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泊まったホテルの狭さ記録を更新してみてわかったこと

これまで、私はホテルに「眠る」「トイレを使う」「風呂に入る」「スマホを充電する」以外の機能を求めようとは、あまり思わなかった。
旅行というのは、起きて活動している時間帯が旅行であり、夜中はどうせ寝てるだけだからどうでもいい、と考えていたのである。

豪華なホテルにも泊まったことはあるが、広くて落ち着かない。
座って半畳寝て一畳あれば事足りるのに、ひとりでベッドが三つもある部屋に通されても、三つのベッドすべてで眠らなくちゃいけない気分になって、おちおち寝ていられない。
過剰な広さやサービスは、かえって居心地悪がいのだ。
適度な狭さと、放っておいてもらえる環境が無いと、しんどい。
仲居さんが部屋に入ってくるだけで、人見知りが発動して動悸が速くなる。

なので、私が宿泊するホテルは、安宿が多く、当たり前にトラブルも多い。
トイレの電球が切れていて点かない、とか。
風呂の排水口から、ずっと生臭いにおいが上がってくる、とか。
部屋の備え付けのドライヤーが、冷風しか出ない、とか。
エアコンの音が異様にうるさい、とか。

そんなのは、仲居さんが食事を運んでくることに比べたら、全然どうってことないので、特にクレームを言ったこともない。

これまでの一泊当たりの最低価格は、コロナ禍で移動の制限があった頃の、京都のバッグパッカー御用達ホテルだ。
ここは、素泊まり一泊1880円だった。

眠るときは、ちゃぶ台をたたんで、自分で布団を敷いて寝る。
マットレスが沈みすぎて、朝起きたら腰が痛かった、というのがこのホテルの唯一の欠点だったが、それ以外は、女性専用でシャワールームもきれいだったし、部屋にカギもついていたし、特に問題はなかった。
むしろ、1880円でこれなら、御の字だと思った。

今回、上京した際に、どうしても池袋のガチ中華を食べに行きたくて、最寄りで安そうなところを探したら、初めてカプセルホテルに泊まることになった。
こちらは、素泊まり一泊3200円。

フロントで
「1段目が予約でいっぱいなので、2段目しか開いてないのですが、それでもいいですか?」
と確認されたのだが、なるほど、これは確認してくれないと困る人もいるだろう。
私のその日の寝床は、酔っぱらっていたら確実に落ちそうな、垂直なステップを手すりにつかまって登らなくては到達できない細長い穴倉だったのである。

外部との仕切りはカーテンだけで、鍵もないし、荷物を置いておくスペースもない。
貴重品用ロッカーは、ステップを降りて左に20歩ほど歩いたところにあるが、果たして、ここに貴重品を預けて平気なのかと不安になる、簡単にカギをこじ開けられそうなたたずまいだ。
風呂とトイレと洗面所は、共用スペースとなっており、箱型二段ベッドが50台ほど積み上がった部屋から、ドアを出た右手にある。

つまり、洗顔や歯磨きなどの、日常生活を完結させるためには、いちいち穴倉を出て、ステップを降りなくてはならない。
動線がやたらと長いのである。
布団は敷いてくれてあるが、天井が低く、立ち上がれないので、着替えるのも一苦労だ。

なるほど。
カプセルホテルとは、こういうところであったか。
眠れるし、充電もできるし、風呂もトイレもある。
だが、立てない。

スマホでnoteを書いている間に、腰が痛くなってきた。
頑張って何とか書き上げたが、自己流のストレッチをしてみてもやっぱり痛い。
立ち上がって、腰を伸ばしたい。
だが、ステップの下では、一段目の宿泊客が、荷物整理をしている。
知らない人と顔を合わせたくないので、降りたくない。
腰痛い、でも、降りたくない、早く荷物整理終わらないかな。

下の様子をうかがいながら、文庫本を読んでいたら、いつの間にか変な姿勢で寝落ちしており、起きたら、昨夜よりもっと腰が痛くなっていた。

私はこれまで、ホテルに「眠る」「トイレを使う」「風呂に入る」「スマホを充電する」以外の機能を求めようとはあまり思わなかった。
だが、今後はちがう。
「立って腰を伸ばせる」。
これも、ホテルの大事な機能だ。
次からカプセルホテルに泊まるときは、絶対、通路に立って腰が伸ばせる一段目を予約しようと思う。

**連続投稿482日目**


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