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物語の始まるところ

久しぶりの裏山散歩。


帽子を被ったどんぐりを拾ったり、野鳥の声を楽しんだり風を浴びたり


乾いた落ち葉を踏み歩くのが

何より好きなのだった。

まだ蚊がいると思い、裏山への散歩は当分行けないと思っていたけれど、

今朝方ぼんやりしていたら、風の揺らす木々の葉が、波と同じリズムで揺れていて

まるで自室が海辺みたいだったのです。

1/f揺らぎ?ですか?

この風と裏山どうかな?行ってみようかな…。

取敢えずで目についた鉱石たちをポケットに詰め込んだら少しだけ、気持ちが「動」へと傾いた様な気がした。


お気に入りの樫の木の下に並べた鉱石たち

真ん中がフローライト(蛍石)、向かって右からブルームーンストーン、スモーキークォーツ、コベライト、グインデルクォーツ、クジラの歯。

よしこれで、自宅の部屋の様になった。

倒木に腰掛けて暫し休息。


窮屈だなぁ

このひと月、ずっと感じていた事だ。


てくてく歩いていると、例のあいつに出くわす。

森の中には言葉がある。ルーン文字が木の枝となり語りかけて来るのだった。



これはエオロー
またしてもエオロー

エオローはヘラジカ。左右に伸びた枝は角。

または飛躍する白鳥、シャーマンや神官の、祈りの際の腕のポーズを表すと言う。


祈り 

かぁ。祈らないのでそれはよく分からない。

しかし何と言うか、先月末コロナに感染してしまい、熱にうなされながら見た夢は、何だかおかしな事になってて、

大きな岩の上に立ち、エオローの様に両腕を広げ天に向かってまさに、何事かを祈っている夢だった。

脳がバグった?


そんな事を想いながら朽ちそうな枝と向き合った。

何も思い浮かばないまま自宅へ戻ると、コベライトを裏山に忘れて来た事に気がついた。

今度は家の鍵だけを握りしめ裏山へ。

奴(コベライト)は大人しく樫の木の下にいた。もう一度、樫を見上げた。触れてみる。樫の幹に耳を当て音を聴く。

ぽとぽとっと、どんぐりが3つ落ちて来た。

うそ…

声に出た。

またね。

樫に挨拶をして、この道を抜けたら人間界だ。

その道の先、山桜の下に誰が置いたか知らないうちに、小さなベンチがぽつんとあった。

腰掛けて正面を見たら木々の間から、遠くに家が見えていた。

まるで山の仙人みたいな気分になって家々を見下ろしていたら、あ!と思い当たった。

スマホのカメラが邪魔だったと。もう一度、カメラ無しで来れたのは幸運だった。


取りに戻ったコベライトは太陽光を受けキラキラしていて本当に美しい。

誰とも共有しない今だけの一瞬が満ち満ちて

溢れた。


少しだけ、窮屈な自分から抜け出せた。

そんな一日。

ここからまた新しい物語を紡いで行こう。

もう、抑えるのはやめにしよう。








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