赤ちゃんはいいなあ!
昨年、人生初のなまウミウシを目撃してから、海の中の多種多様な生き物、特にその造形に心奪われることが多くなった。
海にはたくさんの生き物がいるけれど、私がその名前を覚えてきたのは、たいてい、食べられるものと、毒のあるものだ。
役に立つものと、近づいてはいけないもの。
海でも山でも、だいたいその2つのカテゴリーに属するものを知っていれば、死なずにいられる。たぶん。
なので、食べられないもの、毒がないものに関しては、覚えようという気持ちも特になかった。
ところが、敦賀に来て海の中で目にするものが、やたらと美しく、
「なにこれ、きれい!」
「なにこれ、すてき!」
の連続であり、ちゃんと名前で呼んであげたくなってしまった。
そうなると、どんな生き物なのか、その生態も知りたいと思うようになる。
けれど、分類の知識がないので、何を手掛かりにすればいいのかがそもそもわからない。
Google先生も、そんなに何でもご存じなわけではなさそうだ。
この、「ケヤリムシ」に関しては、運よくGoogleレンズが教えてくれた候補に挙がってきたので、たぶん、これだとわかったのだが、上の「黒に黄色の点々がついている生き物」の写真は、動物なのか植物なのかすらわからない。
いや、ケヤリムシだって、名前を聞いただけでは、どんな生態なのか、何の仲間なのか、まったくわからない。
分類を調べてもわからなかった。
ケヤリムシの分類を「界門綱目科属種」を正確に記載してみると、こうなるのだが、これだけ読んで、どんな生き物なのかピンと来る人はいるのだろうか?
私は「環形動物」のあたりで「え?ミミズの仲間?」と思った。
あまりに形状が違いすぎて、どこをどう見たら「ケヤリムシ」と「ミミズ」が大きなグループに分類されるのかわからなかった。
パッと見は、イソギンチャクじゃないか、これ。
ところが、実はケヤリムシの本体は、もっと下の方に隠れていて、細長い筒状なのだそうだ。
ひらひらしているのは、羽根のような触手(鰓冠)であり、ここで餌をとっているらしい。
釣りえさのゴカイの仲間のうち、移動するのをやめて、岩にくっついて生活するようになったのがケヤリムシなのだそうだ。へえ!
そう説明されれば、みみずの仲間であっている気がする。
こんなふうに、海には「へえ!」が満ち溢れている。
けれど、そこに新鮮な驚きと発見があるのは、私が海のビギナーだからだ。
何も知らないからこそ、楽しいのである。
その証拠に、海のおじさんたちは、私がウミウシの写真を撮っていると、
「そんなもの、何が珍しいのかねえ」
と首をかしげている。
日常に当たり前にあるものは、その美しさも、面白さも発見できないのである。
ということは、だ。
陸にあるいろんな木や草や石も、何も知らずに見たら、「なんじゃこりゃああ!!」と、絶対面白いのだろう。
赤ちゃんの目と、赤ちゃんの脳で、もう一度世界を見直せたら、毎日、大発見の連続で、ワクワクがとまらないんだろうな。
赤ちゃんがうらやましい。
これから、あらゆることを、自分で見て触って、知る冒険を始められるのだから。
赤ちゃんたちの冒険を邪魔しないように、できるだけ、何も知らないふりして、一緒に驚ける私でいたいな、と思う。
**連続投稿175日目**
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