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国際人とは

FBノート記事として 2017.03.20

先日(2017/03/19)政治コンゴ(DRC=Democratic Republic of Congo)難民としてオランダに渡り、オランダの市民権を得たLさんのお話を、牧師夫人の同時通訳で伺いました。テーマは「国際人」。パワポの資料と共に、とても有意義な時間でした。

一口に「移民」といっても、英語では
  immigration(他国からの移民)
  emigration(他国への移民)
  migration(ひっくるめて移民)
と、違いをつけています。彼女は9歳の時に親兄弟と一緒に強制的に国を出ることになり、オランダへ渡りました。難民キャンプで7年間過ごし、その後市民権、永住権を得ることができました。

オランダ人として長く暮らしていても、初めて出会ったオランダ人は必ず「お国はどちらですか?」と質問してきます。彼女が「オランダです」と答えても、もちろん相手は満足しません。「ではあなたの先祖はどこの国ですか?」と聞いてきて、彼女が生まれ故郷を答えれば満足するのでしょうが、ではどういう経緯で何歳の時にオランダに難民として渡り、どんな苦労をして今に至るのか、いちいち初対面の人になぜプライバシーを明かさなければならないのか、とても傷つくし憤りを感じます、と語っていました。そして次の引用が画面に映し出されました。
“I’m tired of being treated like a second-class citizen.” ---- by Rosa Parks

オランダ人として長年暮らしていても、必ず繰り返されるこの問答。自分は見た目から明らかに「オランダ人」としては認められていないのだと思わされることだと、彼女は言います。これがオランダ以外の国で質問されるなら、彼女は喜んで自分のストーリーを話しますとも語っていました。しかし今や母国として思っている国の中で、同じオランダ人からこの質問を繰り返されることは、本当に彼女にとってはつらいことなのだろうと感じました。
彼女はその後ロンドン、ケープタウン、フィリピンで仕事をしながら暮らし、日本に来て今1年4か月ほどになります。大変聡明でチャーミングな女性です。

コンゴではローマンカトリック信者が50%、プロテスタントが20%、キンバング(キリスト教系新興宗教)10%、ムスリム10%、その他10%となっています。オランダで彼女はカトリック教会を訪ねましたが、中で礼拝を守っていたのは、わずか10人ほどの高齢者のみで、閑散としていたそうです。そして彼女たちに対してあまり友好的ではなかったそうです。一方プロテスタント教会は人であふれかえり、彼女たちにもとても親密で、各国語の同時通訳のヘッドフォンを使用でき、多国籍の老若男女が生き生きと賛美をしていたことから、後に家族皆プロテスタント教会で受洗し直したそうです。

世界では「国籍」による利益・不利益もたくさんあることを知りました。夫婦や親子で国籍が違う家庭(海外では珍しくありません)の場合、第三世界(発展途上国)に属する国の国籍の人と、第一世界(資本主義経済の国)の人と、一緒に旅行しても1人だけ入国審査で入れなかったりといった事が起こります。オランダ国籍は彼女にとって、国際間の移動にも支障なく、コンゴ国籍より恩恵をもたらしていると言えます。しかし彼女の夫はそうではなく、苦労も多いようです。

難民キャンプについて質問をしてみました。難民として渡った人たちは、みな市民権を得ることができたのか。やはり人それぞれ選別されるのか…。
難民キャンプにはその当時の紛争国からの難民が共に暮らしていたそうです。スリナム、ボスニア、ソマリア、アフガニスタン、その他多くの地域から難民がきていて、キッチンなど共有しながら暮らしていたそうです。オランダ語を学ぶ教育を受けて、その後の永住のための準備をしながら暮していたとのこと。永住権取得については、それぞれ個別のケースを細かく審査されたとのことでした。

オランダは小さな国ですし、観光客が多く、他国へ仕事に出る人も多い国です。国民はごく普通にオランダ語、英語、ドイツ語、フランス語を話します。ヨーロッパで生き抜いていくには、これくらいの言語を使いこなせることが必要なのでしょう。どういう頭の構造なのか、日本人にはなかなか真似の出来ないことです。

先日(2017年3月15日)のオランダ下院での選挙結果についてどう思ったか、という質問も出ました。極右政党が政権を取れなかったことで、移民の人たちはホッとしたそうです。極右政党の天下となったら、保護主義、国粋主義になって、生粋のオランダ人以外は排除、ということになりかねないところでした。(このオランダでの選挙は、極右台頭が懸念されるドイツやフランスでの選挙にも、確実に影響を及ぼすはずです)

私のイタリア人の友だちで、今ロンドンからスコットランドに引っ越したFさんという人がいます。つい先日FBで、「”permanent application” を得るための書類を提出したから、みんな受理されるように祈って!」という記事があって、「でも有効期限は5年間なのに、なんで”永久”って名前なのかしらね」と追記されているのを見かけました。以前はそんな許可もいらず、ロンドンでWEBデザイナーの仕事を長年やっていた彼女。なにか制度が変わったのかしら?とまた質問してみると、牧師夫人が「イギリスはEUから離脱(Brexit)することになったからでしょう」と。Lさんも「そうです、EUから抜けるからです」というお話でした。

EUの中の国なら、大学の学費でも他国でも安く、EU以外だと金額も高くなるのだとか。EU同士の互助のつながりが、抜けてしまえば全く無くなるわけで、イギリスはこれからいろいろな不自由を味わうのかもしれません。
思いもかけず、さまざまな話をナマで聞くことができ、みんなでその後お茶とお菓子で歓談。とても楽しく有意義な時間でした。こういう日本にいてはわからないこと、どんどん他国の人と話して理解を深め合いたいですね。


(画像は https://www.cfr.org/quiz/see-how-much-you-know-about-democratic-republic-congo より。Families flee renewed fighting between the Congolese army and M23 rebels near the eastern city of Goma in July, 2012. James Akena/Reuters)


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