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『シャーデンフロイデ―他人を引きずり下ろす快感』中野信子(幻冬舎新書)

林業界にいると、結構な頻度で他人や他所の会社の批判を耳にします。
仕事をとられたとか直接迷惑を掛けられた訳でもなく、離れた地域で活躍する人のの動画やネット記事を見て、文句を言ってたりする。どの業界でもあることだとは思いますが、やたらと耳にする印象があります。若手で似たようなビジョンを持つ人が集まる会では、あまりそういうことが無かったので、田舎のアラフィフ以上のオッサンが集まるとそうなる、ということかもしれません。表題の本は、その理由のヒントが得られるかもしれないと思い、読んでみました。

読んだ感想としては、やはり田舎で長年暮らしている日本人男性と出会うことの多い林業界では、他人を批判してばかりのオジサンとのエンカウントは避けようのない現象であると言えそうです。

そもそも人は社会的な生き物で、集団を維持するためにルールを破るものに罰を与えるようにできているそうです。この利他的懲罰を行わなければ、裏切り戦略をとる個体に搾取されて崩壊するからです。搾取されずとも、インフラ整備や食料生産などが適切になされず、崩壊するかもしれません。
昔の村社会であれば、村を維持するためのルールに従って行動することで村が維持されたのでしょうが、今は生まれる場所も育つ環境も学ぶ学校も仕事をする会社も、様々な人で構成されており経験してきたルールも様々です。そこで村のルールを持ち出しても通用するかは未知ですが、自分が正しいと信じ込んでいると、他者のバックグラウンドなどを鑑みることはできないでしょう。

インターネットが普及し、リモートワークなども増えている昨今ですが、肉体がある以上、インフラや食料は必要なわけですが、それらの維持には肉体労働や技術が必要です。仕事のコミュニティと住む場所のコミュニティが一致しない人もいるなかで、どのような規模で物理的な環境を維持していくのか、結構難しい課題なんじゃないかと思います。田畑はもちろん家や道路も人が住まなくなればあっという間に植物・動物たちに侵食されます。異なるコミュニティの人が維持してくれたもの(お金・インフラ・食料等)に依存している現代、絶対的なルールは無いなかで、誰が何を保障するのか。

話を戻します。年を取ると前頭葉が担っているブレーキ機能が低下し、テストステロンの分泌量が多い男性は、他者を攻撃して快感を覚えることをやめられなくなりやすいそうです。また、東アジア人は自分で意思決定することが楽しいと感じる人よりも、前例やルールに従う方が良いと感じる人が約7割いるとのこと。ヨーロッパは意思決定したい派が6割近く、ビジネスのやり方を見ていても実感するところです。日本は米作地域であったことなどから、集団を尊重する志向性の高い人が残った可能性があるということでした。

ある程度なら、批判の裏には愛があるんだなと思って聞き流せるかもしれません。

※サムネイル画像はCANVAに作ってもらいました

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