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熊出没

先日、山に近い町中をふらふらと自転車に乗っていたら、チリンチリンと鈴の音がする。なんだろうと思っていたら、下校途中の小学生がランドセルに鈴を付けていたのだ。最初は鈴が好きな子がいて付けているのかなと思っていたが、どの集団からもチリンチリンと聞こえてくる。何か行事でもあるのかと思っていたが、熊出没注意ののぼりを見て気がついた。熊よけの鈴だ。

その町は、それこそ何十年もふらふらしに行っていたところだが、熊鈴を聞いたのも熊出没注意ののぼりを見たのも初めてだ。ここのところ熊が出没するニュースが多く報じられているが、こんなところまでも出没を注意しなくてはいけなくなるとは驚きだ。

熊は恐ろしい。僕は北海道に住んでいたことがあり、ヒグマの被害についていろいろ報じられていることや資料などを見ていて、その恐ろしいことを知っている。だから、山に山菜取り等に行く時には、絶対に出会わないように熊鈴を付けたり、ひんぱんに音を出したりして熊に自分の存在を知らせるようにしている。

一度だけ、熊に遭遇したことがある。山の中のキャンプ場で、人も結構いたので油断して鈴も付けず近くの遊歩道を歩いていたら、10m程先に親子の熊がいるのに出会った。子づれの熊はやばい。子供を守ろうとして、親熊が襲ってくる。一瞬熊と目があって、やばいと背筋が凍ったが、そのまま静かに後ずさったら熊もその場を立ち去ってくれた。本当に助かった。運が良かった。

今年の熊による被害の報道は多い。襲われた人の被害は深刻だ。北海道では、北大生が熊に食われて死亡した。ひもじければ、熊は人も食うのである。

民家に侵入した熊を殺さないでと、感情まかせに泣きながら抗議の電話をした人がいると報道があったが、その人は熊をなんだと思っているのだろうか。可愛いペットかプーさんだと思っているのだろうか。多分、熊とは何の係わりもない安全な生活をしているのだろう。だからそんなことができるのだ。

そういう人は、熊の出没に怯える生活をしているところに引っ越してくれば良い。実際どんな思いをして生活しているか、ぜひ体験して実感してほしい。丹精込めて育てた野菜が荒らされ収入が減り生活が苦しくなり、外に出る時はいつ熊が出ててきて襲われるかとビクビクしながら過ごし、子供が襲われたら命はまず無いと心をすり減らし、そんな不安と恐怖と隣り合わせの生活をしていることを肌で感じてほしい。

町中に出てきた熊は、ただ闇雲に殺される訳ではない。人命を第一にした上で、返せるものは返している。役所の人を始め、当事者はどうやって熊と共存していくか日々悩み考えている。そこをちゃんと理解してほしい。一点だけを見て感情に走ってどうこう言う前に、まず全体的に状況を理解してから行動してほしい。

熊と共存するため、今僕にできるのは熊と出会わないように対策すること。それしかできないけど、できるところからやっていく。

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