見出し画像

杉津・続報(2)海の中も見てきました

今日も杉津に行ってきた。
前回と違うのは、8号線の復旧作業が終わり、交通規制が解かれ、車があふれていたことだ。
対向車線にも多くの車が流れており、海沿いのこの道が幹線道路であることを実感する。
わずか5日で、土砂崩れで寸断されていた道路を復旧させてしまう、日本の土木建設業の底力を見せてもらった気がした。

20220年8月10日に見たもの

比較のために、前回の写真と似たようなショットを並べながら報告していこう。

2022年8月6日撮影
2022年8月10日撮影

遠目にも重機が2台、作業しているのがわかる。

2022年8月6日撮影
2022年8月10日撮影

「かずや」のおじさんの小屋の前を流れていた泥の川が、埋め戻されて消えている。
砂の色が違うのは、海から掘ってきた砂だからだろうか。

2022年8月6日撮影
2022年8月10日撮影

横から見るとこう。川はすっかりなくなり、小屋の前の断崖も消えて、安心して歩けるようになっている。

2022年8月6日撮影
2022年8月10日撮影

なぜこんなに早く復旧が進んだのか?

土石流によって運ばれ河口をふさいでいた大岩や生木は、重機によって片づけられ、海までの水路ができている。

6日に杉津を見に行った時、私はこう書いた。

(何しろ、福井県内では、土砂崩れで埋もれた幹線道路や、洪水の被害に遭った今庄地区など、被災箇所が多く、おそらく今は手一杯なのだろう。いつになるかは、本当にわからない)

杉津を襲った120年に一度の大水害

実際、敦賀の市会議員さんの見解も同様で、どうしても緊急度の高いところから復旧が始まるので、杉津に予算がつくのは、あとになるだろうとのことだった。
では、なぜこんなに早く、重機が来てくれたのだろう?

これは、「災害の応急対策」と言われる、「災害対策基本法」に基づく措置らしい。

災害時にあるいは災害の発生が差し迫ったとき,緊急に被害の発生を防ぎそれを最小限にとどめるための種々の応急活動が,また,災害後には被災者に対する救援活動などが,地方自治体・防災関係機関・住民などによって実施されます。

防災基礎講座「自然災害をどのように防ぐか」
同上

どういうことか。
今回、大毛谷川(おもけだにかわ)では土石流が発生したにもかかわらず、杉津の人的被害はなかった。家も流されていないし、誰もケガもしていない。不幸中の幸いである。
けれど、この「河口をふさぐ石」をそのままにしておいた場合、さらに雨が降ったり台風が来たりしたとき、杉津集落の安全が守られるとは言い難い。
そこで、河川の氾濫防止、集落への浸水阻止のため、応急対策として重機が岩や生木を撤去しに来てくれたのである。

ただ、この応急対策は、本当に「応急措置」なので、ここまでしかできないらしい。
海に沈んだ大量の土砂をかき出して、砂浜を元に戻すところまでは、守備範囲外なのだそうだ。
だから、この先は手出しできない。
予算がついていないから。

しかし、パワーショベルを操作しているお兄さんたちは、「かずや」のおじさんの、今にも倒れそうな小屋を見てしまったのに、見ないふりはできなかった。
本来、そこまでやらなくてもいいのに、「かずや」のおじさんの小屋の前までは、きっちり砂を盛って危なくないようにしてくれたのだ。

だから、小屋の前が歩けるようになっていたのか。
うーん、お兄さんたち、なんていい人たちなんだ!!

海の中はどうなっていたか?

せっかく来たのだから、海にも当然入る。
おじさんは
「こんな海に入るのか、モノ好きだなあ」
と言っていたけれど、ちがう。調査なのだ、調査。
本当に魚も、ウミウシも、サザエもみんないなくなってしまったのか、ちゃんと確かめないと。
すっかり遠浅になってしまった浜から、ゆっくりと海に入ってみた。

予想通り、大量の土砂が流入し、海藻は砂を被って泥色になっている。視界も1m先が見えないほど悪い。

けれど、魚はいないわけではない、というか、むしろ、濁りがあるので、大きな魚たちが安心して沖から寄ってきている気がする。
素早すぎて写真が撮れなかったが、尺超えのクロダイが、物陰から出てきて私にぶつかりそうになったりした。
山からは、大量の土砂と一緒に有機物も流れ込んでいるのだろう。プランクトンたちは今頃、「大漁だ」と大喜びしているのではないだろうか。

海藻に積もった土を払っていると、緑の陰に何か生き物がいる。
こんな視界の悪い海の中でも、ちゃんとアメフラシたちは生きていた。
嵐の中を、大変だったねえ、よく頑張ったね、と抱きしめたくなる。
(潰れます、やってはダメ)

そして、こんな海なのに、私とは初顔合わせの新顔ウミウシにも出会えてしまった。
ヒカリウミウシ。動画からの切り抜きなので、画質が荒くて申し訳ない。
でも、1㎝にも満たないこの子が、なんだか希望を持ってきてくれたような気がする。
生き物がいなくなったなんて、そんなことはない。
復旧に何年もかかるなんて、そんなことはない。
きっと、大丈夫、きっとうまくいく。

ヒカリウミウシ

これからのこと

まずは、これをどうするか、だと思う。

山から転がり落ちてきたこの大岩たちは、ダンプで撤去するのかと思っていたら、そうではないらしい。
この先、予算が付いたら、大毛谷川の河川改修工事が始まるのだが、その護岸用に使えそうな岩をここから選別して使うと聞いた。
だから、しばらくは、この殺風景な状態が続くのだろう。

「かずや」のおじさんは、思ったより早く釣りボートのレンタルを再開できそうだと言っていたけれど、肝心のボートは、半分が使い物にならないらしい。
いよいよとなったら、「杉津の貸しボート屋『かずや』さんを救え」というクラウドファンディングだろうか。

近々、嶺南ケーブルネットワークの取材が杉津に入ることになった。
区長さんが、私の知らないことも、教えてくれると思うので、杉津に関心を寄せてくださる方は、そちらをぜひご覧いただけると嬉しい。
放映日がわかったら、また、こちらでお知らせするつもりだ。

**連続投稿192日目**

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。 サポートは、お年玉みたいなものだと思ってますので、甘やかさず、年一くらいにしておいてください。精進します。