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リーマンショック時の対応と、コロナ時代の対応を考えてみよう

※本記事はもともと2021年8月頃に書いた記事をnoteへ移行したものです。2022年4月時点の状況に少しアップグレードしていますが、その点ご了承ください。

こんにちは、夫の方です。
本日はいつもよりすこし難し目話ですが、興味ある方がんばって読んでみてください。間違いもあると思いますがその時はそっと教えて下さい。

コロナショックによる経済の停滞から立ち直るために、世界各国の中央銀行は金融緩和を実施してきました。
2020年3月には、FRBは政策金利を利下げと量的緩和を実施しました。
そして、その後の米国株式市場の株高は続き、ワクチンもある程度普及したことで、順調に経済が回復しているように見えてきます。
そこで、世の中的には、金融緩和の縮小であるテーパリングを懸念する声が大きく出てきました。(実際に、2021年11月にテーパリング開始、2022年3月には利上げを決めました。)

しかし、まだ投資の世界の初心者の自分は、正直テーパリングときいても「?」な感じで(いや、もちろん調べて意味はわかるんだが、、)、それがどういうことなのかイマイチわかっていませんでした。

そこで、前回にテーパリングを行ったというリーマンショック後の対応とその時の状況を調べてみることで、次に起ころうとしていることを理解してみようと思います。

リーマンショック

リーマンショック自体はみなさんご存知かと思いますが、いちおう時系列整理のためにも記述します。

リーマンショックは、リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが2008年9月15日に経営破綻したことを発端に、連鎖的に世界規模の金融危機が発生した事象のこと。2007年9月からサブプライム住宅ローン危機は顕在化していたという。

リーマンショック後の主な政策

リーマンショック後に各国の中央銀行は、政策金利の利下げと量的緩和(資金供給や国債買取)を行っています。コロナショックでも基本的に同じような対応を各国は行っていました。

以下は、「株安を止める方法(その1)~リーマン・ショックとの比較で分かること」のレポートから引用した、リーマンショック後に実施した主な政策年表です。

<2008年>
9月15日 米リーマン・ブラザーズ破綻。
9月18日 日米欧の6中銀が1,800億ドルの資金供給を発表。
9月29日 世界の10中銀が6,200億ドルの資金供給を発表。
10月3日 公的資金枠7,000億ドルを柱とする米金融安定化法が成立。
10月8日 FRB、FF金利を2.0%から1.5%へ引き下げ。
10月29日 FRB、FF金利を1.5%から1.0%へ引き下げ。
10月30日 日本、事業規模27兆円の経済対策発表。
10月31日 日銀、政策金利を0.5%から0.3%へ引き下げ。
11月9日 中国、投資総額4兆元の大型景気対策発表。
11月25日 FRB、8,000億ドルの資金供給拡大策発表。RMBSなどの買い取りでQE1開始。
12月2日 日銀、企業金融円滑策を発表。
12月16日 FRB、事実上のゼロ金利に。
12月19日 日銀、政策金利を0.3%から0.1%へ引き下げ。
<2009年>
2月3日 日銀、銀行保有株の買い取りの再開決定。
2月17日 米オバマ大統領、7,870億ドル規模の景気対策法に署名。
3月18日 FRB、米長期国債3,000億ドル買い取り表明。
3月21日 米財務省、最大1兆ドルの官民合同の不良債権買い取りファンド設立を発表。
4月10日 日本、事業規模56兆円の経済対策発表。
4月24日 G7財務相・中央銀行総裁会議、共同声明で世界経済に安定化の兆し。
株安を止める方法(その1)~リーマン・ショックとの比較で分かること

なぜ、このような対応をするのかを簡単に復習しておきます。
金利を下げることで、企業は低利子でお金を借りることが可能で、市場に流通する通貨量は上がります。それで経済回復を狙うことができます。
しかし、金利をほぼゼロ近くに下げて、それでも通貨の流通量が不十分となり、考えたのが「量的緩和」です。中央銀行が金融機関が保有する国債などを買い取る形で、金融市場に資金を大量供給することを目的としています。

リーマンショックのときには、3回の量的緩和政策を行いました。期間はながいですけれど。

量的緩和ってなにするの?

「金利を下げる」は、言葉を聞いてなんとなくやることがわかります。
一方で、量的緩和("QE"と書かれることがあります)といわれてもいまいちピンとこないですよね。

調べると、「米国「量的緩和政策」終了」のレポートがよくまとまっていたのでこちらから引用します。
国債だけでなく、MBS(住宅ローン担保証券)の買取を行っていたようです。どのくらいの規模の買取をするのかがよくわかります。
ぜひこのレポートも読んでみてください。結構わかりやすいです。

(問)米国のQE3とはどのようなものですか
(答)QE3は、主に雇用環境の改善を目的として、毎月 400 億ドルの住宅ローン担保証券(MBS)と 450 億ドルの長期国債を銀行から購入し、市場の通貨量を増やすものです。米国の量的緩和政策は、リーマン・ショック後の金融市場の混乱への対応を目的として 2008 年 12 月に導入され、第一弾(QE1)では1兆 7,250 億ドルの国債・MBSを、第二弾(QE2)では 6,000 億ドルの国債を購入しました。
米国「量的緩和政策」終了

テーパリングってなにするの?

ここまでは、リーマンショック後に起きた経済回復のための対策についてでした。
一方、ある程度の経済回復が見込めると、縮小に向かいます。それがテーパリングです。

実際の例をみてみましょう。2014年1月から10月までの9ヶ月間行いました。
同じく、「米国「量的緩和政策」終了」のレポートから引用します。

(問)なぜFRBはQE3を終了したのですか。
(答)米国経済の見通しに明るさがみられるようになったことが背景にあります。QE3の導入目的であった雇用環境に十分な改善が見られたという判断がありました。なお、QE3の終了にあたり、景気や市場に影響を与えないよう、2014 年1月から長い期間(9か月)をかけてほぼ同一のペースで徐々に国債とMBSの購入額を減らしていきました。これは、テーパリングと呼ばれています。
米国「量的緩和政策」終了

つまり、実施してきた量的緩和を縮小していくということになります。ポイントはいきなり、国債やMBSの買取をやめるわけではなく、買う量を徐々に減らしていくことで、市場へのインパクトを減らしているということです。

コロナショックでも、リーマンショックのときと同じように、利下げ&量的緩和をしてきたわけですから、対応としては同じようなことが想定されます。(実際に行いました)

ちなみに、2013年5月には、バーナンキFRB議長(当時のFRB議長。いまはパウエルさん)が予期せぬタイミングでテーパリング実施を示唆したので、米国債利回りが急上昇して、金融市場が混乱したらしいです。
いわゆる、「バーナンキショック」あるいは「テーパータントラム」と呼ばれています。

以下は、当時の2013年5月22日のバーナンキ議長の発言要旨です。興味ある人は合わせてみてみましょう。

そして利上げへ

そして、テーパリング終了後、2015年12月についに利上げをしました。

当時の雇用統計

テーパリング開始時期を探るにあたって、米国の雇用統計は非常に重要視されています。理由は、FRBのミッションは2つあって、一つは物価の安定、もう一つは雇用の安定だからです。
実際に、Bloombergの記事でも「米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は2日、次2回の月間雇用統計で労働市場の改善が続けて示されれば、債券購入の段階的縮小を近く発表することを支持できるだろうと述べた。」と書かれており、FRBがテーパリングを実施するための指標として雇用統計が大事みたいです。

では、2008年からテーパリング実施した2014年の間の雇用統計を見てみましょう。
安定して、200万人くらいの雇用がうまれてしばらくたってテーパリングが実施されていました。(情報ソースはTrading EconomicsのUnited States Non Farm Payrollsです)

世界相場

では、テーパリングなどが起きると、世界の株式相場はどうなるのでしょうか?
このときはおもしろいことに、テーパリングが行われ、その後にFRBの総資産を段階的に縮小させても、S&P500指数はどんどん上がっていきました。

理論的には、下がってもおかしくないのですがそれを上回る経済成長があったということでしょうか?それとも期待と違ったことがあったのでしょうか?(当時の情報まで追えませんでした)
これからおこるコロナ後のテーパリングでも同じように株価が上がり続けるか?というとそれはまた異なる議論かなと思います。正直、コロナ後のS&P500指数の上がり方は異常で、このまま上がり続けるはずはないです。

というのが、2021年8月ごろの考えだったのですが、現実はというと。
テーパリングの発表は予測どおりだったのかあまり影響がなかったのですが、そのご過度なインフレによる利上げスピードの加速が心配などで2022年の年明けから3月14日まででS&P500指数は15%ほど下落しました。

ドルインデックス

テーパリングによって、ドルの流通量が減ればドルインデックスはあがります。この点については、わりと理論通り動いていたように見えます。

2007-2017のドルインデックス

2021, 2022年についても、実際はテーパリング開始やそれが示唆され始めたあたりからドルインデックスは上がったように見えます。ただし、2022年の3-4月についてはウクライナとロシアの戦争の影響もあるのでその点は考慮に入れるべきです。

2018-2022のドルインデックス

ゴールド価格

ゴールドはどうでしょうか?ドルが上がれば、ゴールド価格は下がるのがセオリーです。
理由は、ゴールドは通貨としても認識されているので、ドルの価値が上がればゴールドの価値は下がります。逆に、ドルの供給量が上がればゴールドの価格は上がりやすいはずです。

過去のチャートを見る限り、テーパリングの前からゴールド価格はかなり下がっているのがわかります。テーパリングを予測した動なのかなあと思います。

2007-2017のゴールド価格

2021-2022も、リーマンショックのときと結構似たような動きをしているようにみえます。2022年の3月であがっているのは、ウクライナとロシアの戦争の影響です。

さいごに

2021年8月3日に、突然FRBのウォラーさんが、次の2回の雇用統計次第ではテーパリングを実施する旨を発言しました。そもそも、テーパリングとはなんなのか?テーパリングするとなにがおきるのか?このあたりがわかっていないと、これからくるテーパリングに対応できないと思い、リーマンショック時代の状況を調べて軽くまとめました。
また、ブログ記事移行に伴い、2021年・2022年の状況も少し付け加えました。

これからの投資学習の参考になればと思います。

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