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新川直司という漫画家

これから、不定期に「○○という××」というタイトルで、尊敬している人物や事項について語らせていただきます。分類(マガジン)化もしましたのでお目にかかったらぜひよろしくお願いします。
さて、そんな一回目は馴染み深い漫画ジャンルについて。(本文において作家方の名前は敬称略で表記いたします)

あえての、この方

漫画というジャンルにおいては、ど王道なところでいえば「HUNTER×HUNTER」の冨樫義博であったり、過去の記事からいえば「ナナマルサンバツ」の杉基イクラでは?と思われるところがあるのですが、こちら!です。
私は生粋の漫画読みなんですが、漫画に求めていることは面白さは当然のうえで、どれだけの頻度で読めるか、とか、作品から感じる「圧」もあります。冨樫義博の作品はそりゃあ面白いのですが、密度を構成するためにどうしても時間を必要としているのか掲載頻度に難がありました。
また、杉基イクラについては、「ナナマルサンバツ」があまりにも面白いのは諸手を挙げて語りたいのですが、それでも元々コミカライズを庭としていた漫画家であり、完全新作として掲載されているのは「ナナマルサンバツ」が最初。漫画「家」として評価するのは、次の作品が当たってからでも遅くないと感じました。(偉そうでごめんなさい)
そこで、の新川直司。作者名でぴんと来ない方も「四月は君の嘘」や「さよならフットボール」「さよなら私のクラマー」の作者と言われればぴんと来る人はある程度いると思っています。

サッカー漫画のライブ感の面白さを改めて教えてくれた

最初の作品は「さよならフットボール」であり、タイトル通りのサッカー漫画。次に公表されたのは「四月は君の嘘」。学生ピアニストと、その同級生のヴァイオリニストを軸とした青春マンガ。アニメ化と実写映画化がされ、世間的な有名度はこれが一際高いでしょう! 私もここでしっかりと新川直司という漫画家を認識し、おもしれえなあ! 甘酸っぺえなあ! と読み込みました。
現在連載中なのは「さよなら私のクラマー」。「さよならフットボール」の続編であり、サッカー漫画を改めて連載しています。大ヒット作以外では、こういう続編を連載するケースって結構珍しいと思うんですよね。
それはもちろん、「キャプテン翼」とか「ドカベン」とかそういう意味では決して無いやり方ではないのですが、「さよならフットボール」は2巻完結。経緯と展開を見るに決して打ち切りではないので、「四月は君の嘘」という計算して売れる作品で市場を一締めしてから、本当にやりたかったのであろうサッカー漫画を伸び伸びと描いているのでは、そういう印象を受けました。

3作ともすごい面白いのですが、一際飛び出た能力があるのでは、と感じた部分は「ライブ感」。現在連載しているさよなら私のクラマーにおいても、読み始めた当初は「『さよならフットボール』の主人公である恩田を軸とした、いわゆる2モノなのかな?」と思っていたのですが、そうじゃなかった。毎話毎話活躍するキャラクターが続々と入れ替わり、それは主人公のチームだけではなく、相手チームのキャラクターも同列で活躍してくる。
主人公とライバル、という構図ではなく、これはもうW主人公群。そのうえサッカーなものだからイレブン同士……22人(厳密に言えばスーパーサブがそれに含まれます)が躍動感を持って活躍しあうものだから、まさに「試合を見ているライブ感」なのです。そのうえで、この作家をリスペクトたらしめてるのは、台詞とモノローグの小気味よさ。過去の記事においても、

この作者(新川直司)の台詞回し、ほんと軽快で好きなんだ! 難しい言葉回しを使わず、しかしながら読み手の心にきっちり楔を打ち込んでくる展開と台詞。「四月は君の嘘」でも見事だと思っていたそれは、より作者が書きたかったであろうサッカー漫画でさらに色濃くなっている印象です。前作「さよならフットボール」を2巻で閉じ、それでもなおサッカー漫画を描くあたり、本当にサッカーが好きなんでしょうねえ。
(2017.11.24に他媒体で執筆した「めたぽ的、2017年この漫画がスゴい! 」より引用)

と記しました。画像のような台詞とか、モノローグとか。明快で、かつ、軸が通ってる言葉回しで見ていて気持ちがいい。

画像1

(3巻より引用。魅了する台詞揃いの中でもひときわ輝く言葉回しと思っています)

もちろん他の作者の作品にあるような文学的とか難解な言葉回しとかにも面白さと奥深さがあり、そういう漫画も好きなのですが、こってりした作品のあとには淡麗な作品をたしなみたいというか(?)、そういう心持ちのなかで新川直司作品は本当に美味しくいただけるのです。

自慢でもイキリでもなく、本当に私はサッカー漫画が読めなくて、「DAYS」とか「GIANT KILLING」はおろか、あの「キャプテン翼」すら合わねえ……って切り捨てているのでほとんど何も知らないレベルなんです。でも、「さよなら私のクラマー」は読めた。女子サッカーが舞台であれどもそういう可愛さで惹きつけるような展開が軸ではなく、サッカー戦術をゴリゴリと説明なく入れてくるサッカーフリークにこそねじ込まれる漫画なので、横で戦術は勉強しつつ楽しんでいます。

もちろん、漫画家は他にも紹介したい、尊敬すべき人物はまだ数人いるので、これに関してはテーマかぶりで違う人をとりあげて書くかもしれません。
アニメ化・映画化がされる今を時めくスポーツ漫画であるとともにその作家性をぜひとも受け止めて下さい。きっと魅了されることでしょう。

※この記事は他媒体で公開したものを、再編集し、リブート公開したものです。

いずれいっぱい記事を書いた暁にでも、コーヒーでもおごってやってください……!