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『ウルトラマンアーク』第4話 「ただいま怪獣追跡チュウ」の英文を読んで、ネズドロンの細胞に思いを馳せる

第4話でシュウがリンに送った電気ネズミの情報となった英文を読んで、私の想像力が暴走した話。まずは画面から英文を書き起こしてみました。ソースはツブイマの配信から。解像度がイマイチなので間違いは優しく教えてください。


Research Details
       
We discovered a particular bacterium that feeds on electricity as a source of activity in the body of this rodent. These are considered a type of so-called electric bacteria. These microorganisms are primary producers in environments where stimulight cannot reach, such as deep sea or deep underground. Based on these results, various industries are planning to use these rats in the future for electric food production in the space.
       On the other hand, when electricity was applied to the rats in the laboratory. The experiment also documented that the rodents went rapid immediately after being electrified. These results suggest that more detailed studies on this rodent are needed. The genome analysis of the captured rodent revealed that it is a new species in a new genus, and it was named “Electricamus nipponicus” in a paper published in the following journal.

Publication Details
Title: Discovery of a New Rodent Species that Captures Electricity and Potential Applications in the Space Industry
Authors: Takehiro Shibakawa
Journal: Molecular Gigabiology


ホント、それっぽく良くできた英文だと思います(何様)。第2段落の最初の "when" は意味的に違和感を感じるので、あえて取消線を入れました。その上で訳してみたのがこちら。


研究の概要
 我々は、この齧歯目の体内から、活動の源として電気を食べる特殊な細菌を発見しました。この細菌は、いわゆる電気細菌と呼ばれるものの一種であると考えられます。この微生物は、深海や地下などの光が届かない環境に主に生息しています。一方、実験室でこれらのネズミに電気を流してみました。通電直後にネズミの活動性が急速に高まりました。これらの結果は、この齧歯目に関するより詳細な研究が必要であることを示唆しています。
 捕獲された齧歯目のゲノム解析の結果、新属の新種であることが判明し、下記雑誌に掲載された論文において「エレクトリカムス・ニッポニクス」と命名されました。

書誌概要
題名:電気を捕食するげっ歯目の新種を発見、宇宙産業での応用の可能性
著者:シバカワ タケヒロ
雑誌:分子巨大生物学


生物学系の論文は専門外でよくわからないのですが、本文は140wordsと少なく、実験手技や結果の詳細は記載されていません。一方で、ネズミのイラストが載っていることを鑑み、論文の内容を紹介するgraphical abstractで(図入りの抄録)でよいのかと。まあ、検索でもまず読むのはアブストラクトですし、シュウが急ぎでアクセスしたのは理にかなっています。

また、原著論文が掲載されているであろう雑誌のタイトル「Molecular Gigabiology(分子巨大生物学)」に痺れます。「分子生物学(molecular biology)」は普通にある学問ですが、そこに「giga(巨大な)」が入ることで、この雑誌が巨大怪獣の生物学的研究をテーマにしてるのでは?と思わせ、ニヤリとしてしまいます。著者の名前も芝原先生のもじりかと
ページの端には2023.5.20とあるので、この論文が最近のものであるとわかります。

電気細菌は、現実に存在する生物です。「電気をエネルギーにする」とは、正確には「電気のエネルギーを利用して、生命維持に必要な有機物を二酸化炭素から合成する」ことです。光合成、化学反応に次ぐ、第三の独立栄養生物群です。ツブイマの「柴原博士のウルトラマンアーク化学研究室」でも紹介されていますが、2015年に理化学研究所と東大のチームが、それまで鉄イオンや硫黄をエネルギーとして利用しているとされていたいた細菌「Acidithiobacillus ferrooxidans」が、電気のみで有機物を合成できた事を世界で初めて発見し、そのエネルギー利用メカニズムを解明しています。

我々が生活する地表においては、植物が太陽エネルギーから光合成によって必要な有機物を二酸化炭素から合成します。一方で、太陽光が届かない深海では、化学合成細菌と呼ばれるバクテリアが、海底火山から噴出する硫黄などの化学物質の反応エネルギーを二酸化炭素から合成します。
これらの生物が作るエネルギーを動物が食べることにより、生態系が形成されています。

また、サンゴやクラゲは体内に光合成生物を、ハオリムシは化学合成細菌を共生共生させ、直接エネルギーを受け取っています。
そもそも、光合成の源である葉緑体や、酸素呼吸の要であるミトコンドリアは、もともと独立した生き物だったものが、植物や動物の細胞に取り込まれたものです。その結果、光や酸素から莫大なエネルギーを得ることが可能となり、動植物は多様な進化を遂げました。

電気で有機物を合成する微生物の発見は、光も化学物質も乏しい地球外環境での食物生産につながる可能性があります。太陽電池と二酸化炭素があれば、宇宙でも火星でも食物が作れる。ましてエレクトリカムス・ニッポニクスの体内には、電気細菌が共生しています。電気で食肉の生産が可能になるかもしれません。火星名物・電ミートとか食べてみたいです。
また、生物の電気エネルギー利用は、地球外生命の存在可能な条件を拡大させ、将来の地球外生命探査に影響を与えるかもしれません。

最後に、作品中のネズドロンについて。
学名の前半である属名は 「Electrica=電気の + mus=Mus (ハツカネズミ属)」 、後半の種名は「nipponicus=日本の」からなり、合わせて「日本の電気ネズミ」の意味になります。やっぱピカチュウ
シュウが学名をエレクトリカ・ムスと読んだのはご愛嬌。
現代社会に溢れる電気から多くのエネルギーを得たエレクトリカムスは二足歩行に進化、さらに人間大まで大きくなったのではないでしょうか。そしてダイモード発電施設で莫大なエネルギーを浴びたネズミの細胞には、ミトコンドリアのように電気細菌が細胞内に(頭部にはダイモード鉱石も?)融合しエネルギー効率が爆上がり、巨大になってしまった・・・と妄想しています。
リンがネズドロンを「ネズミちゃんたちの成れの果て」と言ったり、ユウマが「細胞レベルで融合」とか言ってましたが、当初は等身大を複数出すアイデアがあったのかもしれません。

いやぁ、楽しいですわ、ウルトラマンアーク。
楽しすぎてグダグダの長文になった事をお詫びします。

四国の田舎からエールを送ります。

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