2024.1.2 NOAH有明大会メインについてのあれこれ

お久しぶりです。もるがなです。ありがたいことにここ最近は色々と感想を頂くことが増えてきたのですが、基本的にはビッグマッチ優先で、書きたくなったときに書くというスタンスであり、気分がノったときに書くようにするのが長続きの秘訣だと思っているため、楽しみにしている方には申し訳ない限りです。そんな感じでnote更新は年明けかな、と勝手に思っていたのですが、ここにきて以前から楽しみにしている夢のカードが組まれてしまったのですよ。

丸藤正道vs飯伏幸太、決定!

いやあ……飯伏幸太がNOAHに上がること自体はいずれはあるだろうとは思っていたのですが、それでも実際に姿を現したときは興奮しましたし、その対面に丸藤が立つとは。加えて、タッグで触れるだけで焦らさずにいきなりトップギアに踏み込むシングル戦決定。NOAHはこのあたりは本当に出し惜しみしないですね。このカードについては語ると長くなりますが、備忘録がてら書いていきましょう。今回は二人の歴史を振り返りつつ、ピックアップして書いていくつもりではありますが、ひょっとしたらいくつか抜けや間違いがあるかもしれません。いつも感想文ばかりでこうしたデータ優先の書き方は慣れておらず、記憶違いなどがないか毎回書くたびにヒヤヒヤしているのですが、何かあったら指摘してください。とりあえず自分と、読んでくれる奇特な人のテンションを高めるためのものだと割り切って頂けると幸いです。

丸藤正道と飯伏幸太。稀代の天才である二人の初遭遇は、2005年5月7日のNOAHとZERO-ONEの共催で行われた第二回ディファカップの一回戦。丸藤KENTAvs飯伏KUDOです。2000年の旗揚げから2005年までをノアの黄金期だと勝手に定義しているわけではありますが、盟主交代が囁かれて注目度の高かったこの時代に組まれたこともあってか、この試合で飯伏幸太の名を初めて知ったという人も多いでしょう。この時の飯伏はまだデビュー1年に満たないながらも、超新星とでも言うべき才気煥発ぶりであり、試合はKENTAに敗れはしたものの、末恐ろしい大気の片鱗を感じさせました。

二人の物語は2007年6月から7月にかけて行われたNOAHの「Summer Navigation 07」シリーズで再び動き出します。そこで日テレ杯争奪ジュニアヘビー級タッグリーグ戦が開催され、丸藤がタッグパートナーを探していることをスポーツ紙で知った飯伏が丸藤にタッグ結成を呼びかけたことで、丸藤飯伏タッグが実現します。これは惜しくもKENTA&石森に敗れ準優勝となりますが、天才同士のタッグは華やかで、また飯伏と石森の出世試合としての側面もあり、プロレスの未来に希望の持てるものでした。

続く2008年9月4日「ShinyNavig」静岡ふじさんめっせで行われた第2回日テレ杯争奪ジュニアヘビー級タッグ公式リーグ戦で、飯伏は中嶋勝彦と組んで丸藤正道&宮原健斗組とぶつかります。いやはや……これ、今見ると凄い顔触れです。この時の宮原は大抜擢でありつつもいまだ若手に過ぎず、丸藤からダメ出しされながらも連敗し続けていましたが、この時は健介オフィスの先輩である中嶋に一矢報いる形でリングアウト勝ちを収め、勝利をモノにしました。

そんな形で不世出の天才同士は惑星のように接近遭遇を繰り返しながら、後の群雄割拠の時代に名を挙げるいくつかの名レスラーが時折顔を出しつつも、夢のカードの一つとして一騎討ちの機運が高まりつつあったわけなのですよね。しかしながら運命とは残酷なものであり、実はこの二人、シングル戦の機会が二度ありつつも、その都度逃しており、丸藤vs飯伏はゼロ年代の「忘れもの」とでもいうべき幻の一戦へとなっていたわけなのです。

一度目は2009年のDDT両国初上陸の年、「Judgement 2009」でのKO-D無差別級王座戦です。この時、超大物として飯伏は丸藤の名前を出し、対戦が決定していたのですが、丸藤は右膝前十字靭帯断裂により9ヶ月間の安静を余儀なくされてしまいます。その時に丸藤の代理として出たのは石森太二でした。

二度目は2010年7月25日のDDT両国国技館大会「両国ピーターパン2010~夏休み ああ夏休み 夏休み~」で、再び飯伏vs丸藤が組まれます。元々これはBOSJでの飯伏の左肩関節脱臼の復帰戦だったわけですが、不幸なことに、怪我の悪化により今度は飯伏が欠場となってしまいます。代役はケニー・オメガとなりましたが、またしても二人の夢の対決は持ち越しになってしまいました。

二人の戦いの歴史を紐解けば分かる通り、宮原健斗や中嶋勝彦、石森太二、ケニー・オメガなど、後の飛躍に繋がる面々もいるのが面白いですよね。そういう意味でこの二人はゼロ年代以降のプロレス現代史における最重要登場人物の二人であり、全盛期を半ば過ぎつつあるこのタイミングでようやくシングル戦が実現したというのはまさにプロレスの神様による運命の悪戯でしょう。加えて二度に渡るシングル戦を逃してしまったというジンクスの打破という悲願もあります。

……そして敢えてこういう書き方をしますが若き日にかつて天才と呼ばれた男たちが、晩年に差し掛かった今このタイミングで何を見せ、何を伝えたいのか。単なるメモリアルで終わらないのか。試合のクオリティとして他に組まれたカードを超えられるのかどうか。そうした意味で若手の頃とは違った「問われる」意味もしっかりとあり、色んな意味で目の離せない試合ではあると思いますね。

個人的には昔から見たかったカードの一つであり、実現は半分諦めていたというのもあってか組まれたこと自体は季節外れのお年玉のような感じで嬉しく思いますが、語弊を恐れずはっきりと書くなら、諸々の事情を鑑みても組むのは十年遅いカードであるとも思います。双方ともネームバリューはあるとはいえ、カードそのものの神通力は通じず、以前やったオスプレイvs丸藤や、いずれ組まれるであろうことを期待されている清宮vs飯伏にはバリューでは劣っていると思うんですよね。過去の歴史を紐解く楽しみがある反面、時間軸という最重要の軸足は現代にあるとは言い難い……。故に、数多ある「これから」の未来の夢の対決に対し、過去の夢の対決であったこのカードが、知名度だけでなくかつての輝きを色褪せずに、どこまで価値を示すことができるのか。ここに注目していきたいと思っております。

しかしながら、期待と不安の入り混じったこのカードを裏付けるような運営によるメイン抜擢。では本来メインになるはずの拳王vs征矢はそんなにカードとしてダメなのか?色々と書き殴ったついでのような形で恐縮ですが、豪華な前哨戦であった拳王&人生vs藤波&征矢について語っていきましょう。今回の試合レポはこれで勘弁してください(苦笑)

○2023.12.2 神奈川・横浜武道館 NOAH THE BEST 2023

◼️スペシャルタッグマッチ
拳王&新崎人生 vs 征矢学&藤波辰爾

拳王の次期挑戦者であり、1.2の王座戦に抜擢された征矢学。ここ最近見始めた層にとってはその確かな実力こそ認めるものの、イメチェンしたとはいえいまだ根強く残る金剛イメージや対戦相手にやや軽んじられがちな傾向があることもあってか、ノアの中では2番手、3番手の雑草パワーファイター、という印象の人もいるかもしれません。しかしながら今年のN-1の中では中嶋勝彦とワグナーJr.という強豪をねじ伏せ、さらに名勝負数え歌である潮崎との決勝を賭けた激闘は記憶に新しく、真っ向勝負での粉砕と玉砕によって灼熱の夏を走り切ったわけなんですよね。脅威の突進力から上半の捻り加えて放たれる右腕の弾道と、橋本真也を彷彿とさせる左腕のジャンピングDDT。両の腕(かいな)を武器にノシ上がってきた捲土重来の怪物。それが征矢学という男です。

パワーのみなら他のレスラーにも引けを取らない。それだけでも恐ろしい話ではあるのですが、今回のタッグマッチで目を見張ったのは根底の土台にある無我イズムによるクラシカルなレスリングであり、それが師である藤波辰爾と訳あり親子のタッグを組んだことによって、改めてその側面がクローズアップされたのは素晴らしいですね。人生vs藤波という互いの師によるゲストマッチに加えて、拳王との「闘い」を感じた前哨戦。その中に基礎を見直すことによる征矢学のプロモーションと強化イベントが含まれていたことには舌を巻いてしまいました。

そしてフィニッシュとなったのはこれまた意外なドラゴンスリーパー。後年の藤波が愛用している技というのもあってか、技自体には二番手イメージが付き纏い、新技という派手さには欠けるのですが、傍に藤波がいることによって「継承者」としての部分にスポットライトが当たったと同時に、元々はネックロックでギブアップを取れる技術がある征矢だからこその説得力もあったんですよね。そしてやはり技の形状から否応なしに意識してしまうのはスカルエンド……SANADAの存在もあってか、かつての新日との対抗戦で明暗が分かれ、自身の現状の脱却にも繋がったことも想起させる……。それでいて船木直伝のスリーパーを得意としている拳王からスリーパーの類似技でギブアップを取るというこれ以上ない屈辱と意趣返し。この試合における幕引きとしてはこれ以上なくベストでした。

試合後のマイクでの男泣きを見て、拳王好きでありながら征矢に対する期待感が自身の中でストップ高になったのを感じましたね。藤波のゲキであるビンタも猪木没後を思えば非常に感じ入るものがあり、この試合単体で支持率が高くピープルズチャンピオンを欲しいままにしていた拳王に一気に同レベルに並んだと言っても過言ではないです。それぐらいの衝撃がありましたよ。今年は様々な試合がありましたが、この試合ほどに「見れば分かる!」と断言てきる試合も他にないでしょう。

そんな感じで一気にメインとして文句ない風格が出てきた拳王vs征矢学……ここにきてメイン戦でないというのは残念極まりなく、拳王の発信力ならその溜飲も下げてはくれるでしょうが、裏を返せばそれは拳王の反骨心に甘え過ぎな気もするんですよね。丸藤vs飯伏のカードも歴史的経緯を鑑みればギリ納得はできるものの、個人的な思いとしては拳王と征矢に「報われて欲しい」僕のこのカードに対する思いはそれが全てです。ただ、このままで終わるのか?そうとも思えず、やはり1.2までNOAHから目は離せないなあと。ぶっちゃけどっちも見たいですし楽しみですよ!どちらに転んでも楽しめる……プヲタというのはつくづく業の深い生き物です。







今回はこのあたりで筆を置くことにしましょう。また気が向いたら書きますが、年明けのビッグマッチは恐らく書くと思います。ではでは少しばかり早いですが、皆様よいお年を。頂いた感想は、常に励みになっております。