見出し画像

茨木のり子さん 「自分の感受性くらい」

※写真はWikipediaより転載

茨木のり子さんの詩。

すぐ近くで淡々と語られているような、そんな生々しさと力強さを感じる。

自分のことを詩人とはよもや思うまいが、これほどまでに人に何かを伝えられたらと思います。

何かじゃないな、多分。
はっきりしてるんだ。


●自分の感受性くらい


ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?