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著作権譲渡にNO!

いつも「イラストレーターズ通信」をご利用いただきありがとうございます。
「イラストレーターズ通信」会員に、著作権譲渡のお仕事をご依頼くださったクライアント様にお願いがございます。
大変長くなり恐縮なのですが、目を通していただけると、ありがたいです。

プロ・イラストレーター団体「イラストレーターズ通信」では、2014年頃から「著作権譲渡にNO!」というスローガンを掲げております。

このスローガンの通り、当団体のイラストレーターは、原則として、著作権譲渡の要望には、お応えしておりません。
ただしこれは、クライアント様にとっての著作権譲渡のメリットを奪うためのものではございません。
双方にメリットがある解決策も用意しております。

そしてまたーー
この活動は、単純に「私たちは、自分たちの利益のために著作権譲渡のお仕事を引き受けしない」というだけのものではございません。
「世界に誇るべき日本の大衆文化を守りたい」という強い思いを込めています。

私たちはなぜ、「著作権譲渡にNO!」というスローガンを掲げるのか?
「双方にメリットのある解決策」とはどんなものか?
「日本の大衆文化を守る」とはどういうことなのか?
この場を借りて、「イラストレーターズ通信」の考えを説明させてください。

■ 著作権譲渡契約は、企業ばかりが保護され、イラストレーターの保護が疎かになる契約

2011年頃から、著作権譲渡を求めてくる企業・団体・自治体が増えて参りました。
イラストレーションをご依頼いただく企業(あるいは団体や自治体)様にとっての著作権譲渡契約は、さまざなメリットがあるからでしょう。
色々な形で企業を保護しているようにも見えるため、著作権譲渡契約を勧めている弁護士もいるようです。

しかし一方でーー
イラストレーターにとっての著作権譲渡契約は、様々なリスクがあります。
著作権譲渡契約のお仕事を受けたイラストレーターは、食べていくことが困難になり、甚大な損害賠償金を請求される可能性も出てきます。
著作権譲渡契約は、「企業ばかりが保護され、イラストレーターの保護が疎かになる、一方的な契約」になりがちなのです。
どうしてそうなりがちなのか?
どんなリスクがあるというのか?
そのあたりを説明させてください。

■イラストレーションの料金は、制作にかかった労力の代金ではなく、使用料

まず押さえておいていただきたいことはーー
「イラストレーションの料金は、制作にかかった労力の代金ではなく、使用料だ」ということです。

たとえば、どこかの企業が自社のキャンペーンのために、あるいは何かの商品に、ドラえもんの絵を使用するとしましょう。
藤子・F・不二雄プロに支払うお金は、その絵を描いた労力への代金でしょうか? 
いいえ、違います。
そのイラストレーションを使う代金(使用料)です。
イラストレーションを使用する場合に支払うお金は、絵を描く労力に対して支払われるのではなく、使用料として支払われるのです。
このことは、故 藤子・F・不二雄先生の描いたドラえもんであっても、無名のイラストレーターによるちょっとしたカットであっても、変わらないのです。

私たちイラストレーターは、絵を描いた労力への対価をいただいているのではなく、イラストレーションの使用料をいただくことで、生活しているのです。
(※イラストレーターが受け取る報酬に絵を描く労力が含まれていることもございます。この場合にイラストレーターが受け取る報酬は「使用料+労賃」となります。)

 出版系における著作権譲渡契約を考える

著作権が譲渡されたイラストレーションは、どんな媒体でも、回数制限なく、自由に使えるようになります。
それがどういうことかを考えてみましょう。

まずは、出版系のお仕事で考えてみます。
イラストレーターAが、雑誌に小説挿絵を1点描き、3万円で出版社Bに著作権を譲渡したとしましょう。
そうなると、もうそのイラストレーションの著作権はその出版社Bのものです。
出版社Bは、どんな媒体でも、どんな用途でも、何度でも、いつまででも、自由に使えます。
元の創作者であるイラストレーターAは、出版社Bを止めようがありません。
著作権を譲渡した挿絵の小説が書籍化され、書籍のカバーに使われても、イラストレーターAは文句が言えません。
出版社Bの行為は、完全に合法的だからです。
書籍カバーのイラストレーションのギャランティは10万円前後が相場ですが、イラストレーターはその使用料をいただけないことになります。
イラストレーターAにとっては、7万円の損害が発生するのです。
さらにーーその小説がドラマ化され、ドラマのオープニングで使われても、イラストレーターAは何も言えません。
そして海外版書籍カバーにも使われても、その使用料はイラストレーターAに入ってきません。
ハリウッドで映画化されて、そのポスターに使われたとしてもーーイラストレーターAがいただけるのは最初の3万円だけです。
ここまで広がると、イラストレーターの損害額は、100万円を超えるでしょう。

さらにいうとーー
最初に挿絵を描いた小説とは無関係な本にも使えます。
あらゆる書籍や雑誌に、何度でも使えます。
文具や雑貨に使うことも可能だし、キャラクター商品などを出すことだって問題ありません。
その出版社Bのイメージキャラクターとすることすら、合法です。
出版社Bに著作権があるわけですから、自社キャラクターとして、あらゆる宣伝・広告で大量に使うこともできるわけです。
こうなると、イラストレーターの損害額は、いくらになるのか検討もつきません。

「まずありえない」と思ったかもしれませんね。
しかし、こうしたことも可能な権利を買い取ることが著作権譲渡なのです。
なぜ、必要のない権利まで含めて、激安な価格で買っておこうとするのでしょう?

わかりやすい例え話をしましょう。
中華料理屋に入った人物がこんな注文をしたとしたらどう思いますか?
「ラーメンを食べようかな? でもラーメン以外にも食べるかも。いくつ料理を食べるかわかんないので、とりあえず、店ごと買います。ラーメンの金額にちょっとプラスアルファした金額を払うので」
ラーメン一杯に少しプラスアルファした金額で、使う予定もない権利まで買おうとする人物です。
ひどい話だと思いませんか?
でもイラストレータからすると、激安の金額で著作権まで買い取ろうとするクライアント様は、中華料理屋でこんな注文をする人物に近いイメージなのです。
店ごと買うなら、それ相応の金額を出すべきだとは思いませんか?


■ 広告における著作権譲渡契約を考える

広告イラストレーションの著作権譲渡契約についても考えてみましょう。

一般的な広告のお仕事では、競合他社でイラストレーションの仕事をすることを禁じられます。
一人のイラストレーターが、競合する複数の商品やサービスの仕事をすることは、「バッティング」とも呼ばれ、やってはいけないことの一つとされています。
万一、競合他社でイラストレーションの仕事をしたならば、多額の損害賠償金を請求される可能性もあります。

広告のビジュアルがよく似たイメージだと、消費者が他社の製品やサービスと混同してしまいます。
企業Cの製品の宣伝が、ビジュアルイメージの近い企業Dの宣伝になってしまう可能性があります。
ですから、多額の報酬と引き換えに、企業がイラストレーターに対して競合他社での仕事を禁じるのは当然でしょう。
この業界ルール自体は、問題ないと思います。

しかし、「競合他社での仕事を禁じる業界ルール」は、「著作権譲渡」と組み合わさった時、恐ろしい問題を引き起こします。

こんなケースを考えてみてください。
イラストレーターAが、洗剤会社Fに、20万円で著作権を譲渡したとします。
するとーー競合他社での仕事が禁じられるのですから……
イラストレーターAは、洗剤会社Fと競合する他の洗剤会社の宣伝・広告の仕事は、生涯できなくなります。
期間が決まっている一般的な宣伝・広告の仕事なら、使用期間が終われば、競合する他の洗剤会社の仕事も可能になります。
しかし、著作権を譲渡してしまったのですから、洗剤会社Fは半永久的にそのイラストレーションを使う権利を持つことになります。
いつまででも使えます。
一旦使用をやめても、いつでも再使用することができます。
イラストレーターは、生涯にわたって洗剤関連の仕事を諦めるしかありません。
そのイラストレーターはその後の人生で、数百万円の洗剤関連の企業からの売り上げがあったかもしれません。
いやそれ以上の売り上げがある可能性もあります。
たった20万円で、その全てを失うことになります。

著作権譲渡を受けた企業は、激安でずっと使う権利を購入できたのですから、とってもお得です。
でもその一方で、イラストレーターの権利や生活が犠牲になっているのです。

■ 更に深刻な問題の可能性

著作権を譲渡したイラストレーターAが仕事をできなくなるのは、洗剤関連の仕事だけではありません。
著作権を譲渡したのは洗剤会社だと思っていたのに、実は化粧品を製造販売をしているかもしれないからです。
洗剤会社Fは、著作権を持っているのですから、自社のあらゆる商品やサービスで使うことが可能です。
化粧品製造販売も行っているのなら、その宣伝・広告に使うことも、全く問題ありません。完全に合法的な行為です。

もしそのイラストレーターAが、化粧品メーカーGと別のお仕事をしていて、競合他社での仕事を禁じる契約を結んでいたとしたらーー
洗剤会社Fと化粧品メーカーGの両方の広告でイラストレーターAの作品が使われてしまうわけですからーー
これは絶対にやってはいけない「バッティング」になってしまいます。
イラストレーターAは、化粧品メーカーGから多額の損害賠償金を求められる可能性があります。
イラストレーターAが化粧品メーカから求められる賠償金は、一般的なイラストレーターが支払える額を超えてしまうのではないでしょうか?
想像すると恐ろしいです。

いまはまだ、洗剤会社Fは化粧品の製造販売を行っていないとしても、これから始める可能性はあります。
だから、著作権を譲渡する時点で洗剤会社Fが化粧品の製造販売を行っていなかったとしても、「化粧品の広告でバッティングが発生するリスクは、まったくない」とは言い切れません。

洗剤会社Fが始める可能性があるのは、化粧品の製造販売だけではありません。
生活雑貨の販売を始めるかもしれないし、食品業に進出するかもしれません。
あらゆる企業には、さまざまな事業を始める可能性があります。イラストレーターAに企業を止める権利はありません。
つまり、洗剤会社Fに著作権を譲渡しただけで、イラストレーターAは、あらゆる業種の広告の仕事で、バッティングの可能性が出てくるのです。

法律上、著作権を再譲渡することも認められています。
洗剤会社Fは、自動車メーカーにも、携帯電話会社にも、どんな業種の企業にも著作権を転売することが可能なのです。
自動車メーカーに転売されれば、自動車メーカーのテレビCMなどでも使えます。
携帯電話会社に著作権が移れば、携帯電話の広告で使い放題になります。

つまりーー
イラストレーターAは洗剤会社Fに著作権を譲渡しただけのはずがーー
「譲渡先の企業が他の事業を開始する可能性」と「再譲渡する可能性」を考えるとーー
あらゆる業種の宣伝・広告の仕事で、バッティングの可能性が生じてくるのです。
万一バッティングが発生した場合の賠償金を考えるとーー恐ろしすぎます。
もう広告宣伝の仕事は難しくなってしまいます。
その後のイラストレーターとしての活動に大きな支障が出てくるのです。

企業(または団体や自治体)の皆様がさらなる譲渡の意図をもって著作権を買い取るはずはありませんがーー
経営者(または団体や自治体の責任者)が変われば、方針も変わることがあります。
企業は吸収・合併・買収されることもあります。
そうなれば、当然経営方針が変わります。
その時、著作権を買い取ったイラストレーションの扱いがどうなるか……誰にもわからないでしょう。

さらにーー
著作権譲渡を受けて集めた大量のイラストレーションを元に、その企業がストック・イラストレーション事業を始めたとしたら……果たしてどんなことになるでしょうか?
あるいは、どこかのストック・イラストレーション業者が、著作権譲渡されたイラストレーションを各企業から安くで買い上げて、ネット上でフリー素材として提供し始めたとしたら……
そうなると、そのイラストレーションは、世界中の様々な企業の広告に使用されることになり、元の創作者であるイラストレーターAは全く管理できなくなります。

一度でも著作権を売り渡したイラストレーターは、その後恐ろしいリスクを抱えて活動していかねばならなくなるのです。

著作権譲渡とはーー
こうした犠牲をイラストレーターに押し付けながら、企業(あるいは団体や自治体)様だけが、一方的に得をする契約なのです。
企業(あるいは団体や自治体)の皆様、自社の利益や効率ばかりに気を取られて、大切なコンプライアンスを忘れてはいないでしょうか?
今一度、よく考えていただきたいと思います。

■ クライアント様にとってのリスク

実はーー
著作権譲渡契約には、イラストレーションを発注する企業の皆様にとってのリスクもございます。

多くの企業が常時イラストレーターから著作権を買い取るようになってくると、著作権譲渡されたイラストレーションが当初使われた商品(またはサービス)とは無関係な業種の商品(またはサービス)にも使われれるようになっていくでしょう。

著作権を買い取ったイラストレーションは、同じ企業内の別商品にも使えます。
グループ会社の別事業にも使えます。
再譲渡されれば、全く別会社も使えます。
どこかのストック・イラストレーションの企業が買い取れば、世界中のあらゆる企業が使う可能性があります。
ですから、当初使われた商品(またはサービス)とは無関係な業種や商品でどんどん使われるようになっていく可能性があります。

ということはーー
企業が正式に直接イラストレーターにお仕事を依頼したとしても、
「思いがけず、競合他社とイラストレーターが被ってしまう、バッティングの危険が、つねにある」
ということになります。

著作権譲渡がこのまま広がり、それがが当たり前の社会になるとーー
「どの企業の皆様も、安心してイラストレーターにお仕事を依頼できなくなる時代がいずれ来る」
と、予想されるのです。

企業の皆様の多くは、競合他社と同じイラストレーターによる宣伝・広告(バッティング)を避けたいのではないでしょうか?

企業のイラストレーション発注担当者の皆様、今一度よく考えてみてください。
安心してイラストレーターにお仕事を依頼できなくなる社会を望んでいるのでしょうか?
目先の利益だけでなく、日本の将来まで見据えて考えていただけると幸いです。

■ クライアント様とイラストレーター双方の利益を守る解決策

企業(あるいは団体や自治体)の皆様が、著作権譲渡契約を希望する理由は、主に次の3つのようです。

理由1)さまざまな媒体で流用する可能性があるため。
しかも使用する媒体は今後も広がる可能性がある。使用する媒体が増えるたびに、イラストレーターに使用許諾を取るのは手間がかかる。著作権を買い取っておいた方が、効率的だ。

理由2)いつまで使うかわからないため。
長期間使うかもしれないが、いつまで使うかわからないので、とりあえず著作権譲渡にしておこうというケースです。
全国の支店に貼られるポスターの仕事などでは、「地方の支店で使用期間を過ぎてちゃんと剥がしてもらえる保証ができない」いう場合もあります。

理由3)訴訟リスクを回避するため。
著作権のことをよくわかっていない社員が、そのイラストレーションをイラストレーターに断ることなく、勝手に何かに流用するかもしれない。
そうなると訴えられるリスクがある。
訴訟リスク回避のために著作権を買い取っておきたい。


ーーこの3つの理由、それぞれのケースについて考えてみましょう。

○「理由1)さまざまな媒体で流用する可能性があるため。」のケースを考える
新たな流用が決まってから使用許諾を取るのは、確かに非効率的だと思います。
企業にとって、効率性はとても重要だということは、私にもよく分かります。

では、ドラえもんの絵を使う企画が出たとしてーー
「今後使用範囲が広がるかもしれないから、著作権を買い取っておこう」と考えるでしょうか?
藤子・F・不二雄プロには強く言えないけれど、無名のイラストレーター相手なら自社の都合を押し付けようとしているのだとしたら、それはおかしいのではないでしょうか?
我々無名のイラストレーターにも生活があり、人生があります。
企業(あるいは団体や自治体)の皆様ーーどうか、私たちの人生を破壊しない道を考えていただけないでしょうか?

実はーー
「たくさんの媒体で使用する、これから使用する媒体が増えていく可能性もある。使用媒体を限定した契約は難しい。」という場合もーー
イラストレーターの権利を損なうことなく、クライアント様とイラストレーター双方にメリットのある契約方法がございます。

それはーー
all媒体」の使用許諾契約です。

all媒体」とは、あらゆる媒体で回数制限無しに使える契約方法です。
媒体を限定しないので、後から新たな流用が発生しても、いちいち許諾をとる必要がありません。
ただしこの契約方法は、使用媒体が多い分、報酬額はそれなりに高めの金額となります。
何卒ご了承ください。
具体的な金額は、ご依頼のイラストレーターとご相談ください。


○「理由2)いつまで使うかわからないため。」のケースを考える。

バッティングの問題があるためーー
ある企業の広告でイラストレーションが使われている間は、その作品を描いたイラストレーターは、競合他社での仕事ができなくなります。
つまり、使用期間を定めず、ずっと使われてしまうと、その業種の他社の仕事は半永久的にできません。
使用期間をきちんと定めておかないと、広告の仕事をするたびに、その業種での新たな仕事ができなくなっていくわけです。
ですから、イラストレーターにとって、使用期間はとても重要です。

「長期間使う、でもいつまで使うかはっきりしない」という場合は、年契約をお願いできるとありがたいです。

年契約は、「1年いくらで契約し、1年以上使う場合は、毎年更新使用料を支払っていただく契約」です。

毎年更新使用料をいただくことで、長期間使用することが可能になります。

ポスターなどでは「地方の支店で使用期間を過ぎてちゃんと剥がしてもらえる保証ができない」というケースも、時折聞きます。
こうした場合はーー
そのポスターの隅っこに小さな文字で、「掲示期限:2022年○月○日まで」などと印刷していただく方法はいかがでしょうか?
これなら、地方の支店で働くアルバイトであっても、「期限が来たら、剥がさなければ」と分かります。
多少は期限が過ぎても貼られ続けることがあるかもしれないですが、何年も張りっぱなしになることは無くなるでしょう。
もちろん、期限が来たら、「ポスターを剥がすように」と、各支店への指示も行うべきだと思います。

どうしても、使用期間を決められず、半永久的な使用権を購入するのであればーー
そのイラストレーターが、その業種で生涯に得るであろう収入額お願いすることになってしまいます。



○ 「理由3)訴訟リスクを回避するため。」のケースを考える。
確かに、全ての社員に著作権について教えるのは、大変でしょう。
著作権の意識のない社員が勝手に二次使用をしてしまい、イラストレーターとトラブルとなるケースもあるだろうと思います。
こうした理由から、企業に著作権譲渡契約を勧める弁護士もいるようです。
しかしーー
実は、著作権譲渡契約にも訴訟リスクがあることはご存知でしょうか?

十分な対価を伴わない著作権譲渡の強要は、下請法や独占禁止法に抵触する可能性があるのです。

公正取引委員会の「コンテンツ取引と下請法」パンフレット(https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/contentspamph.pdf)に、そのことが明記されています。

このパンフレットでは、親事業者が禁止されている行為の一つとして、
「下請事業者と著作権の対価にかかる十分な協議を行わず、通常の対価を大幅に下回る代金の額を一方的に定める。(買い叩き)」
が、挙げられているのです。
 あるいはーー
「優越的地位の乱用として独占禁止法上問題となる行為」として、
「情報成果物に係る権利等の一方的取り扱い」
「著しく低い対価の設定」
とも明記されています。

経産省から公表された「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(https://www.meti.go.jp/press/2020/03/20210326005/20210326005-1.pdf)でも、著作権譲渡の強要は下請法や独占禁止法に抵触する可能性があることが指摘されています。

つまりーー
著作権譲渡の強要は、違法の可能性が高いと考えられるのです。

違法とも考えられる行為を行っていると、いずれは訴訟を起こされるリスクがあるのではないでしょうか?

著作権譲渡契約は、また別の訴訟リスクをはらんでいるので、真のリスク回避とはならないと私は考えます。
真にリスクを回避したいのであれば、社内で著作権にする教育を徹底するのが一番効果的でしょう。

あるいは、社内で勝手にイラストレーションを二次使用できないような仕組みづくりも有効だと思います。
例えば、社内に知財部などを作り、イラストレーションをちょっと使いたいという場合も必ずそこから許可が必要な仕組みなどが考えられます。

たとえ訴訟を起こされないとしても、いずれは社会問題となる可能性があるでしょう。
何年か前に「WELQ問題」が大きな話題となりました。それをきっかけに信頼を失った企業もあったと思います。
ほかにも、儲けや効率を優先するあまり、コンプライアンスを忘れた企業が、世間で信頼を失った事件はいくつかあったのではないでしょうか。
企業、団体、自治体の皆様には、コンプライアンスについて、今一度深く考えていただけると幸いです。

■著作権は何のためにある?

そもそも、著作権とは何のためにあるのでしょう?
著作権法第1条にその答えがあります。

著作権法第1条:
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。

つまりーー
「著作権は、著作者の権利を保護することで文化を発展させるためにある」のです。
しかし、このまま著作権譲渡が広がれば、イラストレーターは食べていけなくなります。
職業として食べていけなくなれば、イラストレーション文化は確実に衰退するでしょう。
「文化を発展させる」という著作権の目的は、果たせなくなります。

江戸時代の日本では、浮世絵をはじめとする大衆文化が花開きました。
同じころのヨーロッパにおいて絵は、一部の裕福層や教会のものでした。
ごく普通の庶民がカラーの絵を購入することは、ほとんどなかったようです。
油絵は高価ですからヨーロッパの庶民の手は届きません。
比較的安価な銅版画もあったようですが、一般庶民への浸透度は今ひとつだったようです。
一方、日本ではごく普通の庶民も浮世絵を楽しんでいました。
江戸後期、かけそば一杯が16文の時代、浮世絵は高いものでも20文程度、物によっては3〜6文程度で手に入ったようです。

江戸時代すでに、日本は世界でも稀な大衆文化の国だったのです。
それが現代日本のアニメーション・漫画・イラストレーションといったクールジャパンの文化につながってきたのです。

しかしーー
著作権譲渡契約は、「企業ばかりが保護され、創作者の保護が疎かになる契約」です。
政府も主導するクールジャパンの文化を破壊してしまうのです。
文化を発展させようとする著作権の理念にも反します。

著作権譲渡契約が広まりつつある最近の傾向は、世界に誇るべき日本の大衆文化の危機なのです。
私は、著作権譲渡を求める企業・団体・自治体様が増えつつあることに、強い懸念を抱いていいます。
そのため、「イラストレーターズ通信」を通じて、長年この問題に取り組んでまいりました。
本気になってこの問題に取り組んでいるのは、もしかすると私だけかもしれません。
しかし、日本の大衆文化は、世界に誇るべき、素晴らしいものだとは思いませんか?
私は、イラストレーションという日本の大衆文化の灯を守り、未来につなげたいと願っています。
これこそが、イラストレーターズ通信が「著作権譲渡にNO!」のスローガンを掲げる最大の理由です。
企業・団体・自治体の皆様のご理解とご協力をいただけると幸いです。

■どうしても著作権譲渡とする場合はーー

「著作権譲渡契約の全てが違法だ」という意味では、ございません。
「しっかりと話し合いがあって、十分な報酬が支払われ、双方納得した上での著作権譲渡契約であるなら問題ない」と、私は考えます。

イラストレーターズ通信では、「しっかりとした話し合い」と「十分な報酬」と「双方納得」の3つがあった上で著作権譲渡とする場合も、ある特殊な契約方法をお願いしています。
この記事に書いたイラストレーターのリスクの数々を大幅に低減する契約方法がございます。
この契約方法は、どの専門書を読んでも出ていなかったので、私が独自に考案したものです。
顧問弁護士のチェックと助言も受けて完成させました。
企業(あるいは団体や自治体)様にとっての著作権譲渡契約のメリットはそのままに、イラストレーターの権利もしっかり守られます。


くわしくは、ご依頼のイラストレーターズ通信会員にご相談ください。

イラストレーターズ通信主宰:森流一郎

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森 流一郎

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ありがとうございます。
元イラストレーター。多忙のため体調を崩してイラストレーターを引退。「イラストレーターズ通信」(illustrators.jp)主宰。「イラストレーターズ通信・スクール」講師。 世の人々に、イラストレーションという名の小さな幸せを広めることを目標に、日々活動しています。