきます。最小限の楽器の音が、健司さんの歌声を扇ぐような曲を最後に持ってくる、というのは確かに「今のフレデリック」なのだな、と思いました。
健司さんの歌声から、ダイレクトに響く歌詞に、
悲しい、寂しいよりも先に溢れた涙が、会場を濡らしていきました。


『最後の季節が
最後の光が
最後のドラマが
最後の想いが
最後の世界が
君の名前を呼ぶ対価』


そう健司さんが歌う間、一度だけアカペラのようになるフレーズがあって、
引き算で増す感情の丈の大きさを、強く感じました。照明も、煌びやかなものではなく、シンプルな4つのスポットが4人を照らします。

そのアカペラになる瞬間だけ、健司さんに絞られる照明の景色は、きっとずっと忘れられないのだろうな、と今になるとそう思います。


「ありがとうございました」

健司さんがそう言って、お辞儀をして3人も続けてお辞儀をします。
その日のMCで康司さんに「名古屋のお客さんは、拍手が上手で気持ちいい」とのお褒めの言葉をいただいた会場のお客さんは、その日一番の大きくて長い拍手をフレデリックに送ります。

顔を上げた彼らはやっぱり笑顔で、鳴り止まない拍手がその理由だといいな、と思いながら、私も精一杯の拍手を送りました。


余談ですが、出来心で、4年前のセットリストを調べてみたところ、4年前のツアーの最後の曲は『ハローグッバイ』だったそうです。
「昔のフレデリック」も「今のフレデリック」も、出会いと別れを背負って歩んでいくという確固たる意思は変わらないのだな、とライブが終わってからも、改めて感じることができました。



4人が去ってからもしばらく拍手が続いて、そして、暗転していた照明が点灯して、終演します。
照明が戻ってからも、誰も何も言えず、足を動かせない状態が、きっと3秒ほど続いていたのですが、体感的には随分長くそれが続いていたような気がします。

「曲と曲の間も、ちゃんと考えてセットリストを組んでいるんですよ」

といつか、そう仰っていたと記憶していますが、とうとう終演後のお客さんの足を止めてしまうなんて、と。フレデリックにいいように操られてしまうのは、今も昔も変わらないなと、これを書いている今そう思います。



熱気のまま会場を出ると、開場前よりは弱くなったものの、シトシトと雨が降り続いていました。
その日、私は傘を持っていなくて、帰りにコンビニでビニール傘を買ってからホテルに戻ることもできたけれど、そうしなかったのは、その雨も含めて『フレデリズム』を感じてしまっていたからだろうな、と思います。


SEASON1の『春のフレデリズム』
SEASON2の『雨のフレデリズム』

次はどんなフレデリズムを感じられるのか、もう今から待ち遠しいような気がしてしまいます。


が!

SEASON3のチケットを私は持っていないので(これを書いているのは7/7)!
皆様のレポを心待ちにしております…!

フレデリズムツアー2019 season2ライブレポ、これにて終了と相成ります。

長々と、長々と、読んでいただきありがとうございました!
頑張って書いたので、感想聞かせてね♡



TEXT DĀ








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