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春はへべれけ 飲酒枕草子

もりです。
皆さんはお酒飲みますか?私は飲みます。

なぜ飲むのかというと、待望されていたから。

「夕飯には晩酌」と先祖代々決まっていたような家に、私は年の離れた末っ子として生まれました。するともちろん、家族全員が私の成人の日を待ち望み、「早く一緒に飲みたいね」と口々に語りかけ、潜在意識に飲酒習慣が刷り込まれました。

お酒の味が好きなのか?または酔うのが好きなのか?という問題もありますが、私はお酒だけでは飲めず、つまみがないとだめ。どうやら、餃子にビール、チーズにワインといった、つまみとお酒のマリアージュが好きみたい。

梅に鶯、紅葉に鹿、花見に酒。そろそろ桜のつぼみも膨らみ始めるころ。季節のイベントには、各々に寄り添うお酒の思い出があるものです。以下、徒然なるままに思い出を書き連ねたので、私のへべれけ枕草子に共感してくださったり、ダメ人間だと笑ってくださったりしていただけると幸いです。

花見。大学生の時に学科の友人たちと近くの公園で酒盛りをする準備をしていたら教授に呼び止められ、「これを持っていきなさい」と、およそ一日で飲み切れない量の酒を渡されたことがある。なぜゼミ室にこれだけの酒が…?と聞きたいところだが有難くもらって最高の花見になった。案の定飲み切れず私の家にストックされることになるのだが、引っ越しの際に本当に困って捨ててしまいました。教授、ごめんなさい、本当にありがとうございました。

ゴールデンウィークのお酒もいい。真夏日になる日もあり、もう僕の出番ですねと冷たいビールがこちらを見ている。何よりゴールデンウィークは、4月の歓迎会で仲良くなった同僚と距離を詰めるのにうってつけの口実だ。日本の祝日がうっかり五月に集結していなかったら、私の友達は半減していただろう。何でもいい、ドライブやら野球観戦やら何か適切なアクティビティを予約して酒を飲む場を獲得し、新しい人間関係について隠さずにいられない不満を吐き出しあい共犯になるべくグラスを掲げる。5月はうきうきしている。

夏こそ酒の季節だ。と言ったら夏も不服かもしれないが、夏は毎日暑いから仕方がない。毎日暑いので毎日飲むことになる。

夏と酒と私の思い出を掘り起こすと意外と一人である。夏はイベントがたくさんあるはずなのだが、なぜか思い浮かぶのが一人暮らしのベランダ。天気のいい休みの日に、ビールかレモンサワーの缶を開けながら冷凍餃子を焼き、きゅうりやなすやらミョウガやらを浅漬けにする。カーテンを全開にしてテーブルをずるずると窓際に移動させ、つまみたちに日差しを浴びせてやる。くう~~
隙があればいつでもこんな休日を自分に用意してあげたい。そうこうしているうちに夕方なのだがまだ日が長いので、エクストラモードになった気分で酒を買いに行く。唐揚げなんて揚げちゃおうかなとウキウキしながら肉を買うが、そろそろ酔いも回ってくるので、買った肉は次の日まで出番を待つことになる。

よくよく思い返すと、バーベキューなり花火大会なり夏らしい記憶はないわけではないが、夏に屋外で飲むビールはぬるい。ぬるいビールほどまずいものはない。そういう意味で夏の輝く酒の思い出は家飲みになっているのかもしれない。

寒くなってくると日本酒が飲みたくなる。私の好きな食べ物にはことごとく日本酒が合うのだが、二十代後半を過ぎたあたりから日本酒を飲むと次の次の日まで最悪の三日酔いにみまわれるようになってしまい、泣く泣く断念している。

最近の秋というと、夏の続きだと思っていたらいつの間にか冬になっていた、というような気温でいまいち秋らしい思い出がない。

ただなぜか秋はワインとステーキとチーズを食べている気がする。ワインはとにかくフルボディの赤ワインが好きで、飲み終えるころにはしばしば唇を真っ黒にしている。社会人になってすぐのころ、友人と通い詰めていた肉バルがあったのだけどコロナ禍でつぶれてしまった。おいしいステーキと、選びやすい値段のワインがたくさんあって夢のようなお店だったのだ。自分の給料の使い道にまだ慣れていない若造3人が寄り集まって、「ボトルを数本開けてしまおう」と悪だくみする夜がたくさんあったのだ。あれが秋だったかどうか定かでないが、ともかく夏にはワインが登場しないので秋の思い出ということにしておく。今でもあのお店に代わる肉バルが見つけられていないので、肉バルゾンビとして検索履歴を肉バルで埋める日々が続いている。

他に秋と酒の思い出というと、大学の学祭の記憶を振り落とすことができない。学祭は必ずしも秋ではないがうちは秋だった。大学生なぞド平日でさえ倫理観が欠如しているというのに、祭りとなったらもう、誰の手にも負えない。インターネットの海に放出するのが憚られるほどのあれやこれやが学祭の数日間で起きていた。あの忌まわしい記憶の地面にはいつも落ち葉が散らかっている。

冬はおでん。寄せ鍋。ここで日本酒、となりたいのだけどそうもいかないので最近は、焼酎のお湯割りさんに私のお酒になってもらうべく挑戦し続けている。が、まだ仲良くなれていないので、妥協案として梅干しチューハイがお供である。冬に飲み屋で飲むときはたいてい、夏になったらここで飲みたいな~というテラス席を舐めるように見回しながら店内に入っている。冬のさびれたテラス席というのはあるだけで魅力を増すものだ。

私にも実家というものがあり年末年始は顔を出すのだけど、私を待望していた家族だけあって顔を見るなり「ビール冷えてるよ」と勧めてくる。あっという間に数缶飲み干す末娘の姿にご満悦なご家族の皆様。調子に乗ってもう一本、と冷蔵庫に歩み寄る私に「あんた、いい加減酒の飲み方を考えなさいよ」と諭してくる。

ええ~。皆様の英才教育の賜物が私そのものなのですが。

ただ、両親そろって「自分の飲める量がわかってきたのは50過ぎたころかなあ」とのことなので、若輩者の私はまだまだ羽目を外させてもらいますよっと。

ああ、いつか自分の居酒屋を出したい。

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