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敦賀だより14 日本海に来て海の楽しさを知った話

敦賀に来てからずいぶん海と仲良しになった。

神奈川にいた頃も年に1,2回は海に行く機会があって三浦や伊豆の美しい海を堪能していたのだが、こちらに来てからは何しろ泳げる海までバイクで15分、ちょっと遠出しても30分なので、多いと週に二回くらい海に行っている。
釣りに行くときもあれば、潜りに行くときもあれば、ただ写真を撮りに行くこともある。とにかく夏の間は生活の中に海がある。

今年初めての海水浴は、ここだった。

船で渡らなくてはいけない海水浴場。

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敦賀市内の海水浴場はメジャーな気比の松原をはじめ、どこもクローズしているのかと思ったら、ここは渡し船もやっていた。浅瀬が続くファミリー向けの海水浴場だが、裏側は海藻の森ができていて魚もたくさんいる。透明度も高く、深いところはまるで空を飛んでいるような気持ちになれる。

ここで私は敦賀の海にドはまりした。なんてきれいな‼ 日本海すごい。

しばらくスマホで生き物の写真を撮っていたが、海中の様子を撮ろうとしてもピントが合わないしタイミングを外すしで、捕まえて撮影するしかなかった。

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ある日、不思議な海藻を見つけた。それは海中で見るとモルフォ蝶のように青や紫の美しい色彩を見せてくれるのに、海から引き上げると薄茶色の透明な物体に変わってしまうのだ。これをきれいに撮りたいと思った。

あちこちの海に何度も出かけるうち、毎回必ずウミウシにも出会ったのも大きい。写真集と水族館以外でウミウシを見たのは生まれて初めてだ。

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可愛さと美しさにきゅんきゅんした。
海中で岩にへばりついている彼らの様子を撮りたい! で。早速中古の防水カメラを購入した。
なぜ中古で買ったのかというと、この時の私は「潜って撮影する」ことができなかったから。どうやっても沈むことができなくて、ましてや海面下で中世浮力を保って静止するなんて至難の業で、買っても宝の持ち腐れになることを考えてしまい、中古で手を打ったのだ。

「うまくなったらもっといいカメラを買えばいいし」
そううそぶいて浅瀬で会う生き物を撮影していた。

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お目当ての海藻「ヒラワツナギソウ」も岩の上でもそもそしているウミウシも撮れた。

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それでも、満足はできなかった。やっぱりもっと深く潜ってみたいし、近くで魚たちを見たい。

今年の一月にダイビングのライセンスを取っているので、タンクを担いで潜るという手もないわけではない。でもそれはめちゃくちゃお金がかかるし、何よりレベルの低い初心者がそこらの海で勝手に潜れるわけもない。やはり素潜りを練習するしかない。

覚悟を決めて、ダイバー用のウエイトとベルトを買った。おもりをつけて潜れるようにするのだ。4キロ分のウエイトを買ってみたが、だいたい2キロくらいを身に着けるといい感じに潜れることが分かった。

あとは恐怖との闘いだ。やってみるとわかるけれど、一人で海に行き暗い底を目指して潜るのはなかなかに怖いことだ。最初は足のつかないところにウエイトを着けていくだけでもこわかった。足がつったらアウトである。昔は吹奏楽をやっていて肺活量も4000㏄あったのだけれど、大人になって喘息になってからはこの半分にも届かない。1分も持たずに溺れてしまうだろう。

自分の身長くらいの深さのところで練習をはじめ、今ようやく3m潜れるようになった。5m潜れるようになることが目標だ。

木登りをしていた時にも思ったのだけれど、身近に存在していても見えないものはいくらでもある。いつもの森の樹冠には、見たことのない花が咲いているし、いつもの海の5m下には図鑑でしか見たことのない生き物が生きている。手の届かないところに美しいものがあるのだ。そこに行こう、それを見ようと思ったら相応の訓練が必要だ。怖さを無理やり押さえつけながら踏み出す勇気を絞り出さねばならない。そして、その勇気を絞り出す原動力は好奇心なのだ。

やってみたい、いってみたい、ためしてみたい。幼いころにその好奇心をサポートして成功体験に変えてもらえた人たちは次のチャレンジに向かって行ける。

私の幼少期はろくでもないと思っていたけれど、こうして進んでいけるということは、もしかするとそんなに悪いものでもなかったのかもしれないな。

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