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シルバーパソコン奮闘記
毎日、夫のネタを書いている気がするが、他に会う人もいないので、仕方ない。
今日も夫の話だ。
夫はこれまで、会社に支給されたパソコンを使っており、自分でパソコンを買ったことがない。
全てのセットアップが完了した状態で、「さあ、どうぞ」と渡されたものを粛々と使っていたわけだ。
そんな彼が、退職に伴いパソコンを会社に返却することになった。
調べ物くらいなら、スマホでもできるが、文書作成、表計算などは、さすがにパソコンが無いと辛い。
夫は、生まれて初めて、自前でパソコンを買うことになった。
嫌な予感しかしない。
なぜなら夫は、全てを完璧に把握してからでないと、先に進めない人だからだ。
テキトーな私とは正反対なのである。
そんな夫が、今日の午前中、電器店でこれぞと思うパソコンを買って帰ってきた。
事前に「今、買うならこれくらいのスペックが必要だ」という情報をネットで調べあげ、その条件に当てはまる中で最安値のものを、店舗を3軒ハシゴして見つけたノートパソコンである。
この根性がまずすごい。
私は気温が30℃もある中、数キロ離れた店舗を自転車で3軒もハシゴできない。
こういうところは、本当に尊敬する。
帰宅した彼は言った。
「店の人がさ、セットアップはどうなさいますか?って聞くんだけどさ、こっちはセットアップって、なんのことだか、まずそこからわからないのに、説明しやがらないんだよな」
ふんふん。
「で、わかんないのに続けるわけだ。『店頭でのセットアップは、20000円で承っております。ご自宅へ出張セットアップに伺う場合は、40000円になります』だって」
それはいい商売だ。
ぜひ、私がやりたい。
「で、まあ、お前もいるし、なんとかなるだろうと思って、断って帰ってきたんだ」
ほーら、当たった、嫌な予感。
全部の設定を、私がテキトーに済ませていいなら、使える状態にするのは簡単だ。
たぶん1時間もあれば終わるだろう。
しかし、そうはいかない。
夫は、知らない単語が出てくるたびに
「これは何?」
「これはどういうこと?」
と三歳児のように、質問を飛ばしまくってくるのだ。
「PINが何か」なんて、私だって知らない。
知らなくてもパソコンは動くし、特に困ってないから、調べたこともない。
なのに、彼はそこに引っかかると、自分が理解できるまで、テコでも進もうとしない。
それに、困ったことに、このパソコンには中途半端なマニュアルが付属している。
中途半端とは、どういうことかというと「これくらい説明しなくてもわかるだろう」と思われる画面は、平気ですっ飛ばしている、ということだ。
夫は、マニュアル通りにひとつひとつ手順を進め、次の画面に遷移した時、それがマニュアルに載っていない画面だとパニックになった。
「おい!こんな画面、マニュアルには無いんだが、何か俺が間違ってるのか?」
別室で引っ越しのための荷物整理をしている私のところへ、顔色を変えて飛んでくる。
私が気にせず【次へ】ボタンを押すと、マニュアルと同じ画面が出てくるのだが、夫にはそれが許せない。
「なんで必要な画面を載せてないんだ?!こんな不親切なマニュアルじゃあ、初心者にはわかんないだろ!」
1人でプンプン怒っている。
天気もいいし、海に行こうかと思っていたのに、結局、付ききりでサポートしていたため、何もできなかった。
出張セットアップ料金を請求したい。
ネットを使えるようにし、Google Chromをインストールし、Gmailを使えるようにし、Microsoft Officeのユーザー登録をし……。
こんな簡単なことに、4時間近く費やしてしまった。
ことパソコンに関して、私には「わからないところで立ち止まる」という選択肢はない。
わからなくても、テキトーに触っていれば、使えるようにはなる、と経験的に知っているし、実際、それで困った事態に陥ったことはない。
圧倒的にこっちの方が早いと思っている。
「わからなければ、進め。やってみてから考えろ」が基本方針なのである。
対して夫は「石橋を叩いて渡る」どころか、石橋の設計者の経歴や、図面の細部まで確認したいタイプだ。
「わからなければ、止まって、わかるまで調べろ」がモットー。
「わからなければ止まれ」vs「わからなければ進め」の凸凹な2人が、よく夫婦を続けてこれたものだなあと、こういうことがあるたびに、しみじみと思うのである。
**連続投稿590日目**
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。 サポートは、お年玉みたいなものだと思ってますので、甘やかさず、年一くらいにしておいてください。精進します。