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目次 プロローグ 第一章 三億円の田んぼ 第二章 一日一合純米酒 第三章 秘儀玉麹を伝える…
タミ子の店の常連客。葉子も何回か一緒に飲み、酒 蔵を訪問したこともある。 「ヨーコさん?!…
車窓の田んぼの景色が、飛ぶように流れていく。かなりの速度だが、富井田課長は、鼻歌交じり…
振り向くと、タミ子だった。お地蔵さんのような微笑みを浮かべている。 勝木課長も足を止…
「第一発見者から、事情を聴取していた」 「そないな些事は、我々に任せて下さい」 余計なこ…
秀造が、三人に駆け寄る。すぐ横に立って、紹介を始めた。 「第一発見者のお三方です。こち…
プロローグ 山田錦の苗は、まだ若くて青く、夕暮れの空は、群青から橙へと染まりつつあった。 初夏の風が、渡って行くたび、柔らかい葉先が踊った。田植えの直後は、無垢で美しい。 多田康一は、田んぼのわきに、身を隠していた。ふと、子供時代のあだ名、妖怪『うわん』を、思い出す。ひょうたん顔に、大きな目。物陰に隠れて、人を脅かす妖怪だ。 今の自分に、ぴったりではないか。不届き者の不意を打ち、懲らしめてやる。 手塩にかけてる山田錦に、ちょっかいを出す奴は許さない。 七十才を過ぎ
黄金色の山田錦の穂が、天に向かって美しい弧を描いている。 一方、そのすぐ根元に、青黒く…
田んぼは、初めてだった。 米を追う仕事を、しているのにもかかわらず。 ただ、たまには…