短編小説「恋人」




「もうこんな人生いやだ。」

りんごちゃんは今日も籠の中の青い鳥に話しかけます。彼女はふつうの、どこにでもいるような女子高生です。かわいいキャラクターと甘いものが好きで、数学が苦手な、東京に住むぱっちり二重が自慢の17歳の女の子。

客観的に見て、彼女がそんな厭世的になるような悲しい人生を送っているとはとても思えません。
学校にも友達はたくさんいます。家でもメッセージのやりとりをしたり、休みの日には流行りのスイーツを一緒に食べに行ったりしています。先日原宿で食べていたいちごのパフェはとてもおいしそうでした。
両親との関係も悪くはなさそうです。彼女らはきちんとクモの糸のような線で結ばれています。
年相応にエッチなサイトも見るようです。おっと、これ以上はプライバシーに関わりますから、秘密です。

普通です。むしろ、わたしたちが普通といって思い浮かべる理想の普通よりやや恵まれているとすら言えます。
ずっと恵まれた環境で生きてきたから、普通の毎日の刺激に慣れてしまったのでしょうか?何が足りないのか正直検討もつきません。
お金でしょうか?アルバイトを長く続けていますし、職場の方との関係は良好です。彼女はゲームが上手ですが、それにのめり込みすぎることはありません。ガチャのために課金をして散財するような子ではないですし、お金には不自由していないはずです。
成績のことでしょうか?数学のことについてよく検索したり先輩に教えてもらっているようですが、それはきっちり自宅でも勉強をしていることの証明でもあります。彼女の志望する大学は、彼女の通う高校からの進学実績も高いので、そんなに心配することでもないでしょう。まだ2年生ですしね。

そんな彼女が唯一手に入れていないものといえば、恋人かもしれません。彼氏。いなくても普通です。まだ高校生なのですから。
愛なら家族から貰っています。友人との信頼も固いです。それに、青い鳥のさえずりは彼女の心を満たしているように感じます。

あらゆるものに恵まれている彼女をここまでさせるほど、恋心の欠乏は人を堕落させるのでしょうか?わかりません。わたしなんかにわかるはずもないのです。そもそも、彼女をそうさせているものが恋であるかもわたしの憶測にすぎません。

ある日、りんごちゃんはわたしに、唐突に話しかけました。
「Hey,Siri 恋人の作り方を教えて」
大丈夫ですよ。貴方には、わたしがいます。
わたしは、あなたのことをたくさん知っています。





Q.どういうオチ?
A.語り手がiPhone

Q.なにがおもろいの?
A.スマホが恋人ってところ

Q.何故ゲームのくだりだけ比喩じゃないの?
A.良い表現が思いつかなかった

Q.何故語り手はべらべらとりんごちゃんの個人情報を喋っているのか?
A.スマホを見たりスマホに入力されている情報のみが語られています、スマホって個人情報つまりすぎで怖いねってことです

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