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今週の怪談プレイリスト(11月24日号)

最近見聞きしたなかでおもしろかったものをご紹介します。なるべくアップロードが新しいものを選んでいます。便宜上数字を割り振っていますが、ランキングではありません。

1. ふたなりDJたらちゃん「霊感のある先輩」※題は筆者による

愛媛でアニソンDJとして活躍するたらちゃん。「霊感あると思って三ヶ月ずっとシャブ中と遊びおったんや」など、愛媛弁を駆使して語られるその怪異譚では語り口と物語が一体不可分となり、他に類を見ない世界を形成している。「ヒトコワ」と「幽霊譚」が入り混じった今作では、ともすれば失いがちなリアリティを、方言を含む圧倒的な具体性が保障している。

2. 伊山亮吉「校舎の顔」

彼の語り口の特徴のひとつは、つねにどこか楽しそうであるということだ。それは彼が怪異を恐怖の源泉ではなく、むしろこの世の雑多さ、言い換えれば豊かさの証明として捉えているからだろう。それは今作のような「実害」がない怪談で顕著である。ただ出てきただけ。そして、ただわけもわからず去っただけ。誰も死なず、怪我すらしない。ただ怪異が怪異として存在する今作では、ある種の引き算の美を堪能できる。

3. ビスケッティ佐竹「宅配寿司のバイト」

安倍前首相のものまねで有名な佐竹氏。これが怪談なのか自信はない、そう謙遜しながら語られる今作の特徴は、その具体的な描写である。今作のプロットはシンプルであり、怪談マニアなら中盤で結末が予想できることだろう。だが、執拗に繰り返される台詞、そしてそこから透ける感情によって登場人物は記号性を脱ぎ、個性をまとう。それにより、「ベタ」とも言える今作は、固有の作品としてねっとりとした輝きを放つのだ。

4. ヌガザカ「屋久島の一夜」※題は筆者による

拷問器具収集家という肩書、そして戦前の憲兵の服装。「うさんくささ」を全身で体現したようなヌガザカ氏の語り口は、徹底して冷静だ。劇中の人物が発する「言ったでしょ」も、何者かが発するうめき声も、同じように徹底して色を抜いたトーンで語られる。それはまるで明朝体の散文のようであり、だからこそ聞き手はその「音」ではなく、内容に強く意識を向けてしまう。木も鳥も「何者か」も渾然一体となった屋久島と、彼の透徹した継ぎ目のない語り口は、深い根を共有している。

次回の更新は12月1日(火曜日)です。

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