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ウルトラマン辻󠄀本貴則監督回を観る⑤ 『ウルトラマンタイガ』 前編


はじめに / 現代社会を風刺する『ウルトラマンタイガ』の世界

『ウルトラマンタイガ』の世界観は、私にとってとても魅力的です。
本作では「宇宙人が密かに地球で暮らしている」という設定があり、難民やマイノリティ問題など、現代社会に通じるテーマが描かれています。
『ウルトラセブン』の世界観を現代風にアレンジしたかのようです。
物語もハードでビターな展開が多く、多くのことを考えさせます。
その雰囲気に、さらに塩を刷り込むのが、ウルトラマントレギアです。
相手の心の弱さを巧みに突く、ウルトラマン史上最もタチの悪い悪役であり、作品のダークな面を一手に引き受けています。
一方で、登場するウルトラマンや宇宙人たちは非常に人間臭く描かれており、特にヒロユキと3人のウルトラマンが織りなすドタバタ、そして絆の強さは『仮面ライダー電王』を彷彿とさせます。
そして、地球人と宇宙人の間にも、いつしか信頼が芽生えていきます。
ハード+コメディ+エモーショナルのバランスがとれた、良いシリーズです。

そんな『タイガ』での、辻󠄀本貴則監督の仕事を見ていきましょう。

第11話「星の魔法が消えた午後」

『タイガ』での、辻󠄀本貴則の初陣の脚本は、『X』の傑作エピソード「絆 -Unite-」を手掛け、『R/B』「ウルトラマンの名のもとに」で辻󠄀本監督とタッグを組んだ小林弘利氏です。

現代社会における「魔法」のリアリズムとは

ストーリー上でユニークな点は、「サラサ星人・麻璃亜」というゲストキャラクターが、宇宙人なのに、「魔法使い」として登場するところです。
実際、麻璃亜は魔法の杖と呪文で不思議な現象を起こします。
これらのシーンを見ていると、アーサー・C・クラークの「十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない(Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic.)」という名言が思い出されます。
現代の我々は、スマートフォンやスマート家電を音声で操作していますが、100年前の人々から見れば、魔法使いのように見えるかもしれません。
麻璃亜の魔法が科学技術なのか、それとも真の魔法なのか、劇中では明言されず、視聴者の想像力を掻き立てます。
まあ、昭和には宇宙の魔法使い「プレッシャー」という前例はあったのですが。

パゴス復活と怪獣演出の妙

このエピソードの白眉は、何と言ってもパゴスの復活です。
前話の予告でその姿を見た私は、テンションが爆上がりしました。
頭部の造形も、全体のプロポーションも、お腹のたるみも、まんま「虹の卵」のパゴス、ものすごい再現度です。
道路が陥没し、地面からパゴスの頭部が現れる出現シーンは、前年の『ウルトラマンR/B』のネロンガ登場シーンをさらに進化させた演出で、辻󠄀本監督のこだわりが感じられます。

パゴスの初のカラー作品出演、そしてウルトラマンとの戦いのシーンでは、重厚感と意外な俊敏さが見事に表現されています。
タイガの光線技を跳ね返す強靭な皮膚、タイタスを吹っ飛ばすドリル状のビームなど、その強さが存分に描かれます。
そんなパゴスも、フーマに腹を袈裟懸けに切られ、涙を流して絶命。
息を引き取る瞬間、表皮が土を思わせる質感に変わるエフェクトも、その亡骸の側にたつE.G.I.S.メンバーのシーンも印象的。
昭和怪獣らしい、後を引く最期でした。


第12話「それでも宇宙は夢を見る」 / ギマイラの再登場と激アツバトル

11話のラスト、パゴス絶命の直後に現れるのは、吸血怪獣ギマイラ。
『Q』と『80』の怪獣をセットでチョイスするセンスに痺れます。
ギマイラ、全身の黒いトゲトゲはより痛そうに、目つきはよりイカつく、光るツノはより硬く、こちらも最高のスーツです。
12話にもつれ込むタイガとのバトルシーンは迫力満点で、特にギマイラがタイガをフルボッコにするシーンは緊張感が溢れています。

ギマイラの登場により、パゴスが暴れた理由をギマイラに追われたためと推測するEGIS。こういう苦い展開が、『タイガ』らしいです。

第2ラウンド、燃えながら走る車を追い回し、街を蹂躙するギマイラに立ち向かうタイガ、しかし触手からの電撃にやられ、倒れ込んでしまいます。
これがまた駐車場のカメラ映像、監督どこまで監視カメラが好きなんだ。
魔法でタイガを援護する麻璃亜を狙うギマイラ、その触手に弾き飛ばされた麻璃亜が魔法で空に出現させたのは、故郷サラサ星の海。
「最後に見たかった景色」と語る麻璃亜に、「最後じゃない!」と言い切るタイガ、かっこいい!
やる気満々のタイガはフォトンアースにチェンジ、オーラムストリウムでギマイラをぶっ飛ばします。

おわりに

いかがでしたでしょうか。
今回は、復活怪獣の魅力に全振りした娯楽編でした。
どう見てもチンピラなゼラン星人どうなん?とか、カナちゃん社長のお友達のその後はどうなった?とか、突っ込んではいけません。
パゴスの復活から5年を経た2024年、『ウルトラマンアーク』9話でも更にすごい展開が起こりますので、こちらもぜひご覧ください。
四国の田舎からエールを送ります。

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