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迷子になりに行く

生まれた時から、そこに住んでいる人にとっては、なんの価値も感じられないものなのだろうけれど、やっぱり自然ってすごい。
冬の後には、ぶわあああっとすごい勢いで春が来る。

今日は、ちょっと遠くの歯医者に行かねばならず、午後からバイクで出かけた。
月曜に免許の更新に出かけた時は、ダウンを着込んでいても寒かったのに、今日は、上着がなくても快適な気温だった。
ぽかぽか陽気に気分がよくなった私は、歯医者のあと、迷子になることにした。

バイクに乗るようになってから、よく、この迷子遊びをする。
ルールは簡単で、以下の3つを守るだけだ。

①スマホの地図アプリは見ない
②道が複数に分岐したら、通ったことのないほうへ行く
③いずれも知らない道ばかりなら、より人の気配がない方へ行く

たどり着いた先で、気に入った景色を見つけたら写真を撮り、次の知らないポイントへ向かう。
簡単な遊びだけれど、バイクの機動力と小回りのききやすさがあるからできる遊びだと思う。
車だと、入るのにためらう細い道もどんどん進めるし、帰りの体力を気にせずにどこまでも行けるのが、自転車より有利なところだ。

ルールに従って進んだら、最初はこんなところに出た。
釣りのうまい人なら、イワナやヤマメに出会えるであろう、美しい渓流。
本当はこの先にも林道が続いていたのだけれど、工事中で入れなかったので諦めて引き返してきた。

シーズンを逃してしまった感が否めないが、おそらくこのあたり、山菜の宝庫だろう。
昨年知っていたら……、とちょっと悔しかった。

その次に出たのは、山裾の水を張った田んぼ。
湖のように美しく見えるのは、ちょっとしたトリック。
写真の上下を逆さにしてあるのだ。

同様に、野坂岳が噴火しているように見えないかな、と「逆さ野坂」を撮ってみたけれど、これはうまくいかなかった。
少しでも風があると、鏡のようにならないのでむつかしい。

まだ水を張っていない田んぼには、カラスノエンドウの花が咲いていていた。
あっちもこっちも、春だらけだった。

思い返してみると、敦賀の地理は、こうやって頭に入れてきた。
外食やショッピングをしない私は、街中に目的を持って出かけることが少なく、ふらりと郊外に出かけることの方が圧倒的に多かった。
最初は、どの方角を見ても、似たような山しか見えなくて、本物の迷子になっては、地図アプリに頼った。
けれど、今は、本気で迷子になろうと思ったら、相当遠出しないと難しい。
迷っても、山の形で方角を区別できるようになってから、確実に帰宅できるようになった。
敦賀は、私の一部になったと思う。

「ずっといるわけじゃないから」と、意識して人のつながりを作らないようにしてきたけれど、土地とはちゃんとつながれた気がする。
次はどうだろう。
たぶん、バイクがある限り、同じように探検して仲良くなっていくのだろうな。
できれば、次の町でも、その土地を愛し愛されたい。

**連続投稿441日目**

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