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どうしてそんなことまで?!

引っ越し前のあれこれについては、もう、ほんとに書くのを終わりにしたいのに、ネタがあとからあとから湧いて出てくる。
ちなみに前回はこちら。

今回は、賃貸契約書に不備があり、書類が返送されてきたところから、話が始まる。
不備とは、「契約者氏名」を一か所書き漏らしていたのである。
夫の凡ミスだ。

うちの夫は、基本的に他人のすることを信用していない。
自分以外の人間は、すべて何らかのミスを犯すものだと思っている。
だから、他人への指示は異様に細かい。
今回の引っ越しにあたり、娘に賃貸契約の保証人になってもらったのだが、遠方に住んでいるため、目の前で記名や捺印をしてもらうことができず、郵送で契約書類を送った。
娘は何度も引っ越しを経験しているし、日本語がわかるんだから見りゃわかるだろうと私は思うのだが、夫は「ここをこうして、あそこをああして」と、細かいマニュアルを作って一緒に送りつけていた。
それくらい、他人の行動には、逐一目を光らせている。
なのに、肝心の自分の凡ミスで、契約書が戻ってきたのである。

私はひとこともそれを責めてないし、べつに、契約が数日遅れたところでどうってことないだろうと思っている。
だが、夫は自分のミスが許せない。
で、どうなるかというと、逆ギレするのである。

「俺は、退職に伴う手続きだけでも、ものすごく煩雑な作業が複数あって大変なのに、なぜ、お前は何もしない?」

それは、夫が「お前にはまかしちゃおけん」と、一人で抱え込んだからである。

「もう無理だ。俺のキャパを越えている。お前も何か分担しろ。引っ越し関係は、お前がやれ」

もちろん、それは構わないというか、最初から言ってくれたらよかったのに。
そんなやりとりがあって、夫が作っていた「引っ越し関連ファイル」が私に引き継がれることになった。

どれどれ、と見てみる。

1ページ目。
最初に狙っていた、松山市内の5つの戸建て物件の比較リスト。
わざわざ夫がエクセルで作って、どうだ見やすいだろうと私に見せびらかしてきたものだが、引っ越し先は無事に決まったのだから、これはもういらない。
捨てようとすると、夫が「ああっ」と声を上げた。
「捨てちゃダメなの?いらない情報が残ってると、混乱の元だから、私なら残さないけど」と私。
「せっかく作ったのに……」
理由がそれだけなら、残す意味はない。
捨てる。

2ページ目。
ゴミ捨て計画書。
粗大ゴミ、小型複合ゴミ、水銀含有ゴミなど、回収日が少ないゴミのカレンダーを、エクセルで作って「この日にこれを出す!」と赤い太字で書かれたもの。
これも、終わってるんじゃなかったっけ?
「ああっ」
捨てる。

3ページ目。
不動産屋さんが送ってくれた、管理会社や、ライフライン開通に関わる連絡先一覧。
これは大事。
絶対捨ててはダメ。

4ページ目。
これも不動産屋さんが送ってくれた、ハザードマップ。
避難場所にマーカーを引いてくれてある。
まあ、これも大事っちゃ大事かな。
たぶん、現地に案内看板があると思うので、無くても困りはしないと思う。

5ページ目。
夫のこまごましたメモ。
そのまま書き移してみると、こんなかんじ。
「靴下の整理→穴の開いたもの、片方ないものを仕分けして不要なものを捨てる」
「ワイシャツ→再就職するときにいるかもしれないので、本当は全部捨てたいところだが、少しはのこした方がいいのか?」
「スーツ→クリーニングに持って行ってからしまう」
「Tシャツ→首回りが伸びているものだけ、ウエスにする」(これは、あとから私に『捨てなさい』と言われて、追記されている)
そのほかにも、文房具のまとめ方や、ブックオフに持っていく本、寄贈する本などについて、ここまで書かなくても、現物を見たら思い出せそうなことまで、いろいろ書いてある。
あと、「俺のコタツ布団が行方不明」という謎の一文もあった。

気持ちは、わからないではない。
頭の中がごちゃごちゃしているときは、書いて、並べて、見えるようにして、すっきりしたい。
それは、わかる。
でも、ここまで必要か?
項目だけもわかるよね?
例えば「靴下整理」とか「スーツクリーニング」だけでよくない?

元をたどれば、私が夫の面倒を一切見ないから、引っ越し前にこんなこまごました作業をしなければならなくなったのだろうから、あんまりごちゃごちゃ言うと私に矢が跳ね返ってくるので言いたくないが。
それでも、こんなに事細かに書く必要があるのか?と思う。
どこに何の情報があるのか、文章で書かれていると、最初から読まないとわからない。
箇条書きでいいんじゃないの?
そして、こんなしょうもないことまで把握しようと、全部書き出しているから、肝心なところを書き漏らすのでは?

夫は、昨日、速達で契約書を送り、「あとは任せた」と言いながら、今日も進捗の報告を求めてくる。

この人、本当に60歳で定年退職を選んで正解だったと思う。
こんなおじさんが、あと5年も会社に居座っていたら、周りが大変だったことだろう。
この細かさが、役に立った場面もたくさんあったと思うけれど(というか、雑な私よりは、はるかに役に立ったのだと思うけれど)、口うるさい上司に辟易していた皆さんは、今頃、祝杯をあげていることだろう。

私の祝杯は、いつあがるのだろうか。

**連続投稿605日目**

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