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今週の怪談プレイリスト(10月27日号)

最近見聞きしたなかでおもしろかったものをご紹介します。なるべくアップロードが新しいものを選んでいます。便宜上数字を割り振っていますが、ランキングではありません。

1. 怪談社「いる」

「怪談社」とは、怪談師の上間月貴、糸柳寿昭、そして「書記」の伊計翼によるユニットである。群雄割拠の様相を呈す現代怪談界において、奇をてらわず真摯に蒐集と発表に向かうその姿勢は、ある種の求道者を思わせる。今作では、登場人物の心の温度を正確に描写する上間の語り口を堪能できる。怪談とはある種の祈りなのかもしれないと、結末に触れたあなたは感じるだろう。

2. はやせやすひろ(都市ボーイズ)「アイドルの身に起こった悲劇」

岸本誠とはやせやすひろによる放送作家コンビ・都市ボーイズ。都市伝説、陰謀論、心霊、妖怪と、共同知による幅広いオカルト知識を誇る。はやせが語り手となる今作は、生身の人間が巻き起こす恐怖、いわゆる「ヒトコワ」の部類である。地下アイドル、生配信、ストーカーといういかにもな道具立てでリアリティを構築したのち、端的で禍々しい結末に一気に着地させる語り口はあくまで軽妙で、だからこそ無防備な聞き手の胸に傷を残す。

3. 下駄華緒「遺骨の奪い合い」

火葬場職員、葬儀社職員、そしてバンド「ぼくたちのいるところ。」のベーシストを経て、現在はソロで活動する下駄氏。考えれば葬祭というのものは、生者を死者に「確定」するような作業である。その過程のなかで彼が体験したこの「怪談」のなかでは、生者と死者、こちらとあちらが未分化のまま一体となっている。

4. ヤースー(スマイルシーサー)「軍曹さん」

沖縄出身、祖母がユタ、そして米軍基地でのアルバイト経験もあるというヤースー氏。今作では基地内のバーで起こった怪異を、怖がらそうというよりは克明に伝えようと具体的に語る。基地内でのバーのヒエラルキー、アルバイトの制度など、経験者でしか知り得ぬディティールが興味深く、生々しい。「幽霊が見えるのが当たり前だと思っていた」と語る氏は、あくまで「軍曹」を記憶も歴史もある人間のように描写する。聞いた後、不思議と心がやわらかくなるのは、そんな氏の壁のないやさしさのせいかもしれない。

次回の更新は11月3日(火曜日)です。

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