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勝ち目はどこに?

若い頃は、漫画の目利きを自認していたので、お気に入りの作品がアニメ化されると、勝ち誇ったように
「ほーら、やっぱり、わたしって見るあるぅ!」
などと呑気に思っていた。

当時は掲載媒体も今より少なく(そもそもインターネットがなかったので、日の目を浴びずに埋もれていた作家や作品も多かったと思う)、その気になりさえすれば、全ての作品に目を通すことが可能な時代だったし、テレビのアニメ枠自体が少なかったのだから、そりゃ、誰でも簡単に予想ができたことだろう。
「これだけ売れてれば、アニメ化されるね」
と。

ところが最近は、これが逆転してきて、ドラマ化、アニメ化されてから、知らなかった作品の魅力に気付かされることが増えた。

「宝石の国」しかり。
「メイドインアビス」しかり。
「魔法使いの嫁」しかり。

他にも数えきれないくらい、テレビアニメから入った漫画作品がある。

最近では、「葬送のフリーレン」がそうだ。

私はゲームをしないので、エルフ、ドワーフと言った単語や、僧侶、勇者、前衛、魔法使いという役割に、全く馴染みがない。
ゲームの世界観は、なんとなく聞き知っているので、かろうじてわかるというレベル。
そんな私程度の知識でも、すんなり物語に入っていけてしまう。
導入が上手いのだ。

魔王を退治して故国に戻った勇者一行が、「その後もみんな、幸せに暮らしました」で終わらないだろうことは、昔話のお姫様のハッピーエンドと同じだ。
「もし、ゲームの世界がリアルと地続きなら、登場人物たちは、ハッピーエンド後の世界でどう生きるのか?」

非日常の「冒険」にはある程度のパターンが予測できても、「冒険後」の日常については、想像の余地があり過ぎるほどある。
「葬送のフリーレン」は、その展開を無限に広げられる「冒険終了後の世界」という設定を思いついたところが、まずすごい。
そこにもってきて、人の100倍以上生きるエルフという種族が、主人公のフリーレンなのだ。
面白くならないはずがない。

「いやもう、どうやって勝てばいいの?」
と思う。

ストーリーがもともと興味深いところに持ってきて、世界観を完璧に再現する背景の絵の素晴らしさ。
現実には、あり得ない美しさを見せてくれる驚異的彩色技術。
キャラクターたちのスムーズな動きや、微妙な表情にまで気を配った作画。
もともとこんな人がいたのだと、自然に思わせてしまう声優陣の演技。
シーンを彩るBGMが、とんでもなく作品にマッチしていて、どこをとっても文句のつけようがない。

ひとことで言うなら「面白いから、見ろ」なのである。

こんな化け物作品が、あちこちにゴロゴロしているのが現代なのだ。
撮り溜めたエンタメコンンツの消費だけで、休日が終わっていく人だっているに違いない。

そんな優れたコンテンツだらけの世の中で、個人がちまちまと書いているnoteなんて、どうやったら人様の目に留まるのだろう?

いや、そもそもライターという、コンテンツメイカーには、未来はあるのだろうか?
私は、ここでも、何もできないまま、年をとり死んでいくのではないか?

面白い作品に出会い、幸せに浸るたび、同じくらい未来を悲観している私がいる。
いや、悲観するのは別に構わない。
構わないんだけれど、「どうやったら勝てるか?」という問いを持ち続け、自分なりの答えを導き出していける人が生き残っていくところなんだろうなと、腹を括っておく必要はある。

はぁ。
とは言え、今のところ、全然勝てる気がしない。

**連続投稿608日目**

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