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真夜中のAmazonでアジフライを買う

今日、Amazonからアジングロッドが届いた。

アジングロッドとは、ルアー(疑似餌)でアジを釣るのに特化した、軽くて操作性の良い竿のことだ。届いたと言っても、別にAmazonからのプレゼントではなく、私が自分で買ったものである。

先ほど開封し、竿を振ってみて、じーーんとしてしまった。
ロッドの性能が素晴らしくて感動した、という訳ではない。
これを自分で買ったのだ、というところにしみじみしてしまったのだ。

昨年、冬がきて納竿した時、思った。
「来年は、自分で稼いでもっといい竿が欲しいな。右手一本で振れるくらい軽くて、魚のアタリがよくわかって、遠くに飛ばせるやつ」
けれど、長らく、主婦のお小遣い程度の稼ぎしかなくて、なかなか自分の趣味にお金を費やせなかった身としては、貯金が減るのが怖い。
「使ったら、また稼げばいいんだよ」
と口では言ってみても、本当にまた稼げるのかどうかは、運次第なところもある。どこにも所属せず働くとは、そういうことだ。

そこで、貯金の目標額を設定した。これをクリアしたら、竿を買ってもよし、という金額を決めたのだ。要は、自分を鼓舞するためのものである。数字に大した意味はない。

ところが、冬の間、締め切りがタイトな仕事が何本もやってきて、てんてこ舞いで書きまくっていたら、春が来る前に目標額に到達してしまった。びっくり。これで買えちゃうじゃないか。

釣具屋さんに行くたびに、どれがいいかなと、にっこにこで竿を物色していたのが5月のこと。
でも、いざレジに持っていこうとすると
「棒と糸とハリとおもりさえあれば釣りはできるのに、竿に1万円も出すなんて、もったいなくないか? 今ある竿だって、まだ使えるのに」
というケチな気持ちが、むくむく湧いてきてしまって買えない。
財布を握りしめ釣具屋さんの戸をくぐり、結局、諭吉さんとの別れがつらくて一緒に帰宅する日が続いた。
その間も、しょっちゅう釣りには行っていて、
「竿が重い」
「アタリがわかりにくい」
とぶつぶつ文句を言っている私もいるのに、である。

ーーへいへい、どうしたいんだい、私?
せっかく引き出したお金を、使わないでお財布に入れて置いたら、いつの間にか生活費に消えちゃうよ?
ーーうん、あのね。いい竿が欲しい気持ちはすごくあるのよ。
この趣味にお金を使えない、けちけちした私がとっても邪魔なのよ。

そこで考えた。
「私がけち臭くなく買い物ができる時とは、どんな時なのか?」
答えは、よる、真夜中のAmazon徘徊中だ。ド深夜こそが、一番脳のリミッターが外れて、景気良く買い物ができる時間帯なのである。

よし、Amazonだ。Amazonで買おう。
昼間のうちに、冷静にスペックと価格を検討し、型落ちして安くなっているアジングロッドを買い物かごに入れる。
あとは、夜中に「レジに進む」ボタンを押せばいいだけだ。

こうして準備万端で夜を待ち、私はアジングロッドを手に入れることができたのだった。

そんな心理的苦難の旅路を歩いて、手に入れた竿なので、ありがたさもひとしおである。早く海に行って試したい。しかし、敦賀もついに梅雨入りしたようで、天気予報はすっきりしない。
いつ試せるかなあ。早く大きなアジを釣りたい。頭の中はもう、タルタルソースをかけたアジフライでいっぱいだ。

私がAmazonで買ったのは、竿ではなくアジフライだったのかもしれない。

**連続投稿130日目**

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