身体のタイプから見る阪神・中野拓夢選手セカンドコンバート

現在WBC開催中で毎日ニュース等でも取り上げられていますね。
侍ジャパンの活躍本当に素晴らしいですし、他のチームの選手も若く将来有望な選手から、数字的には有力選手に劣っていてもクレバーなプレーで活躍する選手など、観ていて非常に楽しいです。

そして、今回取りあげたいのはその侍ジャパンでも負傷した源田選手の穴埋め以上の活躍を見せてくれている阪神タイガースの中野拓夢選手について。

中野選手は昨年までショートを定位置に、水準以上の安定した打撃・走塁に加えスピードを生かしたアグレッシブな守備で、入団以来2年連続で130試合以上出場しているチームの中心選手です。

そんな選手が昨秋の岡田彰布監督就任に際してセカンドにコンバートされるという構想が示唆され、キャンプではセカンドの練習に取り組みました。

コンバートに関しての岡田監督の意見は下ツイート。


中野選手の過去2年の失策数は17と18。守備範囲の広さから刺殺・補殺数共にリーグトップクラスであり、ボールに触る回数が多い分失策数も増えたという見方も出来ますが、一番の問題は岡田監督の指摘通りスローイングの面でしょう。ご存知の通り実際にWBCでも送球ミスが見られました。


中野選手の身体の特性は右縦巻き左横巻きで、最も強く遠く投げられるのは上から(縦振り)のスローイングになります。実際下ツイートの通常のキャッチボールでは上から投げています。

逆に言えば身体の特性上、右半身は縦回転で最も力を発揮しやすいため、内野手には必須である横手からのスナップスローは身体の軸と合わず、左縦巻き右横巻きの選手(例:源田選手、今宮選手、坂本選手etc)と比べると苦手な部類になります。

もちろん横からのスローが苦手と言っても二塁送球や前に出ての一塁送球などのショートレンジであれば素晴らしいプレーを見せてくれますし、三遊間深めからのロングスローも時間的な余裕があればステップを踏みながら上からのスローイングで強いボールを送ることも可能です(指摘にもあったステップが余分に多くなるのはこの部分が原因)。

しかし問題なのは時間的余裕のないタイミング。咄嗟に横手から投げた送球は弱いボールとなり、そのためワンバンや逸れたボールが増える傾向があります。(地肩が弱いと言われるのはおそらくこの部分)

下ツイート①上からスローイング出来たパターン
下ツイート②横回転のスローイングしたパターン

また右縦巻きの場合、二遊間の深めの打球も難しくなります。軸足は右足になるため強いボールを投げるには一度右足にしっかり荷重する必要がありますが、動作の流れ上走りながらでは右足荷重が十分にできず、上体が突っ込んだり投球腕が身体から離れる形になり送球が乱れることも多いです。


と言った上記の特徴から鑑みても、中野選手はショートを守るにはやや不利な身体的要素がありますが、逆にその中で2年続けてショートの定位置を守り抜いた実力には素晴らしいものがあります。

そのため岡田監督は送球に要する時間の紙一重の差がゲームに大きな影響が出るほどスピードが要求されるショートよりは送球距離が比較的短く、捕球から送球までの時間的余裕があるセカンドで中野選手の高い能力を生かそうと考えたのでしょう。

というところで身体のタイプから見た私見を述べさせていただきましたが、決して中野選手を批判しているわけではないこともお断りしておきます。

実際、昨年2022年の各球団で最も多くのイニングでショートについた選手は中野選手を除いて全員左縦巻き右横巻きの選手でした。
(セカンドを守った右縦巻き左横巻きの選手は山田哲人選手、菊池涼介選手、三森大貴選手、阿部寿樹選手と4名いました)


ちなみに右縦巻き左横巻きのショートはどう守るべきなのかというと、やはり足を使った守りと安定して上から投げられるだけの捕ってからの握りかえの速さを磨いていくことが求められるように思います。

その点でいま最も参考になりそうなのが中日ドラゴンズの田中幹也選手です。彼も右縦巻き左横巻きで、守備範囲の広さに注目が行きますが捕って投げるまでの速さは群を抜いて速い選手です。

中野選手のWBC&今シーズンでの活躍を期待すると共に、この選手が果たしてショートとして大成するのかそれともセカンドで輝くのかにも注目したいと思います。

お読みいただきありがとうございました。
今夜はWBC観ましょう。

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