【1分エッセイ】みどり色の隣人

 みどり色の生き物の内にも血は流れていた。

 我が家の観葉植物のことだ。シェフレラという種類の植物で、中国・台湾を中心に熱帯や温帯地域に自生している丈夫な生き物。五、六枚の葉が放射状に開くさまは、葉そのものが花のようで美しい。

 かれこれ五年ほど生活を共にしてきたが、この頃の生長はめざましく、今回初めて剪定することになった。剪定といっても、ハサミを茎にあて、たった一回パチンとやるだけ。

 しかしこの時ほど、この生き物の命に触れた瞬間はなかったかもしれない。以前植え替えで、その色白の根に触れたこともあったが、それともまた違った。

 ハサミの刃越しの茎の感触は柔らかく、ざくりと切った瞬間、切り口から透明な血があふれ、青臭さが立ちのぼった。維管束からにじんだ血は傷口をうるませ、朝の日差しにさらされていた。

 植物は静止しているものだと思っていた。動いているといっても、人の目では分からないほどゆっくりしたものだと思っていた。しかし、そうではない。私の知らない内側で、こんなにも力強く血がめぐっていたのだ。

 切り落とした葉の方は、違う鉢に差して水をやった。こうすると、また新しい葉が生えてくるという。つまり、元のシェフレラと新しいシェフレラの二個体ができる。つくづく不思議だ。人間のように血があふれると思いきや、いとも簡単に自身のクローンを作ってしまう。身近なような遠いような。みどり色の隣人は今日も私の暮らしの傍らにいる。