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〈引っ越し日記6〉お金をわかろうとすれば目的地を目指すことはできる

私にとって、この引っ越しにおける大きな変化の一つは、個人事業主になったことだ。社会人になってからこれまでの約8年間、私は一度の転職を挟みながら、会社員として働いてきた。

”会社員”と言っても、新卒で就職した会社は創業と同時の入社で、最初のメンバーは私を入れて5名くらいだった。次に転職した会社も、正式な社員は私だけ。どちらも、いわゆる”地方創生”のジャンルに当たるベンチャー企業で、一般的な会社と比べると自由に動かせてもらえる環境にあった。とはいえ、会社員は会社員だ。毎月、決まった金額のお給料から、保険料や税金などをあらかじめ差し引いた金額が振り込まれていた。

恥ずかしいことだけれど、会社員だった時期(割と最近)、私は貯金がほとんど底をついた経験がある。当時のお給料は、特別に多くもなければ少なくもなく、20代後半の年齢・経験に適正な金額が支払われていた。賃貸の一人暮らしなので家賃はかかるにしても、食事はほとんど自炊をしているし、自分ではそんなに贅沢をしている感覚はなかった。なのに毎月少しずつ、しかし確実に、通帳に印字される預金額が減っていき、通帳を見るのも嫌になってきた頃、ついに預金額がいつも自分の財布に入っている現金くらいの額になっていた。給料日を迎えたばかりなのに、だ。

慌てて、普段見ることのなかったカードの明細を確認し、不正利用がないかと疑ったが、明細の内容は全て確かに私が支払ったものたちである。ならばどこに無駄遣いをしているのかと、貯金が減った理由を探ったが、支払っている額はどれも数百円や数千円の物ばかり。ただ、数百円も積み重なると、数万円にも、数十万円にもなる。

私のお金が無くなった理由は、結局、わからなかった。
贅沢をしている意識はなかった通り、これといって明確に大きな出費や支出先の偏りは見つからなかった。自分で自分のお金の使い道や、自分の貯金額の変動を「わかっていなかった」ということが、一番の理由だった。
カードの明細も見ていなければ、明細どころか金額も、窮地に立つまでは見ていないことの方が多かった。ある意味、「私は無駄遣いをする人間ではない」と自分を信頼し切っていたし、私の中で、貯金は、自分の知らないところでいつの間にか増えたり、減ったりするものだった。そして、減ることはあっても働いている限り無くなることはないだろうと思っていたし、増えたらラッキー(運任せ)だけど私の貯金が増えることはないだろうという諦めの気持ちもあった。そこには、「私は贅沢するほどのお金の余裕はない代わりに、好きな仕事と好きな生き方をやらせてもらっているのだ」という、辻褄が合わない理由で自分を諦めさせる思い込みもあった。

もしそうでなければ、無くなる前に予想を立てて出費を抑えることもできていただろうし、計画的に少しずつ貯金を増やすこともできただろうに。

わかっていないことが、一番の危険。
そう気づいてからは、出費の記録をつけるようにした。QRコード決済、カード決済、現金での支払い、全ての出費を「食費」「消耗品・日用品」「交通費」「交際費」「趣味」という、自分にとってわかりやすい項目に分けて、項目ごとに違う色のペンを使って日毎の記録をノートに書き、月末には項目ごとの1ヶ月の合計を出し、先月と比較していくら減っているか・増えているかの増減を出す。
記録は毎日書くわけではなくて、時間があるときにまとめて1週間分くらいをノートに書き出すことが多い。QRコード決済以外はレシートを財布の中にとっておいて、それを見て記録するので、レシートが溜まってきたら財布を軽くするために自然に「ノートを書こう」と思えるし、ノートを書くと財布が軽くなるので気持ちよく、もう3年ほど無理なく続いている。

そのような工夫を始めてからは、貯金額は少しずつ元に戻って、日々を安心して過ごせる程度にはなった。わかろうとせず放置していたことを、わかろうとほんの少し努力するだけで、減る動きを止めることもできるし、着実に増やすこともできる。私は、株とか投資とかNISAとかの経験もノウハウないので「何をすれば増える」ということは言えないけれど、一つ言えることは「お金をわかろうとすれば目的地を目指すことはできる」ということだ。

目的地は、人によっても時によっても変わる。例えば、貯金が底をついたときの私の目的地は「毎月の生活費を支払えるだけの貯蓄が常にある状態」だったし、それが達成できた今の目的地はまた違っているはずだ(これは次回へ持ち越すことにする)。

貯金が底をついたこと自体はすごく惨めでヒリヒリとしたし、もう二度と経験したくはないけれど、その経験によって私は、”私のお金の主導権”を獲得したように思う。

そして、それから数年後の2024年6月、私は個人事業主になった。やっと話が最初に戻るけれど、退職しない限り毎月決まった金額が振り込まれる”会社員”では無くなった(退職したから)。自分の安心を、自分で作らなくてはいけない道を、自分で選んだ。それは一般的な捉え方では「不安定な職業」になるのだろうし、実際にそういう不安も自分の中にある。でも、”私のお金の主導権”度は、確実に上がったように思う。この1ヶ月少しの間にも。

と、いうことはまた次に書くことにして。
今日も私は私の目的地を目指すために、働くのです。好きな仕事と、好きな生き方で。



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