第11回 顧客の声に惑わされるな:成功への本当の道
「その前に顧客のニーズを確かめなければいけないですね」
ミーティングで時々耳にするこのフレーズ。
一見、頭の良い発言に見えますが、私は少し迷惑な言葉とも感じています。
私が所属する営業部署と企画部門(正直、何をしているのかよくわからない部署)では、新しいサービスを生み出すための合同ミーティングを月に一回開催していました。
その中で頻繁に出てくるのが「顧客のニーズを確かめなければならない」という言葉です。
毎回ミーティングのたびに顧客のニーズを調査するのですが、営業メンバーは他にもやることが多いため、ほとんどヒアリングが進みません。
かろうじて集めた数件のヒアリング結果をミーティングで発表すると、「大口顧客の意見と小口顧客の意見で分析したほうが良いのではないか?」と企画部門から返答が来ます。
サンプル数が少ないから分析できないのに、再度ヒアリングのために1か月を費やす。
そしてまた同じ結果。
進展のないミーティングに業を煮やし、「もう試作でもいいので何かやってみませんか?」と提案してみましたが、『いや、顧客の意見を聞いてからでないと』と一蹴されます。
私が参加する前から続いていたこのミーティングも、2年経って何も成果を出せなかったと聞きました。
思わず「2年もやって何の成果もないなら中止したほうが良いと思います。アイディアを出すだけならみんなでランチでもしたほうが良くないですか?」と言ってしまいました。
結局、このミーティングは途中で中止となりました。
正直、とても良かったと思います。
ヒアリングも大事ですが、私はまず仮説を立ててテストを行うべきだと思っています。
例えば、「顧客はこのような課題を抱えているからこんなサービスを欲しがっているのではないか?」という仮説を立て、試しにサービスを作ってみる。
そしてお客さんの反応を見る。
こうしたアクションは非常に前向きで効果的だと感じます。
少し話は変わりますが、マクドナルドの元社長・原田泳幸氏が、顧客の要望に応えて野菜を多く取り入れたメニューを導入したものの、期待したほどの売上を上げられなかったという話があります。
具体的には、「サラダマック」などの健康志向のメニューが導入されましたが、売上は伸び悩みました。
逆に健康度外視の「トリプルバーガー」は大ヒット商品になりました。
この経験から、マクドナルドは顧客の声を反映することの重要性を再認識しつつも、ブランドの核心である「手軽さ」や「味の良さ」を重視した商品展開のバランスを見直しました。
この事例は、企業が顧客の要望に応える際に直面する課題を示しています。
マーケティング的に言えば、マーケットイン(市場や顧客のニーズを重視するアプローチ)とプロダクトアウト(自社の技術力やアイデアを優先するアプローチ)のバランスが重要です。
お客様の声は必ずしも正解ではありません。
顧客のニーズを理解することは重要ですが、同時に仮説を立てて実際に行動し、テストを繰り返すことも必要です。
失敗してもいいから、私は作り手が売れると信じたものを作ることも大切だと思っています。
『ぼくがかんがえたきゅうきょくのサービス』をいつか世に出したいなあ。
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