汎用AI実現のために必要なこと

最近AIという言葉が世間を騒がせていますが、人間のような知能を持つ「強いAI」である汎用AIはまだ実現されていません。これについて、どういったことが実現されれば汎用AIが出現し得るか考えたので、noteにまとめてみます。

現時点(2018年9月)におけるAIのできること

現時点におけるAIは下記のようなことができると認識しています。(キャッチアップできていない部分はあろうかと思いますがご容赦ください)
 ・画像の分類、言語説明(画像は動画を含む)
 ・一定のルール下での最適解探索(囲碁AIやブロック崩しをするAI、
  あるいは最適な治療法をリコメンドしてくれるAIなど)
一方で、現時点のロボットには下記のようなことができると認識しています。
 ・予めプログラムされたとおりに動く(産業用の多腕ロボなど)
現時点では、「ちょっと洗濯物畳んでおいて」といったら物干しにかかっている洗濯物を乾いていれば取り入れて、服の持ち主ごとに丁寧に畳んでおいてくれるような人間型ロボは存在しません。このギャップはどうやったら今後埋まっていくのでしょうか。

人間とはいかなる「装置」か

汎用AIの話をする前に、人間とはどういう機能をもつ「装置」であるか考えたいと思います。人間を装置と捉えるとどんなインプットとアウトプットがあるでしょうか。人間は、全身に皮膚という圧力センサー(自らを壊しかねない力は痛覚として認識)と温度センサーを兼ねた入力装置を持っており、さらに視覚(おそらく8K以上の解像度と奥行き認識可能)と嗅覚(1兆種類以上を嗅ぎ分け可能)と聴覚、味覚を持っています。また、体内や筋肉組織にも一定の感覚を想起させる機能があるため、脳にインプットされる情報量はどれだけ少なく見積もっても数十GB/s程度はあるでしょう。この情報を瞬時に処理し、全身の筋肉を操作したり言葉を考え発言したりすることができます。ちょっと途方もない情報処理装置であることがわかるかと思います。
 今のAIは、ネット上の膨大な情報をもとに、画像(視覚)と言語の紐付けには成功しています。音声情報と言語にも取り掛かっているところですね。しかし、人間の言語は、視覚だけではなく、嗅覚、味覚、触覚などともリンクしています。例えば、「りんご」という言葉でAIはりんご画像を持ってくることはできますが、りんごを食べたことがある人間は、りんごの赤さ、重み、硬さ、噛んだときの食感、甘み、切って放置すると茶色くなる、などといった5感と「りんご」という言葉がリンクしています。画像しか知らないAIだと、やはり意思疎通に限界があると思われます。

汎用AIの実現のためにはAIは「肉体」を持つ必要がある

以上を踏まえると、人間と遜色なく意思疎通できる汎用AIは肉体的情報と言語を紐つける必要があると考えられます。肉体的情報とは、圧力センサー、温度センサー、化学物質センサー、音響センサー(マイク)などです。これらの情報と言語がリンクしていないと円滑な意思疎通が難しそうです。さらに、新しい言語とこれらのセンサー情報を新たに自ら紐つける能力も人間は持っていますので、そうした能力も必要でしょう。
人間の感情情報(怒り、悲しみ、感銘、悔しさほか)をどうロボットに認識させるかは課題ですが、さしあたっては、望ましいかそうでないかの点数付けで代用するといった手段が考えられます。

複数の別種の技術の進歩により汎用AIは実現する

これまでの技術の進歩がそうであったように、汎用AIも複数の別の技術の開発が合わさって実現するものと思われます。
これまでの議論を踏まえると下記の実現に伴って汎用AIの実現が近づくと期待されます。
 1.5G、それ以降の大容量、高速通信
  演算をエッジロボットではなく、他のコンピュータで行って、結果を
  エッジロボットで出力できる。(特に画像処理について、エッジで
  取得した動画データを他のコンピュータで処理後、結果をエッジに
  返すことでエッジのエネルギー資源の制約を逃れられる)
  また、学習手法・結果の世界的な共有化も加速する。
 2.各種センサーの安価化、小型化
  圧力センサー、温度センサー、化学物質センサー、加速度センサーほか
  が小型化、安価化。ロボに多数つけられるようになる
 3.エネルギー価格の安価化(主として自然エネルギー)
  全ての物価を押し下げる。他の技術的発展を加速する。    
 4.CPUの高度化、メモリ(不揮発性)の大容量化、安価化
  大量のセンサー情報を処理できる基盤が整う
 5.量子コンピュータ、ニューロチップ等の新演算装置の安価化
  大量の情報をうまく取捨選択し、演算できる基盤が整う
そのほかにも、現在しきりに開発されている自動運転の技術(ハード、ソフトとも)もその成熟が汎用AIにつながってくるように思います。

いつごろ汎用AIは実現するか

完全に妄想レベルの持論ですが、やはり2040年代ではないかと思っています。その根拠は、上に挙げた技術が広がるのが2020年代前半~後半、それらの技術を基盤とした汎用AIへの学習が流行り始めるのが2020年代後半~2030年代、学習には実世界の時間がかかるため、なんとかものになるのが2030年代後半から2040年代前半といったざっくりしたものです。2045年のシンギュラリティというのをキーワードに、ムーアの法則に習って微細化が進んだように汎用AIが開発されていくものと思われます。

まとめ

・人間はものすごい「情報処理装置」
・AIには大量のセンサーをつけた「肉体」が必要
・AIは言語と「肉体」情報を関連付けする必要あり
・多数の別種の技術が相互につながり、汎用AIの実現に向かう
・実現は2040年代か?

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