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松山スーパー主夫道

今日まで知らなかったのだが、我が家には歩いて行ける範囲に、5軒ものスーパーマーケットがある。
そのうち3軒までは、利用したことがある店舗だったのだが、残る2軒をたまたま夕方の散歩中に発見した。
「これはすごい!」と帰宅後、勢い込んで夫に教えてあげようとすると、手のひらで遮られた。

「今さら、何を言ってるんだ? 俺が毎日、その全てを周り、パーフェクトな買い物をしているのを、まさか知らなかったのか?」

……知らなかった。
パーフェクトな買い物とは、どんなことを指すのだろう?

「教えてほしいか? パーフェクトな買い物とは、だな」

長くなるようならまた今度、と言おうとしたのだが、その間もなく、夫の「松山主夫道」の講義が始まってしまった。

「まず、近場の南から北に向かって、5軒のスーパーを順にハシゴしていく。この時、行きは何も買わず、商品の値段を見るだけだ。買い物メモは予め、家で作って持っていくので、そこにリストアップされた商品だけ、その日の価格を頭に入れていく」

買い物メモは、夕飯の材料であることが多い。
主に生鮮食料、たまに調味料と、日用雑貨の補充が買い物の主な目的だ。
夫は、私と違ってよそ見をしないので、変な新商品や美味しそうなおやつに心を動かされることなく、狙った商品だけを次々見て周り、カメラアイで値段を脳にインプットしていくらしい。

「最後のスーパーを1周したら、その日の買い物リストにある品を、どこで買うのが1番安上がりかわかるように脳内エクセルでソートをかけておく。あとは、その情報に従って、帰りは北から南へ逆ルートで、スーパーを周り必要な品を買って帰る、というわけだ」

すごい!
すごいんだけど、脳内エクセルって何?

「パソコンの1画面分くらいのエクセルのシートなら、頭の中で自由に動かせるだろ?」

そんなこと、できる人いないと思う。

「目の前にいるだろうが」

じゃあさ、例えばオートミールみたいに、一袋の容量がメーカーごとにまちまちのものは、どうするの?
500g498円と800g 788円なら、どっちがお得か瞬時に判断できるの?

「暗算で100gあたりの値段に変換して、エクセルに入れておく」

その暗算をしてる間に、脳内エクセルに入れた金額は消えちゃわないの?

「なんで消えるんだ? 保存しとけばいいだろう」

保存?
どうやって?

「保存すると思えば、保存できる」

………。
なんというか、これは、「パーフェクトな買い物」以前の問題だ。
うちの夫は、ヒトではなく、C3POみたいなものなんだろう。

真似できそうなら、夫亡き後、真似しようかと思ったが、これは私には無理だ。
何しろ、相手はC3PO、絶対、私の方が先に死ぬ。
大人しく、夫のスーパー主夫っぷりを、讃えて暮らそうと思う。

それにしても1つ謎なのが「脳内エクセルに予め買い物リストを入れておけば、手書きの買い物メモは要らないんじゃないか」という点だ。
夫によると、そこだけはなぜか、手書きメモが無いと、買い忘れが発生するらしい。
一体どういう仕組みになっているだろう。
メモが、何かしらのトリガーになっているのだろうか。

自分と他人がこんなにも違う生き物だということを、日々、夫から学んでいる。


**連続投稿710日目**

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